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 木枯らしが吹き、いつもの神社の木々も赤や黄に衣替えしている。日が照っている今はまだ暖かいけれど、そろそろ外で会って喋るのも厳しい季節がやってくる。
 私はバーボンのアドバイスどおり、待ち合わせ場所に行く前に参道にある洒落たカフェに寄りホットコーヒーとココアをテイクアウトした。私はまだ任務という任務についていないけれど、誰かに同行して能力を使ったときはお小遣い程度の報酬をもらっている。おかげで、自由行動が許可されてからこうして買い物が楽しめている。そのとき店員さんに不思議な顔をされるのは慣れたものだ。
 両手に紙コップに気をつけながら歩くこと三分ちょっと。ロッシの待つベンチに到着した。

「ロッシ、お待たせ」
「おー」

 こちらを向いて手を上げるロッシに右手の紙コップを差し出す。首をかしげるロッシに「相談のお礼」と教えると、「ああ」と納得して受け取った。そして息を吹きかけてから一口啜った。

「ふうん、うまいな」
「でしょ。ロッシってコーヒーにうるさそうだから、ちゃんと調べたんだよ」

 すごく偏見だけど、ロッシみたいなタイプのワーカホリックはコーヒーにこだわりを持っていそう。だからネットで口コミを参考に店と豆を選んだ。

「小さいのに偉いな」

 笑顔で頭を撫でてもらった。大人だったら当たり前なことを手放しで褒めてもらえて嬉しい。ほくほくしながら私もココアに口をつけた。

「ココアも美味しい」
「よくそんな甘ったるいもの飲めるな。……って思ったが俺も子どものころは飲んでたか」
「そうそう。私、子どもだからコーヒーの苦味も酸味も苦手なの。ちなみにミルクと砂糖たっぷりのカフェオレなら飲めるよ」
「そこまでして飲まなくていいだろ」
「たしかにね。でも私だって飲みたくなるときがあるの。……あ、これからはこのカフェで会うのもいいかもね。ここだと寒いでしょ」

 思い立ったことそのまま言うと、ロッシは少し黙ったあと気まずそうに目をそらし、「あー」と唸りながらもじゃもじゃの頭を掻いた。

「悪いが、もう会えないかもしれねえ」

 突然の言葉にココアを落としそうになった。

「わ、私のこと嫌いになったとか」
「いや、ここに来る時間がなくなりそうなんだ」
「な、なんで? 彼女できたの? 友達より彼女を優先しちゃうの?」
「来月から復職するんだよ。忙しい仕事だから、たぶんここに来る時間は作れねえ」

 そういえばロッシは休職中だった。仕事じゃしょうがない。ロッシは前から働きたがっていたし、少し寂しいけれど快く送り出そう。
 とはいえ仕事で忙しいといってもロッシの職場は東京だと言うし、私が普通の小学一年生なら私たちの付き合いはこれで途切れるだろうけれど、私の行動可能範囲は広い。時間の融通もきくから、私がロッシに会いに行けばいいだけだ。
 そんな感じのことをオブラートに包んでロッシに伝えたが、思っていた笑顔は見られず逆に渋い顔をしている。

「はあ……。職業柄、お前みたいな子どもと一緒にいられねえんだよ。ありもしない疑いをかけられたら職を失うからな。いくら当事者たちが何もなかったって言ったって、世の中には火のないところを炎上させるのが好きな輩がたくさんいるんだ」
「ああ、ロリコンって勘違いされちゃうもんね」
「そういうこった。特に俺のとこはそういう不祥事に厳しいからな」
「ロリコン厳禁な職業……。あっ、先生とか?」
「俺が教師をやってそうに見えるか?」
「見えない……こともないかな。小学校の先生とか似合うよ。ずっとジャージで授業してそう。あと高校の体育の先生とかもやってそう」

 ロッシは私の見解を笑いながら聞き、そして「当たらずといえども遠からずってとこだな」と評価した。教師に近い職業かあ。
 職業はともかく、そろそろ名前くらい教えてくれたっていいのに。初対面のときはプライバシーを考えて名前を伏せたのかと思ったけれど、夏に知り合ってもう秋も終わる。十分、私が名前を悪用しない人間だとわかってもらえたはずなのに一向に教えてくれる気配はない。
 太陽が似合う男なのに、裏社会の人間並みに秘密主義なロッシに頬を膨らまして不満アピールをしたが、鼻で笑い飛ばされてしまった。

ヒトリヨガリ