04
「市蔵くんは四年のみんなと仲がいいの?」
何を藪から棒にと思いながら「悪くはないです」と返しておいた。
最近、天女がよく話しかけてくる。なぜだ。特に天女に優しくしたわけでもないのに。初めて会ったとき以来、廊下で会えば話すし、たまに天女から話しに来たりもする。
嫌われているわけでもないのだから別に構わないが、話の内容の四割弱が生徒の質問なので何か企んでいるのかと警戒したこともある。だけど質問の内容は今みたいなどうでもいいことなので保留にしている。何か忍術学園の弱点になり得るようなことを聞かれたら先生に報告すればいいだろう。まあ天女の言動を見ていると、その心配はなさそうだ。
「『悪くない』?」
「同じは組のやつらとは仲がいいと言い切れますけど、他の組だと話すやつと滅多に話さないやつがいますから」
天女と話すようになってから学んだことは、質問の返答は深くまで言わないと不機嫌になることだ。天女が不機嫌になったところで構わないが、以前、とある生徒が天女を怒らす行いをしたことがある。そのとき五年生が怒らせた生徒をあぶり出すという行動を取ったそうだ。それからは天女に惚れていない者の中で、天女が悪いことをしていない限りこちらも天女に危害を加えないというルールができた。
「そっか。んー、四年だと滝夜叉丸くんっていたよね? 彼とはどう?」
天女は目を輝かせて、ずいと俺に近寄った。俺は少し天女から離れた。
「滝とは一年のころから仲がいいですよ」
「え! そうなんだ! でも、い組とは組って仲が悪いんじゃないの?」
「あー、僕はは組の中で一番頭がいいので、は組のやつらに勉強を教えるのは僕の役割なんです。でも俺もは組なわけで勉強がわからないところもあって、それを滝に教えてもらってたんですよ。滝は頭もいいですから」
「そんなに頭がいいんだ!」
「はい。伊達にナルシストじゃないんですよ」
俺の言葉に天女は「うんうん」と大袈裟に頭を振りながら相槌を打つ。
「へー、あ、じゃあ喜八郎くんは? 知ってる?」
「穴掘り小僧を知らないやつはいないですよ。知らなかったら毎日落とし穴にはまりますから。……喜八郎は滝繋がりでそれなりに仲がいいです。けど、喜八郎は喋ったりするより穴掘るほうが楽しいみたいですから、そこまで一緒にいないです。滝の部屋に行ってもいないことのほうが多いですし」
「そんなに、ずっと穴を掘ってるの?」
「はい。授業中や委員会のときは掘りませんけど、それ以外はほぼ穴掘ってますよ。滝と喜八郎以外の奴らとは遊んだりしますけど、そこまで交流はないですね。ろ組も同じです。仲がいいと言える奴はいないです」
「三木ヱ門くんは?」
「三木は集まったりしますけど、そこまでですね。廊下で会えば話す程度です」
天女はすぐに感情を表に出す。俺の言葉にすぐに「どうして?」と言いたげな顔をするが、逆に俺がどうしてそんな顔をするのかわからないので大抵は無視してしまう。逆にどうして俺が三木と仲がいいと思ったのか訊きたいくらいだ。前に一度訊いたことがあるけれどはぐらかされて終わってしまった。俺のことは根掘り葉掘り訊くのに、自分のことは黙秘するのは少しだけずるい気がする。
そして天女が訊いてくるのは、四年の中だと滝、喜八郎、三木、タカ丸の四人のこと。どうしてこの四人に拘るのかもわからない。
そうこうしているうちに天女は「そろそろ食堂に行かなくちゃ!」と勝手に話を終えさせる。「じゃあね!」と満面の笑みを浮かべる天女に俺は愛想笑いで返した。