環の手を引いて、急いだ壮五は
焦った様子を悟られないように必死で歩いた。

しばらく歩くと、環から壮五の手を軽くはらった。

「なぁ、そーちゃん……。壮五さん……。」

「……だめだ。」

「……。」

「俺と一緒にあっちの事務所に移ってください。」

「……できない。」

「お願いします!」

「……できないよ!やめてくれ、今更敬語なんて…。」

「たった一人の妹なんだ!みんなには悪いけど……、俺が、俺が助けてやらねえと…!」

「環くん……奏が倒れたって。」

「え…?かなな大丈夫なのか!?どこか悪いとこ…!」

「わからない、一織くんからの情報はこれしかないんだ。…だから帰ろう。」

「………。」

「君は悩んでるじゃないか!みんなの事も大切に思ってるって!奏の事だって、今心配しただろう!?……僕だって気が気じゃないよ……早く帰って、会って、顔色確かめたいよ!でもっ!君の事も僕は心配なんだよ!」

「……でも。」

「とりあえず帰ろうよ、そこからゆっくり落ち着いて話し合おう。今のままでは、話し合いはできないよ…。」

「………。」

帰ってきた壮五は、マネージャーに相談することと奏の様子を見るために
冷静を装って、事務所に入った。

「奏……?」

「あ、壮五さん…すみません、一織くんが心配させるような書き方をしたみたいで…大丈夫です!ただの貧血です!」

「ものすごく心配した!何かの病気じゃないかって!いきなり倒れたって!心臓止まるかと思った……でも…僕もだよね……ごめんね。」

「え?」

「……僕も心配をかけたんじゃないかって思って…。いきなり出て行ってしまって…。」

「……心配しました。私もものすごく…心臓止まるくらいに…壮五さんと環くんに何もありませんようにって…。お話できましたか?」

「そのことなんだけど…マネージャーもこっちに来てもらっていいかな?」

「はい…。」

壮五は、八乙女事務所の社長に出会ったこと、引き抜きの話を全て話した。

「妹さんを探すために…。」

「ああ…。環くんも本心では、移籍したいわけじゃないと思う。環くんの不安を煽るようなんことを、向こうの社長がわざと……。そのせいで余裕がなくなってるんだ。」

「……昔から変わらないな、八乙女事務所は。」

「え?奏さん?」

「ううん!なんでもないです!」

「マネージャー……。僕たちはまだデビューできないのかな。7人でデビューできれば、環くんの不安も軽減されるはずだ。だから……。」

「……!?ねえ!紡ちゃん!壮五さん!レッスン場から怒鳴り声聞こえません!?」

「…っ!確認してきます!」

「私も!」

「奏は無理しちゃだめだよ!病み上がりなんだから!」

「……じゃあ連れて行ってください!」

「……わかったよ、肩持つよ?」

紡が先にレッスン場に着くと、三月の大きな声が響き渡っていた。

「なんだよそれ!?抜けるってどういうことだよ!?」

「No!ケンカだめです!」

「悪い……。ごめん、みんな。」

「ごめんじゃないだろ!?壮五もそう言ってるのか?違う事務所でデビューするって……。」

「悪い!」

「本気なのかよ!?」

「どうしたんですか!?」

「……まさか、もうみんなに話したのか?!」

「謝らなきゃって、思って…。」

「はっ…、馬鹿!どうして、先走るんだ!物事には順序があるだろう!?」

「そーちゃんの分も、俺が謝んなきゃと思って!」

「勝手に謝られても困るよ!」

「おい、ソウ…。タマも本気で抜ける気なのか?」

「ごめん。」

「違う!」

「どっちなんだよ!」

その時、一人クールに発言したのは一織だった。

「いいんじゃないですか。抜ければ。」

「一織!」

「逢坂さんはともかく、四葉さんはもうIDOLiSH7を見限ったということでしょう?なら、私たちも見限りますよ。私たちだって、そんなあなたは必要ない。どうぞ出て行ってください。」

「……。」

「……やめようよみんな、こんな言い合い…。」

「奏…。」

奏は泣きながら、壮五の肩に顔を埋めた。

「嫌だよ……話ができるなら…ちゃんと話そうよ…!みんなお話できる環境じゃない!幸せなことだよ!?ううっ……。」

「………環くん、ちゃんと話そう。いきなり抜ける抜けないの話をしてもみんな混乱するんだよ。奏もマネージャーも不安になる一方だ…。それは君も不本意だろう?もし言いにくいなら僕から話をしても構わない。ちゃんとみんなに知ってもらうべきだと思う。」

「ソウゴの言う通りです。プリーズ、タマキ。ワケを話してください。」

「…生き別れの妹がいて、妹が俺を見つけてくれるように、もっと、テレビに出たいんだ…。だから、デビューさせてくれるところに移ろうと思って…。」

「そこから話せよ!」

「説明下手すぎるんだよ!おまえは!」

「いきなり抜けるなんて言ったら驚くでしょう!」

「……ご、ごめん……。」

「……まったく。奏もう大丈夫だから…泣かないで…。」

「壮五さん…っ!もうぐずぐずなので顔上げれないです…というか壮五さんのお洋服すごく汚しちゃってます…。すみません…。」

「僕は構わないよ!」

「オーライです、タマキ。要するに、テレビに出られればOK?」

「イエス…。」

「グッド!シャチョーさんにお願いしてワタシたち、7人でデビューしましょう。ワタシたちの歌、ワタシたちのファン、いっぱいいっぱい増えました。デビューOKです。」

「ナギが決めていいのか……?」

「社長に交渉か……。よしやってみるかマネージャー。」

「わかりました。社長に時間貰ってきます。」

紡が社長室に向かっていくと、壮五は奏を衣装室まで移動させた。

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