02


夜遅くに、至が談話室に行くと台本を読んでいるいづみを見つけた。
談話室の入り口付近では
心と万里が「早く行け!」とせかすように至の背中を押した。

「あのー……、監督さん…?」

「あ、至さん!こんな遅い時間にどうしたんですか?」

「うん、ちょっとね…。」

「もしかして寝れないとか……?ホットミルク淹れましょうか?」

「あ、うん……。」

貰おうかな?と笑うと、至はソファーに腰かけた。

『『いやいやいやいや!』』

『ったるさん!何してんっすか!』

『さっさと、さくっと話しちゃえよ!』

「はい、どうぞ至さん。」

「ん、ありがとう監督さん……。」

しばらくの間の後、至はゆっくりと口を開いた。

「あのさ、監督さん……。」

「はい?」

「あ、明日なんだけど……。」

「明日?」

「お弁当……作ってくれないかな……?」

「え?いいですけど。」

「へ?」

「え?」

「あ、いや……そう……ありがとう。」

「…ふふっ、至さん変ですね!そんなのいつでも言ってくだされば作りますよ!」

「カレー…?」

「じゃないです。本当はカレーにしたいんですけど、左京さんに怒られちゃったし、臣くんからもたくさんレシピを教えてもらったので!」

『『ほら見たことか。さっさと言えばいいんだよ!』』

「でも珍しいですね、至さんがお弁当のお願いするなんて。」

「ちょっと…色々あってね……。」

「ん?」

『万里さん!重いっ……!』

『は?馬鹿!そのまま行ったら俺も倒れ…。』

談話室の入り口で、コソコソ様子を伺っていた心と万里は体勢を崩してバタン!と大きな音をたてながら倒れてしまった。

「いったぁ……。」

「…ったぁ……、だぁからぁ言っただろーが!倒れるって!」

「万里さんが私に体重かけすぎるから!」

「……2人とも、どうしたの???」

「あ、監督ちゃん……。」

「おこんばんは……いづみさん……。」

いづみに、至がなぜお弁当を依頼したかの経緯を心が話すと
いづみも納得したようだった。

「でもそれって、明日だけで大丈夫なんですかね?」

「「「へ?」」」

「いや、だって……。毎日とは言わずとも、週に3回とかこれからあった方がよりばれにくいというか……そもそも、浮いた食費をゲームに回したいなら今後もお弁当活用されれば、至さんも課金?しやすいのでは……。」

