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 日暮れのデパートは、平日ともなれば地下の食品売場以外は閑散としている。
 それは駐車場も同じだ。来る客より帰る客の方が多く、コンクリートに覆われた無機質な空間はがらんどうとしている。

「ニュースは見たか?」

 そんな駐車場に止まった一台のポルシェの中で、私はジンに問いかけられた。
 運転席にはウォッカ、助手席にジン。後部座席に私といういつもどおりの配置。

「え? うん。……朝の情報番組と昼間のワイドショーなら」
「どんな内容だった」

 まさか呼び出されて早々ジンにテレビの話題を振られると思わなくて、一瞬何を見たのか記憶が飛んだ。だけどいつまでも呆けてられないから、目を閉じてニュースの内容を思い出す。
 真っ先に思い出したのは、キッドのニュースだ。コナンくんが黒真珠を取り返したからお手柄小学生として写真が載っていた。
 でも、絶対にそれじゃない。ジンがキッドファンでない限り、わざわざ開口一番に話題を振ってこないだろう。何か組織に関わる事件があったはず。

「うーん、改造拳銃の売人を逮捕したとか、誘拐事件とか、爆発事故、……あとは轢き逃げ?」

 思い返すと最近物騒なニュースが多すぎると余計なことを考えていると、ジンが嘲るような温度の息を吐いた。

「爆発は事故じゃねえ」
「……まさか」
「場所は組織の第三ラボとして使っている化学研究所。シェリーが研究していた施設だ」

 知りたかったラボの場所をまさか爆破されてから知るとは。
 ふと、ライが組織を抜けたときのことを思い出す。あのときもライが知る組織の施設は破壊された。
 証拠を隠滅するにはそれが一番手っ取り早いかもしれないけど、あまりにも豪快すぎる。それでもまあ、似た事件が多発しているから大きな騒ぎにはなっていないわけだけど。
 ジンはおもむろに振り返ると、私の目を真っ直ぐに見た。

「その目で何キロ先まで見える?」
「……頑張って三キロってところかな。シェリーを捜せって?」
「それもあるが……」

 ジンはもったいぶったように言葉を切り、にやりと笑った。

「お前は今日からアマレットだ」
「アマレット……え?」

 イタリアのお菓子が頭をよぎったけどそれはアマレッティ。アマレットは酒の名だ。つまり、それは――。
 バックミラー越しに私を見ていたウォッカが「シェリーの抜けた穴にお前を入れることになったんだよ」と事情を説明してくれた。

「でも、シェリーの穴って私研究員じゃないけど」
「そんなことわかってるに決まってんだろ。ガキの枠だ」

 呆れながら言われた言葉にカチンときた。

「何それ酷い」
「事実じゃねえか。お前は能力こそ申し分ねえが、年齢が年齢だったからな。ガキが二人もいたんじゃ格好がつかねえだろ」

 ガキガキと言われるのは気に入らないけど、それ以上の文句は飲み込んだ。未成年だと不自由なことが多くてサポートがいるのは事実だ。
 今度はジンが口を開いた。

「キュラソーに会う必要はもうない」
「え」
「もう教わることはねえだろ」

 前からジンが言っていた「そのとき」というのはコードネームをもらうときだったんだ。
 教えてもらうことならきっとまだまだある。でもジンが言いたいのはコードネームをもらったのに他の人から何かを教わっていたら面子が立たないということだろう。
 だけどせっかくできた繋がりを手放すのは惜しい。

「お喋りしたいときに会うのはいい?」

 ジロリと睨まれたけど、そんなもの私に効かない。負けじとジンを見詰め返すと、めんどくさそうに顔を歪めた。

「好きにしろ」

 吐き出された言葉に、私は内心「勝った!」とガッツポーズをした。
 それから会話が盛り上がるわけもなく、再度シェリーを捜すように言われ車を降ろされた。

ヒトリヨガリ