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僕も奏もオフの日…
環くんは学校で補習があるから…と日曜日なのに学校に行っていた。

何気ない普通の日…
僕はソファーでコーヒーを飲みながら
溜まってた読みたかった本を消化していっていた。

奏もその横で、何か裁縫をしているようだった。

「……奏、何してるの?」

「環くんの体操服の補修です…。名札とれちゃったから縫ってくれって持ってきたんです。」

「へー……。」

「壮五は?読みたかった本終わりました?」

「うん……。」

「ん?」

困った顔してる……可愛いな…!そうじゃない!

名札だけかと思ったら他にもあるようで…

「その布の山は…?」

「あぁ…これも環くんのです。家庭科実習の時のエプロンに名前書かなきゃいけないらしいんですけど…。油性ペンはヤダっていうから、刺繍で縫おうかと思って…。」

「……いつ終わるの?」

「んー……あと30分ください!ささっと終わらせますから!昨日ほとんどやってるので!」

本当なら、2人でゆっくりできるはずの時間を環くんにとられた気分で
なんとも言えない気持ちになってしまった……。

でも、僕も本読んでたし……おあいこなのかな?

おあいこじゃないよ!これが奏の趣味ならいいけど
環くんに仕事増やされてるじゃないか!

「壮五…?そーうーごー?」

「……え?」

「怖い顔してる…ふふっ。」

「ご、ごめん……。」

「やきもち?」

「え!?」

「環くんの事ばっかりお仕事してるから、やきもちやいてくれたのかなーって……。私の勘違いですかね?」

敵わないな………

「やきもちだよ、ほんの少し……。別に環くんが悪いわけじゃないのにね……。」

「でもそれだけ私の事好きでいてくれているんですよね?ありがとうございます。」

「奏……。」

「…はい、できました!ちゃんと環くんの希望通り、紫の糸なんですよ!」

「なんで?」

「そーちゃんの色だからだそうですよ。そーちゃんに見られてると思うと、授業がんばれそうだからって!」

「ふっ、なんだそれ…っ。」

環くん………
いい子なんだよね……

僕のほうが恥ずかしいよ………

時計を見ると、環くんの下校時刻が近づいていた。

「……奏、散歩のついでに環くんの高校まで行かない?」

「へ?」

「2人でお迎えに行こう。」

「そうですね!きっと環くん喜びますよ!」

門の前で僕たちを見つけた環くんは少し恥ずかしそうだったけど
にっこり笑ってくれた。

「かなな!!!エプロンの名前できた!?」

「できたよー!」

「やったー!」

いい子なんだよね……本当に

これから僕たちはどんな色に染まるのかな?

「…そーちゃーん!」

気づくと僕だけ遅れていたようで……
環くんの声で、ハッと気づいた。

かけよると、環くんに手を繋がれた。

「そーちゃん危なっかしーから捕まえとく!」

「あはは!壮五、危なっかしいだって!」

「かななも!」

「あははっは!奏もじゃないか!」

「えぇー!?」

染まったのはオレンジ色の優しい色で…

3人で並んだ影の真ん中は、ずば抜けて大きくて……

すれ違った親子3人の影と真逆だった



*4*5*


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