「環さん!?」

「あははは、環くんらしいなー。」

「何笑ってるんですか!」

「大丈夫大丈夫!うちの環くんは素直なだけだから!」

そのあとの環の言葉に
TRIGGERのファンは少ししんみりしていた。

「俺たちだって歌うつもりじゃなかったし、あいつらのステージ見たかったよ!お手本になるからさ。来れないっつーなら、しょうがねーじゃん。せっかくだから、TRIGGERの曲、みんなで歌って帰ろ。」

「環……っ!TRIGGERのファンの人、本当に本当に本当にごめんなさい!3人にはまだまだ及ばないけど、歌わせてもらいます!」

ブーイングの中歌う7人を局のスタッフは
痛々しいものを見るように見ていた。

「……ああ、ひどいな……。誰も彼らの歌を聞いていない……。」

「……すみません。こんな役目を押し付けてしまって。」

「いいえ、大丈夫です。そうですよね?紡マネージャー?」

「……はい、うちのアイドルはガラガラの会場でも、びしょ濡れでも、全力で歌えるんです。」

「そうですよね!……彼らの思いは、歌声は、きっと会場のみなさんに届きます!」

徐々に会場が一つになっていき
ブーイングはいつしか聞こえなくなるほど
盛り上がっていた。

「みんなっ!」

「紡ちゃん!やりましたよ!」

「はいっ!」

そこに現れたのはTRIGGERの3人だった。

「……あいつら……。」

「あ、TRIGGERの……。」

「あ!この前の方っ!」

「え?あぁ…ミューフェスの時に声をかけてきた女の子だね。久しぶり……まさかアイドリッシュ7の関係者だったなんて…。」

「あの時はありがとうございました…。」

「いえ……。今回は逆だね。俺たちの歌を、俺たちを待ってくれていたファンと、歌っているのか…。」

「ブーイングも静かになってる……。」

袖に聞こえてきたのは、観客の歓声だった。

「……ああ、きついな……。」

「……こんなに自分がみじめに思えたのは、初めてだよ。ファンの期待に応える。僕たちが出来なかったことを…彼らが今、パーフェクトにやってる。」

「九条さん……。」

「……。あそこに行きたい…。なんで俺たちが、あそこに立ってねえんだよ!」

悔しそうな3人を、紡と奏ただ、見ることしかできなかった。

色々あったフレンドシップが終わってしばらくたった日…

夕食も終わって、リビングでみんなゆっくりとしている時間
他愛もない話をしていた。

「はい、大和さん。お茶です。」

「お、奏サンキュー。……そーいや、ドラマの撮影現場で共演者に言われたんだけどさ……。」

「どうされました?」

「トリの人気アイドルの穴埋める時にそいつらの持ち歌歌うって、すげー度胸ありますねって……。」

「うわー。考えてみりゃそりゃそうだ。喧嘩うってるようなもんだもんな。」

「私たちは草食系だったのに、いつからこんな挑戦的に……。」

「よ…良かれと思ってやったんだけど。TRIGGER怒ってるかな…。それに奏さんもグッジョブって言ってくれたし。」

「あはは、私のせいー?でも、怒ってないと思うよ。」

「ワタシたち7人で、音楽を愛する皆さんの前で、デビュー曲歌えました。ワタシはHappyです。」

「そこはな!ちょっと、スカッとしたぜ。」

「……?壮五、環くん。どちらか向かわれるんですか?」

「ああ…。明日の仕事に必要な資料を、環くんが事務所に忘れてきちゃって…。」

「もう眠い……。」

「環くん、うるさい。…そんなわけで、資料をとりに行くんです。」

「鍵は?私持ってるしついていこうか?」

「あー…いや、奏は危ないし……。」

「は?」

「いえ、なんでもないです…。」

「奏もソウに言うようになってきたなー。」

「結婚したらどちらが主導権を握るか、見えてきましたね。」

「奏さんも、壮五さんも環も、遅い時間だし、気を付けて行ってきてくださいね。」

「ありがとう陸くん。じゃあ、行ってきます!」

大和は
MEZZO"の2人が仲良くいくようになっていることに
少し安心したようだった。

事務所につき、カギを開けようとした奏は不審に思った…。

「あれ?鍵空いてる……。」

「え?……こんばんはー、夜分遅くにすみません…。」

壮五が声をかけるもだれもいないようだった。

「ふぁあぁ…。不用心だな。……!そーちゃん!かなな!人がいる!金庫のとこ!」

「空き巣か!」

奏が、さっとスマホの明かりを金庫に向けると
誰かいるようで、「やばい!」という声も聞こえてきた。

「待て……!」

「ひっ…!」

環は金庫付近にいた男を取り押さえた。

「こいつ……!動くな!」

「そのまま押さえてて!今、明かりをつける!奏は離れてて…!環くんも殴ったりしたらだめだよ!過剰防衛に……。」

「うう……っ」

「環くん!?」

「殴らないでって言ったのに!」

「違うって!押さえつけようとしたら、勝手に転んで……。うわっ!」

明かりがつくとスパナを振り回した男がいた。

「離せ!離さないと、俺は何をするかわからないぞ!俺の上からどけ…!」

「……っ、このおっさん!スパナ振り回しやがって……!」

「環くん、危ない……!手を離すんだ!」

「おじさんも!スパナの使い方間違ってるよ!」

「奏!今はそこじゃない!」

「逃がすかよ!こいつが歌泥棒かもしれないだろ!」

「やめろ…!顔に当たったらどうするんだ!大けがを……っ。」

壮五が空き巣に説得するもスパナを振り回し続け
バシッという痛そうな音が響いた。

「うわっ…っ……くっ!」

「…環くん!」

どこかに当たったようで、環は痛みに悶えていた

「……っ……よくも環くんを…!」

「壮五!」

「ひいい!殺さないで!」

「待った待った待った!そーちゃん!パソコンなんか頭の上に落としたら、こいつ死ぬだろ…!」

「は……っ。良かった……。無事だったのか……。」

「小指に当たっただけ。……あんたたまに過激だよな。」

「君が何かされたんじゃないかと、つい、おろおろしてしまって……。」

「もっと、ソフトにおろおろしてくれよ。」

「……とりあえず、おじさん……。」

「ひぃ!」

虫けらを見下すような目で奏は空き巣に近づき
ヒールをカンッ!と鳴らした

「それ……よこしな。」

「…!環くん!あれはテウがデビューして初めてドラマに出た時の名シーンとセリフだよ!シチュエーションとしては…。」

「あーわかったわかった、帰ったら聞くから。そーちゃん落ち着いて。」

「あぁ…環くん。大丈夫だった?」

「おう。」

「えへへ!スパナゲットしてきましたー。」

「かなな、ちょーつえぇー…。」

「環くん…、だからいつも言ってるだろう……。こんなことが起きないように、忘れ物には気をつけて、5分前行動……。」

「わかった、わかった。お説教も後で聞くから!」

「壮五ー…。この人どうしますか…?」

「たっ、助けてくれ!盗んだものは返す!頼むから!警察は呼ばないでくれ!」

「そんな都合のいい話あるか!俺の小指に謝れ!」

「傷害罪だよね、確かに……。」

「……!その顔!あなたは、もしかして…。」

壮五は見覚えのある顔だったようだ。

prev next
back