「監督さん……その手があったか……。」

「あ!いや別に!私は至さんのゲーム推進をしているわけではないのですが……っ!」

「いや、その案いいと思うよ監督さん。これからお弁当よろしくね?あ、俺明太子は無理だからよろしく。」

「えぇ!?」

「んー…!すっきりした!これからも俺の安定したMANKAI寮での生活は約束された。たるちご機嫌っ!」

「…つーことで監督ちゃん、明日はよろしくな。」

「私も朝からお弁当作りになるので一緒に頑張りましょう!中身は別々になるように工夫して。」

「そ、そうね……。」

−−−−
−−−−
−−−−

翌朝、キッチンにはいづみと心と臣が仲良く並んで
お弁当作りに励んでいた。

「心ちゃん、卵焼きの味付けってこんな感じ…?」

「気にしなくていいですよ!あの人なんでも食べるから!」

「そ、そう…?でもやっぱり食べ慣れた茅ヶ崎家の味の方がいいんじゃ……。」

「監督、自信を持って。あれだけ練習しただろ?」

「そ、そうだけどぉ……。」

「臣さん、私も学生組のお弁当手伝いますよ!」

「ありがとう心。」

そこに着替えが終わった至と万里がやってきた。

「はよー…。」

「おざーっす。」

「おはよう、至さん、万里くん!」

「監督さん……本当に作って…。」

「約束したじゃないですか!粗熱取れたらお弁当箱に詰めるので待ってくださいね!」

「あ、うん……。」

自分で頼んでおきながら、嬉しい至は
そわそわしながら席に座った。

「ははっ、至さん照れてんの!?」

「万里うるさいよ。」

「へーいっ!……あぁー!ちょ!んな!臣と並んでっと、心獲られた気分になるっ!」

許さん!と言いながらキッチンに入る万里を見て
心と臣は笑った。

「ははっ、万里大丈夫だぞ。」

「そうだよぉ、そもそも誰の作ってると思ってんのよ!」

「そーゆー事じゃねぇよ!」

むすっとしながら、心をバックハグした万里はプチトマトをつまみ食いした。

「もー!人の頭の上で食べないでよ!」

「そっちかよ!個数気にしろよ!」

臣は笑いながら、至にコーヒーと朝食を用意して席まで運んだ。

「仲いいですね、あの2人。」

「臣ありがとう。……そうだね、お兄ちゃんとしては少し寂しいけど、相手が万里だから許す。」

「万里じゃなかったら…?」

「殺してた。」

「残忍な……。」

キッチンから離れていたいづみは
お弁当包みをもって帰ってきた。

「監督ちゃん、弁当綺麗にできたな!」

「ありがとう万里くんっ!心ちゃんのお弁当も安定の綺麗さだから、並べると劣っちゃうかもだけどね……。」

「そんな事ないですよいづみさん!料理は心ですから!」

「……そうだよね!……美味しく、楽しく食べてくれますように……。」

そう言いながらお弁当箱に詰めていくいづみを見て、何故か心がキュンとしていた。

「やばい……私が男なら惚れてた。」

「監督ちゃん、可愛い事すんのな。」

「へ!?」

「いや、なんも?」

詰め終えたいづみは、少し渋い色の包みに
お弁当と一緒にメモを1枚挟んで包んだ。

「…できた。……至さん!お弁当できましたよ!」

「あ、……ありがとう監督さん。そろそろ出るよ。」

「じゃあ、玄関までお持ちしますね。」

「ありがとう。」

談話室から出る2人の背中を見送った万里と心は
「夫婦かよ。」と呟いた。

「うっし、こっちももう少しか?」

「はいっ!今トースターにエビフライ入ってるので、それで最後です!」

「揚げないのか!?」

「手軽にノンフライです!」

そこにO高の3人とフラ中の2人がやってきた。

「ん?なんだ?今日は花学休みなのか?」

「昨日、開校記念日ってサイコストーカーが言ってたでしょ?ホワイトボードにも書いてあるし。」

「万里さんと心さんは、今日はお出かけですか??」

「そー。2人で弁当持ってちょっとな。」

「摂津が弁当持って出かけるとか……。」

「んだよ兵頭!文句でもあんのか!?」

「あぁ!?」

「ほらほら!万チャンも十座サンもストップッス!…ピクニックみたいで楽しそうッスね!」

「弁当か……。」

天馬がぼそっと呟くと、心は
「みんなの分もあるから持って行ってね!」
と5人分のお弁当を渡した。

「茅ヶ崎、ありがとうな。」

「わぁー……!今日は天チャンも十座サンも一緒に食べるッスよ!」

「ふーん…ネオオタクも気が利くじゃん。」

「ありがとうございますっ!」

「いいえー!私と臣くんの合作だけどね。おすすめは臣くん作成のお弁当用ミニグラタン!」

「それはオカンのでしょ?心のはどれがおすすめなの?」

「ふりかけご飯かな……?」

「「「「既製品かけただけじゃねぇか!」」」」

「あ、臣さんはどこにいるんだ?お礼が言いたいんだが……。」

「今、洗濯物干しに行ってるよ。私から伝えとくね。」

「助かる。じゃあ行くぞ、そろそろ迎えの車も来てるだろうしな。」

「はいッス!じゃあ行ってきまーす!」

「行ってくる。」

「「いってらー!」」

万里と心がO高を送り出すと、フラ中2人も追って登校した。


前へ次へ