「……という、スケジュールになっていまして…。MEZZO"のお二人は、大分過密スケジュールになってしまうんですが……。」

「難しいなら、私が何とか調節するから、言って?」

「大丈夫だよ。頑張ります。それに過密スケジュールになるのは僕らだけじゃなくて奏もでしょ?」

「そうだけど……でも壮五、何となくだけど前より少し痩せてない…?」

「そんなことないよ。環くんも学生なのに、一生懸命頑張ってくれてるし……。」

ふと、環の方を見ると、くーくーと寝息を立てながらお昼寝中だった。

「………爆睡されてますね…。」

「……環くんは大概こうだね。」

「本当に大丈夫ですか?奏さんも……。」

「私は大丈夫だけど……壮五、無理してない…?私がそんなにMEZZO"の移動についていけてないのが問題だけど…。」

「ああ、心配しないで。奏も無理しないでね?……みんなこの日のために頑張ってきたんだから、大丈夫だよ。やれることは、全部やっていこう。」

「……壮五。」

大丈夫、無理はしていない。奏の方こそ無理してない?と
ずっと壮五が自分よりも周りを心配するので、奏は少し心配になってきた。

事務所に帰り、奏は紡に、自分の心の内を話した。

「……壮五、大丈夫でしょうか…?」

「気になりますよね……。」

「私が同行できない前の日には、資料はまとめて渡してはいるんですが…そのあとの事は全部壮五任せになっちゃってますし…いつの間にか私の仕事を終わらせちゃってるときもあるんです……。私がこんなんだから頼れないんですかね……情けない。」

「そんなことないですよ。きっと壮五さんは奏さんの事、お手伝いしてるんですよ。」

「それで壮五に負担かかって…壮五が忙しくなっちゃったら……私、マネージャー失格です…。」

「奏さん……。」

「私はみんなに自分の事話しました。話さないといけない状態にもなりましたし……。でも、壮五は自分の事多く話さないんです。いつも私の話聞いてくれるばかりで……。我慢してるように見えて辛いから、頼ってほしいんですけど、いつも大丈夫だって……笑って話を逸らすんです…。」

頼ってほしいのに……。そう呟きながらデスクに伏せた奏の背中を、紡は優しく撫でた。

「大丈夫ですよ、壮五さんもいつかちゃんと話してくださいますよ。聞いても無理な時は、そっとしましょう……。押してだめなら引いてみろですよ!」

「紡ちゃん……そうだね、そうする。」

ほかにも、大和、三月、一織、陸、ナギは壮五の体調と、奏のコーチ兼サブマネージャー兼MEZZO"のマネージャーの仕事掛け持ちを心配していた。

朝一番で仕上げなければならない仕事が終わったら、MEZZO"のマネージャーに向かうという
過密スケジュールの奏は、事務所で事務作業をささっと終わらせて
急いでMEZZO"のいるスタジオまで向かった。

その頃、スタジオでは…

「申し訳ありません。すぐに到着すると思いますので……。」

テレビ局のスタッフに頭を下げている壮五がいた。
どうやら、環が遅刻をしてしまったようだった。

しばらくすると、寝ぼけ眼な環が
ゆっくりと現れた。

「…おはよーございます。」

「環くん、遅い!いつも言ってるだろ。5分前……。」

「はいはい。」

「事前アンケートは書いてきたか?」

「紙、無くしちゃった。」

「無くしちゃったじゃないだろ!明日の収録の資料は?昨日奏に渡されただろ!?目を通してくれた?」

「まだ。……ふあぁ、眠い。」

「わかった…。後で僕が一から説明するから。仕事中にあくびなんかしないこと!今日は後から奏が来るから。」

壮五と環が話しているところに入ってきたのは番組のプロデューサーだった。
なにやら環に用件があるようだ。

「噂で聞いたんだけど、君、孤児で生き別れの妹さん探してるんだって?」

「あ?」

「お、怒んないでよ。良かったらそれ、協力したいっていうか、番組にさせてほしいんだけど?」

環は二つ返事でいいよと答えた。

「環くん!」

「何してくれるんだ?あいつ見つけてくれんの?」

「勝手に仕事を請けたらだめだ!…すみません、事務所を通してください。」

「そーちゃん邪魔すんなよ!協力してくれるつってんだ!」

「安請け合いしないで、ちゃんと企画の内容を確かめないと。そのために奏やマネージャーが…。」

「うるせえんだよ!こんだけテレビに出てんのに、まだ連絡も来ないんだ!手伝ってもらえるなら、俺はなんでもやる!おっさん、やる!それやります!」

「環くん……!」

時計を見ると、そろそろ奏が到着するはずの時間だがまだスタジオには来ていなかった…。

「奏……。」

番組のプロデューサーは、環が承諾したことに喜び、泣ける感じにするから楽しみにしといてくれと言い残し、その場を去った。

「……環くん何を考えてるんだ。君の家庭の事情が、見世物にされるかもしれないんだよ!」

「見世物がどうした。見世物になりたくてなってんだよ。」

「………。」

「普通の家で、普通に育ったそーちゃんには、わかんねえよ。……かなななら少しわかってくれるかもな!」

「奏は、そんなことないよ…。」

「そーちゃんかななの事最近知ったくせに、そんなこと断言できんのかよ!」

「それは……。」

そのあと、通常の収録が終わったころに、やっと奏が到着した。

「環くん!壮五!すみませんっ!……っはぁ…はぁ…人身事故で電車が見合わせになってしまって……申し訳ありませんっ!」

「いいんだよ、奏が無事でよかった。」

「こっちはちゃんと回せたから。」

「そうですか……ならよかった…何も変わったことはなかっ…。」

「ねえよ。」

「環くんっ!」

「え?」

「なんでもねえって!……今日は後もうオフだろ?王様プリン買って帰ろうぜ。」

そういって環はすたすたと歩き出した。

「……環くん…?壮五、何かありました?」

「その…、っ!」

壮五もちゃんと話そうとしたが、何故か先ほどの
「かななだったら少しわかってくれるかもな!」
という言葉が頭の中をループして口にできなかった。

「壮五……?」

「ううん、なんでもないんだ。行こう。」

「………はい…。」

−−−−
−−−
−−


まただ…どうして頼ってくれないの?

助けようとしても、あなたは逃げてしまうし……

どうしたら、あなたの心がわかりますか?

prev next
back