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 先日の恵子ちゃんとのことを鉢屋先輩と尾浜先輩に話したら、素早く立花先輩まで報告が行き、そこから伊作先輩や他の先輩まで話が伝わり気づけば話し合いの場が設けられた。何もそこまでしなくてもと思ったが、俺だけの問題ではなく、天女の存在について探りを入れる機会のため慎重に行わないといけないらしい。題して、天女調査委員会だ。
 今まで二人の天女がやってきたが、天女についてわかっていることは少ない。帰ろうと思えば帰られること、しかし来ようと思って来れるわけではないこと、天界はつまらないこと、天女は勘が鋭いこと、そして一番重要になるかもしれない、俺たちのことを知っているかもしれないということだ。わかっていることといっても理解はできないので、恵子ちゃんからはそのことを調査するようだ。

「三人目の天女である安池恵子は、今までの二人と毛色が違う。比較的、南田優子や小田真希よりゆるやかに、そして満遍なく忍たまくのたまと友好的な関係を持っている。またその際、言葉を選んで話しているように思われる。こちらに何かを要求してくることもなく、忍術学園の世話になっているからと積極的に雑用を買って出ている」

 紙を見ることなくすらすらと恵子ちゃんの現状について述べた立花先輩は、一度言葉を切って息を吸った。

「鉢屋、安池について何かわかったか?」
「市蔵と藤原に聞いたのと同じように、数人の忍たまにお市のことを聞いているそうです。聞くだけでお市について何か言ったりしているわけではないみたいです」
「安池は何を探っているのだろうな……。喜八郎、お前はどうだ?」
「安池さんは下級生との交流が多くて、五年生六年生とはほとんど話していないみたいです」

 お市の幼なじみが六年生と知ったのだから上級生に話しかけると思っていたがそうでもなかったようだ。それに恵子ちゃんが下級生と仲がいいとは知らなかった。恵子ちゃんはあまり活発的な性格ではないから、あまり想像がつかない。
 感じたままに呟けば、そのひとり言を喜八郎が拾った。

「よく中庭でボール遊びしてるよ。蛸壺を掘ってるときによく声を聞くんだ」
「ほう……。安池は下級生とはどんな話をしているんだ?」
「普通の話ですよ。授業のこととか委員会のこととか、休日の話とか」

 なるほど、俺に学園内のことを聞かなかっただけで、他の生徒に聞いていたのか。
 「なんなら今から見に行きますか」と提案した喜八郎に立花先輩と鉢屋先輩が頷き、場所を変えることになった。なんでも恵子ちゃんは仕事の休憩時間は大抵中庭で過ごすらしい。そしてもう少しで休憩になるから今日も一年生と遊んでるだろうと喜八郎が言った。
 喜八郎について中庭に行けば、一足先に恵子ちゃんが一年ろ組の子達と日陰ぼっこをしていた。俺たちは素早く気配を消して恵子ちゃんたちの近くの木に隠れた。

「伏木蔵くーん」
「はーい、なんですかー?」
「呼んだだーけ」
「ふふふ」

 とても、のんびりとした空気が流れていた。会話にたいした意味はなく、なんとなく頭に浮かんだことをそのまま喋っているだけという感じだ。思っていた以上にゆるい天女と一年ろ組に先輩方は拍子抜けした顔をしている。
 途中、ぽろっと核心的なことを漏らさないかと会話を聞くが、終始穏やかなものでしかない。

「いつもあんな感じですよ」
「はあ、……気が抜けるな。しかし、やはり害はなさそうだな」
「そうですね」
「俺も恵子ちゃんは悪い子ではないと思います!」

 挙手してそう言えば、立花先輩はわかっていると言うかのように頷いた。天女だからか変な感じはするが、嫌な感じはない。というか嫌な感じがしていたら、さすがに俺もお市として恵子ちゃんと仲良くしていない。
 しかしどうしてお市のことを探っているのかはわからないため慎重にしろと鉢屋先輩から小言を頂戴した。
 早々に喜八郎は観察に飽きてしまい蛸壺を掘りたがっているが、立花先輩は依然なにやら考え込んでいる。俺は恵子ちゃんを見ていると難しく考えるのはやめたくなるのに偉いものだ。さすがは六年生。だけど無駄に警戒しすぎて石橋を渡る前に叩き割ってしまわないか心配だ。

ヒトリヨガリ