あのパフォーマンス以来、そっとした空気は続いていて…
それでもどこか大丈夫だと感じていた。

大和は缶ビールを開けながら、もう寝ろよって言う。
三月はいつも以上にたくさん一織に笑いかける。
ナギは子犬の振りしてじゃれつき、番犬のようにみんなを悲しみから守ろうとしているように
見えた。

壮五は、一織を気にしながら、環との2人でのデビューの覚悟を決める準備をしているようで、何度か環をちらちらとみた。

当の環はと言うと、一織にオリジナルのプリンを見せて、彼なりに元気を付けているようだった。

一番笑顔を絶やさずにいる奏を見ては、壮五は少し心を痛めているようだった。

陸はというと、一番大丈夫そうな顔をしていた。

「あはは!いおりん見て!スペシャル王様プリンになった!」

「はは……。マーブルチョコ乗せただけじゃないですか。」

「いおりんにやる。」

「…………ありがとうございます。」

「これ、一織のためのプリンなの?」

「七瀬さん…。」

「そう!すげぇだろ?」

「じゃあ、オレもなんか乗っけてあげる。なんにしようかなー…。」

「………。」

「なにがいい?一織の好きなもん、乗っけてあげる。」

「寝る前に甘いもん食うと太るぞ。ベッドにもぐって、ぐっすり休みな。」

「ビール飲んだおっさんがよく言うよ!な?一織。」

「Oh!タマキシェフ、ユニークなデザートを作っていますね!」

「環くんは個性的だな。これから、一緒にやるのが楽しみだよ。」

「……はは。大丈夫です。あなたのセンスに任せると、何を乗せられるかわかりませんからね。七瀬さん。」

一織は環作のプリンを食べた後、お風呂に入り、大和の言う通り
しっかり潜り込んで寝たらしい。
気にした奏が部屋を訪ねるも、返事がなかった。

「………一織くん、寝てる…?寝てるね…。」

ちょっと失礼して…と言いながら
ゆっくり部屋のドアを開けて、一織のベッドに近づいた。
アイアンの二階建てベッドで、一織の顔はしっかりとは
見えなかったが、スン、スンと鼻をすする音に奏は
小さな声で お疲れ様。よくできました…。と一織に伝えた。

ゆっくりとドアを閉めた後、部屋の中の一織は
「………ありがとうございます。」
と、静かに泣いていたことは奏はこれから先、知ることはない。

ちょうど一織の部屋から出てくる奏を見つけた壮五は
声をかけた

「一織くんどうだった?」

「寝てたよ…。スンスンって言いながら。」

「そっか……。奏は大丈夫?」

「え?」

「無理して笑わなくていいんだよ…。僕も環くんと2人でデビューする覚悟は決まったよ……。みんなを置いていくわけじゃない、みんながこれから歩く道を作っていくんだって思うと、楽しみになってきたよ。」

「………壮五さん。うっ…ううっ。」

「泣かなくていいんだよ……。」

「本当はっ、みんな一緒がよかったです!…2人がデビューすることはもちろんうれしいです!でもっ、きっと………IDOLiSH7のファンの中には…2人だけがデビューすることに批判的な方もいらっしゃるはずです……。そんな話を、みなさんには目にしてほしくなかったっ……。」

「……大丈夫だよ。サブマネージャーならわかるよね?この業界に入った瞬間から、そんな覚悟はないといけないんだ。大丈夫だよ……。みんなも絶対経験しなきゃいけないことだから…遅かれ早かれこういった案件は出てくるんだから…。」

「ぅうっ…はいっ…っ。」

「…今日は寝る?それとも…僕の部屋で飲む?」

「え?」

「やっ、やましいことはないから!……ジャスミンティー貰ったんだ。飲んでほしいな。」

「お邪魔します……。」

「うん。」

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