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俺は周りのやつらよりも小田真希さんと仲が良いらしい。そのことを同じは組のやつらから聞いたとき、ちょっとだけびっくりした。なんせ、仲良くしていた意識がないからだ。詳しく話を聴くと、俺以外の四年生はほとんど小田真希さんと会話しないらしい。五六年生でもよく話す人は限られているから、自然と俺と小田真希さんは仲が良いという話が広まったのだ。
不思議なことに小田さんとよく話す人は優子さんとはあまり親しくなかった人たちのようで、優子さんとも小田真希さんとも仲の良い俺はなかなかに注目されているのだ。
という前置きはここまでにして。今、最近では恒例になった小田さんとのお喋りの時間だ。優子さんに話したようなことを小田さんにも話していて、誰に何を話したかよくわからなくなってくる。天女という方々は、やはり地上の民のことが気になるのだろう。
そして、今日は優子さんにはきちんと見せていなかった女装姿を小田さんに披露した。前みたいなことがあったら面倒だから。
小田さんは目を丸くして驚いている。
表情に怒りや嫌悪感がないので安心した。
「わあー、本当の女の子みたいね」
「ありがとうございます。女装だけは自信があるんですよ。委員会の先輩にも褒めていただいているんです」
さっと早着替えで町娘から貴族の娘に変身する。小田さんは感嘆して拍手をしてくれた。
すべては見せられないが、いくつかよくする女装を見せ終わると、小田さんが「ねえねえ」と身を乗り出してきた。
「市蔵くんは何の委員会に入っているの? 図書委員会とか似合いそう!」
「そうですか? でも私は学級委員長委員会ですよ」
「学級委員長委員会なんだー。あ、そっか変装名人がいるもんね」
なるほどと納得した小田さんは次々に委員会のことを訊いてきた。ほとんどが一度答えたことのある質問。だけど、「どんなことしているの?」と訊かれて答えに困った。活動内容なんてお茶を飲んで喋ることが大半だ。なんと言ったらいいのか悩む。
「うーん、この間尾浜先輩が書類にみたらし団子のタレを溢して庄左ヱ門に怒られていたり、鉢屋先輩が変装したまま委員会を始めようとしたから彦四郎が困惑したり。……そうですねえ、だいたい五年生の先輩が一年生に怒られています。あ、もちろんお互いに本気じゃないですよ! その書類も大事なものではないですから」
「楽しそうな委員会なんだね! 仲が良さそうでいいなあ」
哀愁の漂う声だった。
「小田さんはそういう委員会みたいなものに属したことはないのですか?」
「あるよ。でも、ここのみんなみたいに仲良くて楽しいって感じじゃなかったの」
いつも楽しそうな小田さんが初めて見せる困ったような表情に、どう返せばいいのかわからなかった。俺には天女の世界のことなんてわからないし、下手に返さない方がいいのだろうか。
少し間が空いたあと、「暗い感じになっちゃったね」と小田真希さんが笑って言った。そのあとはいつも通りの笑顔で小田さんは話始めた。
辛い記憶じゃないとわかり、少しだけほっとした。たぶん俺は小田さんに少しだけ情が移っているのだろう。小田さんと会話していて、何度かここが羨ましいというニュアンスのことを言われたことがある。ご飯のことやさっきの委員会もそうだが、俺にはなんでもないようなことを羨ましがっている。
天女とは厳しい環境の中で生きることを強いられてきたのだろうか。それを苦に思い忍術学園に逃げてきたのかもしれない。
すべて憶測にすぎないが、ここにいる間はゆっくりと体も心も休めてほしいと思う。