幸せになれるというジンクス。











「おおぉ!!!!すっげェ!!オヤジよりもおれの方が背が高ェ!!」

「うおおぉお!!!肩車してもらえるなんておれ感動だ……!!!!」

「…………何か、相手してもらって悪ィな。」

「なまえの弟達だから構わないさ」








エースを抱き上げロシナンテを肩車しているカタクリにおれはキレちまってるんじゃねェかとヒヤヒヤしながら声を掛けりゃそう優しい目をして遊んでやってくれてる良い奴だ。


"将星カタクリ"っていやァ色んな噂があんだよなァ.......。完璧主義者で生まれてこのかた背中を地につけた事が無いとかよォ.......。


.......寝る時どうしてんだろ。まさか、立ったまま寝てるとか?







「カタクリお兄ちゃんにあんなに馴れ馴れしく……!!」

「……許せない……!おにー様を誑かした魔女も……!」





…………おおぉ…………。こっちもこっちでカタクリの妹達がエースとロシナンテにキレてるしなまえにもその怒りの矛先が向けられてっし……。


誑かしたって、誑かしてねェだろう……。何かウチと似てるなァ……、なんて思っちまう。カタクリも兄として兄弟達に好かれていてウチのなまえもそりゃあ兄弟達から好かれているもんなァ。

あの風船みたいな女の子がイゾウと被っちまうしさ。いや、姉ちゃん大好きなエースか?




あ、ぷんすか怒った女の子が近付いてきた。






「ちょっと!!おにー様に馴れ馴れしいのよ!それに魔女も友達だからって……!!」

「……フランペ、」

「止めないでおにー様!……おにー様はアンタ達よりも強くてカッコイイの!」

「そうよ!フランペ!地面をも見下ろす男なのよ!!カタクリお兄ちゃんは!それに生まれてこのかた背中をつけた事も無いんだから!」

「……フランペ、ブリュレ。よしてくれ」






……妹にこれだけ愛されてるって羨ましいよなァ……。なまえは可愛くて素直だが、アンジェリカやサラにリリーちゃんはおれに対して扱いが酷いし……!


おれのが年上で兄ちゃんなのに……!!




おれだってカタクリみたいに可愛い妹達に……女の子に愛されてェ……!!






「…………そうは言うがフランペもブリュレも姫抱きには会ってみたいと手配書をよく眺めていたじゃないか。」

「「……、」」






…………あァ、そっか。姫抱き時代のなまえって女の子にすっげェ人気だったよな、そう言えば。


……結局、なまえのファンか……。なまえの方をみりゃあ、何か腕を組んで首を傾げてカタクリをずっと見てるんだ。……違う事考えてんな、なまえの奴。


そんななまえの視線に気付いたカタクリはエースとロシナンテを下ろしてからしゃがみ込む。なまえはしゃがみ込んだカタクリの服を引っ張ったんだ。






「……カタクリ君、背中を付けて寝ないって事はずっとごめん寝で寝てるんですか?」

「……ご、……ごめん寝……?」

「「……ぶはっ……!!」」





なまえの問いにカタクリは困った顔をして、エースとロシナンテは吹き出し顔を真っ赤にさせて体を震わせている。


……え、ちょっと待ってなまえちゃん。それずっと考えてたの?おれも気になってたけど、それ今聞く?






「……ね、姉ちゃん……!ごめん寝って……!」

「……ぶふっ……!!」





ごめん寝がどんな体勢で寝る事なのか分かっている2人はひぃひぃ言いながらツボにハマっているみてェだ。


……ごめん寝、おれも気になるし……。






「……なまえ、ごめん寝って何か教えてくれる?…………ちょっ、エースとロシナンテお前等笑い過ぎだバカ!!」

「で、でもよォ……!だって、ごめん寝だぜ……?」

「……くくっ……!サッチさんもごめん寝は絶対見た事あるって……!」

「……見た事ある?」

「「だってコタツの寝方だから!!」」







コタツの寝方……?


…………あの顔を隠して謝ってるみたいに寝てるヤツか……?……確かに背中はついてないし……、その寝方をカタクリが……。


……想像してみろ。あのカタクリがうつ伏せで顔を隠してごめん寝してる姿……!!






