03 「さーてとっ!……天気もいいし、至さんとの約束の時間まで、何すっかなぁー……。」
「そうですねー……。せっかくですし、お散歩してから行く?」
「散歩って……。まぁいーけど?」
身支度が終わった2人は、いづみに外に出ることを伝えてから出かけた。
「思ったよりも天気いいなー…暑いくらいだし。」
「そうだねー…、あ、公園の噴水横にアイス屋さんの車出てるよ?」
「珍しいな。この天気だと売れるだろうな。」
ワクワクとした目で万里を見ると
「1つだけな?」と言いながら
心の手を引いて、店先まで歩いて行った。
「ほい、どれにすんの?」
「んー……1つだけ?」
「1つだけ!この後昼飯あんだろうが……。」
「食べれる……。」
「知ってるっつーの!んでも1つだけだ!」
「……へい。」
しょんぼりしながら、ショーケースを眺める心を見て
店主は「彼氏さん厳しいねぇ。」と笑った。
「厳しくねぇっすよ。こいつほっといたらこの店ごと食っちまいますよ?」
「そんなに食べるの!?」
「はい。この間も5Lのアイス完食してたっすから。」
「安いファミリーアイスってほとんど空気なんだもん……。」
「……すごいね、彼女。」
「でしょ?そこが可愛いの。」
「へ?!」
本気で悩む心の隣にいた5歳くらいの女の子も
母親と何にするか悩んでいた。
「ねーママー。いっこ?」
「そうよ1つだけ。」
「えぇー……。」
「……お姉ちゃんもね、1つだけって言われたの。後ろのお兄ちゃんに。」
「そうなの!?じゃあ私もいっこにしなきゃ……。」
「ふふっ、1つ仲間だねー♪」
幼女と仲良く話し出した心を見て、万里は隣にいた母親に
「すみません……。」と謝った。
「いえ、ありがとうございました!駄々をこねずにすみましたから!」
「そっすか?ならいいんっすけど……。」
心はキラキラと目を輝かせながら
万里の方に振り向き、元気よく手を挙げた。
「はいっ!万里さん!決まりましたっ!」
「はい、心さん。どれにするんっすか?」
「このニューヨークチーズケーキストロベリーにします!」
「ママー!私はねぇ、このチョコにするの!」
「「んで、一口交換するお約束した!」」
「あら!よかったわね!」
「おまっ…!高校生が何、幼女と意気投合してんだよ!」
「えぇー…どっちも食べたかったから……ねぇ?」
「お姉ちゃんありがとう♪」
「いいえー!女の子は欲張りなんだぞっ!万里さんっ!」
「へいへい……。」
カップを受け取った心と幼女は
約束通りに、一口交換をした。
「お姉ちゃん、これ美味しいね!」
「うん!こっちのチョコもおいしいよ!」
キャッキャとはしゃぐ2人を見て、幼女の母は
万里と心に再度お礼を伝えた。
「お兄ちゃんも、お姉ちゃんにアイス買ってくれてありがとう!……はいっ!」
「ん?俺に??」
幼女は自分のアイスを一口すくい、万里に差し出した。
「…へへっ、サンキューなっ!」
優しく微笑んだ万里に、幼女は少し顔を赤らめて
「大きくなったらお兄ちゃんとけっこんしてあげるね。」とニコニコしながら
話した。
「んなぁ!ライバルになった!今日の友は明日の敵となっ!?」
「張り合うなよ……。んじゃ、大きくなって俺の事、探し出してくれたらな?ここの姉ちゃんみてぇに。」
「がんばる!」
「おー頑張れー!…じゃあな!」
手を振って帰っていく親子を見送り、万里が心を見ると
こちらも同じく顔を赤らめていた。
「……ちょっと…//////恥ずかしいんですけどぉー……。」
「ん?本当の事だろーが。お前もよく12年近くも俺の事覚えてたよなぁ。」
わしゃわしゃと心の頭を撫でる万里に
心はアイスのカップを渡した。
「…わ、私のも一口あげる……っ///」
「おー、あんがと…って、お前の一口これじゃねぇだろ!もう入ってねぇじゃねぇかよ!」
食べ終わった後、至の会社付近まで行き、カフェで
時間をつぶし始めた。
−−−−
−−−−
