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雲を掴もうとしているような仕事だというのに、それを説明するキュラソーに不満の色はない。ただ組織に言われたことを淡々と処理していっているような感じがする。
キュラソーは組織の重鎮の寵を受けていると聞くけど、それも納得できる。ただでさえ身体能力が高く、特異な能力を持っているのに、その上ここまで組織に忠実なのだ。そういうタイプの人は幹部になら他にもいるけど、キュラソーが特に際立っているのは行動のすべてに温度がないことだ。
似たタイプはジンだと思うけど、ジンは組織に心を傾けている。だから組織に仇なすものを許さない。
何か、キュラソーが心を注ぐものはないのだろうか。
「キュラソーはクリスマスは何かしたの?」
聞こえていないはずないのに、キュラソーは微かな反応も見せずにハンドルを回す。
仕事と関係のない話に返事がないのはいつものこと。これくらいでへこたれることなく「私は友達とプレゼント交換をしたりしたよ」と一人で話を続ける。米花百貨店で買ったお菓子は少年探偵団にとても喜んでもらえて、お礼としてあの子たちから匂いつきのキラキラしたペンやカラフルな紙のノートとか、可愛らしいプレゼントが返ってきてほっこりした。ケーキも一緒に食べたし、平和で楽しいパーティだった。
私がクリスマスを楽しんでいる間、組織は大変だったみたいだけど。
ウォッカがライらしき人物を目撃したのだ。そのことを聞いたジンは幹部を何人も動かし大きな騒動になったらしい。
ジンは自分の手でライを始末したいようで、同じようにライを追うバーボンを疎んでいるから私を使うことはなかった。そういう騒動があったことも、そして結局ウォッカの見たライは別人だったということも、全部終わったあとでバーボンから教えてもらった。
そしてそれと同じタイミングでバーボンも、「ライは生きていない」と調査を終わらした。
たまたまライと遭遇して、その生存を知っている私は一人で気まずくなっているけど、わざわざ言って波風を立てたくはない。私が黙っていればライは命の危険が減るし、ジンやバーボンも激情に駆られずに済む。
だから、ライにはどうか自分の立場を理解して人混みの中を当然のように歩かないでほしい。
手に力がこもり、クシャリと花束のラッピングが崩れた。
「あ、そうだ。ちょっと遅いけどクリスマスプレゼントにどう?」
ミモザをちょっと持ち上げて見せる。
運転中のキュラソーは、やっぱりちらりとも私を見ない。運転中じゃなくてもきっと見なかっただろうけど、それは考えてはいけないことだ。キュラソーとの会話は、折れない心が大事。
そのあと、久保田の件の話をする中で隙をついてはミモザを渡そうと果敢に挑戦したけどキュラソーも折れることはなく、結局、最後まで受け取ってもらえなかった。
毅然としたキュラソーに可愛らしすぎたかもしれないけど、しなやかで超人離れした獣のような美しさを引き立ててくれると思ったのに。