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 今日は朝から裏裏山の麓にある町に、滝、喜八郎、三木、タカ丸と一緒に来ていた。天女を気にしなくていいって素晴らしい!
 見世物小屋や小物屋を見て回ったあと、例の天乱子堂に滝と喜八郎と一緒に入った。三木とタカ丸は甘いものを食べる気分ではないそうなので、違う茶屋で時間を潰していて別行動だ。俺は三色団子とみたらし団子、滝はぜんざい、喜八郎は翁飴を頼んだ。
 どうやら女の子に人気というのは本当らしく、たくさんの女の子が列を作っている。その殆んどは喜八郎も頼んだ翁飴のようだ。

「んー、美味しーい!」

 三色団子を食べて感嘆の声をあげた。俺に続いて滝も一口食べて表情を和らげる。

「本当だな。鉢屋先輩の勧めなだけあるな」
「喜八郎、翁飴はどう?」
「美味しいよ」

 まったく美味しそうに食べていないが、喜八郎は表情が変わることの方が珍しいので問題ない。
 一言断ってから翁飴を少し掬い上げ一口貰う。ほんのりとした上品な甘さに自然と頬が上がる。

「これは人気になるのも当然ね」

 淡い桃色を纏った唇をニッと引き上げて二人を見るが、反応はない。まったく慣れというものは嫌だ。これが竹谷先輩なら顔を真っ赤に染めてくれていただろうに。
 今日は女の子の観察を主としているので、俺も女の子の格好をしている。この姿だと、女の子をじろじろ見たり、女物を買ったりしても咎められることはない。それどころか親切にしてもらえたり、おまけしてもらえたりして色々とお得だ。
 今日の女装は元気な町娘。明るい花柄の小袖を纏い、はつらつと笑っている。我ながら完璧な女装で怪しまれることはない。

「草餅でも買って帰ろうかな」
「委員会にか?」
「うん。鉢屋先輩も庄左ヱ門と彦四郎も甘いものが好きだからね。二人は買って行かないの?」
「……そうだな。いつも頑張っているあいつらに買ってやるか。流石はこの滝夜叉丸! 後輩にも惜しみ無い愛を注いでいると感心されること間違いない!」
「はいはい、まったく無駄にキラキラさせないで。喜八郎も買うの?」
「そうだね、僕は大福餅でも買って行こうかな」

 そう言って喜八郎が頼んだのはつぶ餡の大福餅だった。美味しそうには美味しそうだが……。

「前、立花先輩はこし餡の方が好みだと仰っていた気がするんだけれど?」
「うん、そうだよ。よく覚えているね」

 しれっと答える喜八郎に滝と同時に喜八郎の頭を叩いた。なんて後輩だ。

「何するのさ」
「こっちの台詞よ。立花先輩で遊ばないの」
「まったく喜八郎は……」

 喜八郎の注文を取り消してこし餡の大福餅を持たせると、少々不服そうだが素直に受け取った。なにせ喜八郎もこし餡派だ。立花先輩をいじめたいからといって、わざわざ自分の好きではない方を買おうとするなんて呆れる。
 団子も食べ終わり、たっぷりと女の子の会話も盗み聞くことができた。今人気の狂言師や貴族の流行。移り変わりが激しいから取り残されないように常に情報を得続けなくてはならない。
 さあ、いい時間だ。

「お土産も買ったことだし、三木とタカ丸が待っている茶屋に向かいましょうか」

 二人のいる茶屋は近くにあるからすぐに着いた。そうして五人で固まって忍術学園までの帰路を歩く。
 タカ丸に髪型のアドバイスをもらったり、綾部に所作の、滝と三木からは化粧の批評をしてもらったり、勉強と趣味とを両立した話をしていると、あっという間に忍術学園だ。小松田さんに挨拶をして門をくぐる。
 さあ、部屋にもどって見聞きしたことを書き留めないと。そう思って足を早めたが、視界の端に天女を捉えた。遠くに食満先輩と共にいる。その姿も、もう珍しいものではなくなった。

「二週間になるか」

 同じことを考えていたらしい滝が言った。わかっていない顔のタカ丸に「天女が現れて」と教えてやる。
 どこから来たのか、帰るのか、帰れるのかも明かされていない。何かあれば学園長先生からお達しがあるだろうと気長に待っているが、あまりに不透明で不安に思う。
 じっと天女を見ていたら、目があった気がした。やばい、と気づかなかったフリをして逃げようとしたけれど、天女が走り寄っては来なかった。気のせいか。だけど、ここにいたら今度こそバレるかもしれない、と慌ててその場をあとにした。


※見世物小屋
実際には江戸時代に燗熟した。

※翁飴(おきなあめ)
栗を原料にした琥珀色で透明な水飴。現在は栗の代わりに餅米を使用している。
実際には江戸時代に製造された。

2012/10/08/blog掲載

ヒトリヨガリ