−−−−
一方の至の会社では……。
「茅ヶ崎さんっ!おはようございますっ!」
「……あ、おはようございます。どうされましたか?」
「あのー……、そのー…お昼なんですけど……。」
「ええ。」
そう言い始めた言葉を遮るように、至は自分の鞄から
お弁当をデスクにポンと置いた。
「…え!?」
「どうされましたか?」
「きょ、今日お弁当なんですか…?」
「…あ、そうなんですよ。毎日外食だと偏るって言われちゃいまして……。」
「そ、そうなんですね……。あ、なら一緒にお昼どうですか!?」
「すみません。今日は一緒に食べる人が決まってて……。」
「……わかりました……。すみません……。」
(少し可哀そうだけど…悪い子じゃなさそうだけど、期待だけさせてがっかりさせる方がもっと可哀そうだしね……。おー…俺優しいじゃん。)
至が断った後、給湯室では例の会議が行われていた。
「……断られた。」
「「えぇ!?」」
「お弁当持ってきてた……。」
「マジか……。包みは?」
「え?渋めの男性用だったけど……。」
「あ、なら本人のじゃない?」
「でも聞いて……、めっちゃいい匂いしたの!」
「「どんな!?」」
「天然由来のオーガニック系……セージって感じの……。」
「茅ヶ崎さんのにおいじゃないやつ?」
「そう……。」
「え!?でも彼女いないって言ってたよね!?」
「あくまで噂だし…、本人の口から聞いたわけじゃないしね……。」
「なら一緒に食べる約束は?!」
「一緒に食べる人も今日決まってるって……。」
「「……女か………。」」
「もう終わったかも、私の恋……。」
「諦めるの早いって!…昼休み、偵察に行くよ!」
「そうだよ!」
「……心の傷をえぐりそうだけど、行こうかな……。」
「「おー!!!!」」
−−−−
−−−−
−−−−
「……よし、お昼休みの時間になるし、そろそろお店出ましょうか!」
「だな。あー…俺払っとくから先行っとけよ。」
「わかった!」
そこまで遠くないカフェだったため、心は先に1人で会社の案内カウンターに向かった。
「あのー…すみません。」
「はい。」
「営業推進部の茅ヶ崎至の妹ですが……。」
「はい!いつもお世話になっております!」
「兄を呼んでいただきたいのですが……。」
「少々お待ちください。」
受付の女性がアナウンスで至を呼ぶと、先に現れたのは
給湯室会議部の3名の女性だった。
「…え、高校生…!?」
「そんなバカな……。」
「若さに負けたって事…?!」
「……え?お姉さんたち誰ですか…?」
「あ、あなたこそ!高校生でこんなところに来るのはおかしいと思うけど!?」
「私は茅ヶ崎の……。」
「「「あー!やっぱりそうだ!茅ヶ崎さんの…。」」」
「はいっ、茅ヶ崎の妹ですが…何か?」
「「「え!?」」」
「どうも。」
「お兄ちゃんっ!」
「「「お兄ちゃん!?」」」
3人が振り向くと、至がニコニコしながら立っていた。
「…早かったな。あれ?万里は?」
「レジ込んでて…そろそろ来ると思うけど。」
心が心配そうにエントランスを見ると
ひと際スタイルのいい男が、颯爽と入ってきた。
「……お、いたいた。ったるさーん!」
「万里、声が大きいよ。」
「へいへい。」
至は、思い出したように3人の方を見て。
「今から、妹と妹の彼氏とご飯に行くので……失礼します。」
と伝えて、その場を後にした。
「……妹さん…?」
「え、美人……。」
「茅ヶ崎さんに似てるよね……。」
受付の女性は
「私は、彼氏さん派かも……。」と呟き
何故か4人で恋愛話が始まった。
「…ん?でも、さっきの妹さんからは、今朝のいいにおいしなかった……。」
「確かに、少し甘い匂いだったよね……。」
「ってことは茅ヶ崎さん、別に女性が…!?」
「「「「終わった……。」」」」
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