01
「よーし、皆で団子でも食べに行くか!」なんて一人で部屋で宣言してみたが、残念なことに今日はタカ丸も滝も喜八郎も三木も、鉢屋先輩や尾浜先輩まで仲のいい人はみーんな用事があった。
箪笥を開けっ放しにしながら中を眺める。腕を組んで、さてどうしようかと悩んでいると、ぴかんと妙案が浮かんだ。
そんなわけで、俺は女装をして幼馴染みの奥山梅を含めたくのたまの子たちと団子屋に向かった。小田さんを騙すときに梅の名字を借りたから、そのお礼も兼ねてだ。
梅は「別にいいのに」と言いながらも遠慮なく団子を注文した。
他のくのたまの子は、梅が声をかけた子たちだ。その中には尾浜先輩と最近仲のいいと噂の女の子がいた。よく見てみると、確かに尾浜先輩の好みの顔立ちだ。次はこの子に変装しようと企みながら俺も団子を頬張る。
団子を食べるだけなら女装なんてしなくてもいいのだが、中身は男でも見た目が女なら彼女たちも油断して情報をこぼしやすい。忍たまの中で誰が人気だとか、あの忍たまとこのくのたまが町へ行ったとか、俺にとっては宝物のような情報だ。
そうして団子屋でピーチクパーチクお喋りして一日を潰した。
真上にあった太陽が随分と傾いたころ、ようやく満足して団子屋をあとにした。この森を抜けると忍術学園だ、というところまで差し掛かったときに柄の悪い男たちに囲まれた女の子を見つけた。
不穏な空気に梅が俺の着物の袖口を引き、顔を近づけてきた。
「ちょっとお市、あれって……」
「ああ、わかってる。俺が行ってくるからお前たちは」
「何言ってるのよ。私たちも行くわ。お市だけに任せてられないからね」
「……そう言うと思った」
他の子もみんな乗り気で、とてもじゃないが止められないだろう。しかたなくみんなを連れて男たちのところへ行った。
男たちを蹴散らすのは簡単だった。武器すら持っていなかった。女の子をつけ狙っていたり、ここで通行人を待ち伏せしていたわけではなく、偶然見つけた女の子を襲ったというところだろう。
男たちが走って逃げていくのを見送り、囲まれていた女の子をまじまじと見ると、変わった服を着ていた。だから絡まれてたのか。
梅が地べたに座ったままの女の子に手を貸して立ち上がらせた。目立った怪我はないな。
「助けてくれてありがとうございます!」
「いえいえ、お気になさらず。ところで変わった服を着ているけれど、遠くから来たの?」
「あー、えっと……。あの、……信じてもらえないかもしれないですけど、私この世界の人間じゃないんです」
空気が凍るのを感じた。というよりも梅から禍々しいオーラを感じた。他の子たちは、これが噂の天女かという反応だ。
おどおどする天女と、物珍しそうに天女を見るくのたまの子たち。このままでは埒が明かない。
とりあえず天女を忍術学園に連れていくとするか。先輩方も天女の情報をほしがっていたことだし。
今までに天女が来たということを伝えてもいいかわからないからはじめましての体でいくか。
「大丈夫ですよ。何事も信じてみなければ何も始まりませんからね。信じますよ。……ここの世界の人じゃないということは宿もないのですよね。よろしければ私たちと一緒に来ますか? 私たちで決められることではありませんが、おそらく住居を提供することはできますよ」
そう言うと、天女は驚いた顔をしたあとで嬉しそうに笑った。
いいことをした、と思ったのに梅にぐっと腕を引かれた。
「ちょっとお市、あなた何を」
「困っているんだからいいじゃない」
「そんなこと言って、先輩に怒られてもしらないわよ!」
「あの人たちは怒ったりしないわ。梅だけよ」
「あの……、私のせいで怒られるなら、その、一人でどうにかするので……」
「大丈夫よ。全然問題ないわ」
不安を払拭させるためにとびきりの笑顔を見せ、梅にも笑顔で押しきった。他の子たちも忍術学園に連れていくことに賛成のようなので、暗くなる前にと忍術学園へ急いだ。
道すがら、梅に耳元で「鉢屋先輩に、これからは天女と関わるなって言われたんじゃないの」と囁かれたが聞こえなかった振りをした。せっかくの楽しみがなくなるだろう。
忍術学園に到着すると、なぜか天女は門の前で立ち止まってしばらく動かなかった。門を見上げて、何かぶつぶつと言っている。その間に小松田さんに話をつけ、天女を中に入れた。小松田さんの前を通りすぎるときも天女は挙動不審だったが、俺たちは天女のそういう行動に慣れているので動じない。
「じゃあ、私が彼女を学園長先生の元へお連れするから、みんなは先に戻っていて」
「お市だけずるい!」
「私も行きたい」
「そんな大勢で行くところでもないでしょ」
ついて来たがるくのたまを無視して俺は天女を学園長先生の部屋につれていった。
俺は先輩方に指示を仰がないといけない。さっき梅にはああ言ったが、きっと怒られるだろうな。