「だ、誰か!!ひったくりです!!!その人を止めてー!!」
声がした方向を見やり、その前方を見ると、キャップを被り服を着込んだ男性が一目散に走っていくのが見える。私が「追いかけよう」と言う前に、
私がぜえぜえと息を吐きながらようやく追いつくと、杉浦くんは犯人を問い詰めているところだった。
「さっき女の人からバッグ盗んでたよね?返してもらえる?」
「う、うるせえ!俺は何も盗っちゃいねえ!」
「ふう〜ん、じゃあなんでこんな所まで逃げたわけ?それに、今持ってるそのバッグ、明らかに女物だよね」
「お、俺はそういう趣味なんだよ!!」
なんとも見苦しい言い訳である。
「どのみち、中身を見れば分かることだけどね」
そう話していると、パトカーのサイレンが先ほど居た方角から聞こえてきた。おそらく被害にあった女性が呼んだのであろう。
「それじゃ、お巡りさんのところまでご同行願おうか」
「く、くそ…」
男は疲れ切っていて立ち上がれないらしい。杉浦くんはそれを拘束するように無理やり立たせて、先ほどの現場まで連れて行った。
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「この度はご協力、誠にありがとうございました!」
警官の男性は私たちに対してお礼を言った。私は何もしてないけど…と思いつつも、余計なことは喋らないでおこうと口を閉じた。
すると今回被害にあった女性が、私たちの方へ駆け寄ってきた。
「助けてくださって本当にありがとうございました!迷わず人助けしてくださる、素敵なカップルさんにお会いできてラッキーでした!」
「カップル!?」
私は思わず声を上げた。続けてこう言う。
「いえいえ!私たちはカップルなんてものでは…!仕事仲間みたいなもので、お昼一緒に食べてただけなんです…!」
変に勘違いをされては杉浦くんの機嫌が悪くなってしまうと思い、私は慌てて事実を伝えた。
「あら、そうなんですか?すっごくお似合いなのに!」
これはまずい、杉浦くんは相当不機嫌になっているに違いないと思い、彼の方を見ると少し満足そうな、でも微妙そうな表情をしていた。これはどっちなんだ?
私が考えていると、杉浦くんは女性に対してこう言った。
「ありがとうございます!今回は大変だったね。実は僕ら、探偵と便利屋やってて。僕は杉浦って言って、普段は横浜九十九課っていう探偵事務所にいるから、また何かあったら頼ってね!」
なるほど、さっきの表情はどうやって売り込みをしようか考えていたのか。せっかくのチャンスだ、私も売り込みをしておこう。
「私は異人町で便利屋をやってる苗字と言います!落とし物探しとか得意なので、そういうことがあれば是非!」
「うふふ、お二人ともありがとうございます!今後は頼りにさせていただきますね」
女性はにこやかにそう言った。