「…………すまない、寝る時は普通に寝ている。」

「……そうなんですね、」






ちょっ、なまえなんでそんな残念そうな顔してんだ……!!


すっげェ笑いたいけど、カタクリの兄弟達が恐ろしい顔をしてくるからおれは必死に笑っちまうのを耐える。


そんで、おれは未だに腹を抱えて笑っちまってるエースの頭に拳骨を。ロシナンテの脛を蹴ってやるんだ。


いい加減笑うのやめろっての!!怖ェんだよ、ビッグ・マムの子どもがすっげェ!!眼力だけで殺されそうなんだよ……!!!






「……そんな事よりも、…………プリン。ずっと姫抱きに会いたいと言っていたじゃないか、近くに来たらどうだ?」

「え、ちょっ……!!カタクリ兄さん……!」






プリン、と呼ばれた女の子は可愛く真っ赤に照れながらなまえの前にカタクリに背中を押されやって来た。


……うわぁ……、すっげェ可愛い……!




ぱっちりした目に小柄でウチには居ないタイプの女の子だし……!つーか、よく見りゃ皆顔も整ってるし色んなタイプが居て選り取りみどりじゃねェかよ……!!


おれより遥かにデケェけどスムージーちゃんって子も美人だし、アマンドちゃんって子もクールビューティーだし……!!


ウチはむさ苦しい野郎共ばっかでその中の唯一の癒しが可愛い妹のなまえとアンジェリカ達ナースだけなんだよなァ……!アンジェリカ達はオヤジ命だからおれ等何か眼中に無ェからつまらねェんだ……。


なまえに手を出そうものならイゾウやエースに……兄弟皆からボコられるからな……、手は出さねェけどさ。







「なまえに会えたらしてもらいたい事があるんだろ?」

「……え、でも……!……は、恥ずかしいし……!」





カタクリの後ろに隠れるプリンちゃん。女の子って本当に可愛いよなぁ……。乙女だな、ヤバいおれ可愛いしか思い付かねェわ……。


もうプリンちゃん恋する乙女じゃねェか……!なまえって女の子に人気だもんな……、姫抱きの時もすごかったけど女だって分かってからもっと人気出てる気がするのはおれだけか?






「プリンちゃん、遠慮せずに私で良ければそのお願い聞かせて欲しいのですが……」

「…………なまえさんが、……私の名前を……!」

「あらら、……大丈夫ですか?」






ふらっと倒れそうになるプリンちゃんをなまえは体を支えればまた今まで以上に顔を真っ赤にさせ照れている。


……あんなに照れさせられるってすごいな……。同性の筈なのに、……やっぱりなまえも蛇姫みたいな能力を持ってるんじゃねェのか?







「……なまえ、悪いがそのままプリンを抱き上げてやってくれないか?」

「えぇ、分かりました…………よっと!」






プリンちゃんの肩に手を添えて膝裏に腕を入れればひょいっと軽々と抱き上げた。


抱き上げられたプリンちゃんは顔を両手で隠しはわわ、と声にならない声を上げて今にも気絶しちまいそうな様子だ。






「……姫抱きに横抱きにしてもらえると幸せになれる、とジンクスがあるらしくてな……。ずっと、妹達がなまえに会える事があればしてもらいたいと話していたんだ。」

「成程、そんなジンクスがあるんですね……」

「なまえが火拳を横抱きにした事が始まりらしい……、そのジンクスを広めたのは確か革命軍のコアラ、から広まったらしいな」

「あぁ、コアラちゃんが!……そういえば、私コアラちゃんに頼まれて抱っこしたんですよね。……ふふっ!懐かしい……!」

「でもさ!なまえお姉ちゃん、その姿じゃ幸せになれるってジンクスは叶わないんじゃない?」






ニコニコと笑いながら突然現れたチビ助にその場に居た全員が身構えるが、チビ助はそんな事を気にせず手を叩いた。


……いつものイタズラが始まるな、とおれやオヤジにエースはチビ助を眺め向かっていきそうな奴を抑える。そして、直ぐにチビ助はなまえを姫抱き時代の姿に、カタクリは子どもの姿へと変えられちまったんだ。




あァ、ヤバいな。なまえに抱き上げられていたプリンちゃん鼻血出てらァ……。










back