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通話を終わらせたスマートフォンをダウンコートのポケットに入れ、残してきた子供たちのもとに急いだ。
駅前で人目は多しだけど、決して治安がいいとは言えない。日も落ちてきたし用心するに越したことはない。
駆け足でさっきまでいた改札前に戻ると、少年探偵団の元気な三人組は道の端で頭を付き合わせてスマートフォンを覗き込んでいた。
私が戻ってきたことに気づいた歩美ちゃんが「あ!」と私に手を振った。
「電話は終わった?」
「うん、お待たせ」
「何の電話だったんですか?」
「お兄ちゃんが、今日遅くなるからご飯作れないって」
探偵の仕事でトラブルがあり、人を送ってから帰るらしい。仕事なんだからしかたないのに、透くんは申し訳なさそうに謝っていた。
「じゃあ何か食べに行くの?」
「ううん。歩美ちゃんたちは家で食べるんでしょ? 一人だったら外食の気分じゃないし、今日はもうピザトーストでも作ろうかなって考えてる」
透くんがいないとわかった瞬間、ジャンクフードが食べたくなった。
幼い三人は自分で夜ごはんを準備するということに「すごーい!」と口々に褒めそやす。でも、ピザトーストなんて調味料を軽く混ぜて適当にパンに塗ったあと、具とチーズを乗せて焼けば完成する。そんな絶賛されるほどのものじゃない。
「それより、三人は何を見ていたの?」
なにやら盛り上がっていたようだけど。
問いかければ、光彦くんが画面を見せてくれた。そこには「毛利探偵事務所で発砲事件」のテロップが表示されたニュースが映っていた。
「え? これってコナンくんのところだよね?」
「そうですよ」
「コナンくんは大丈夫なの?」
「はい。さっきメールをしたら無事だったと帰ってきました」
「それならよかった。……よかったのかな?」
無事でよかったけど、自分の家の事務所が事件現場になるのはきっとよくない。
でも子供たちは、まあコナンくんなら大丈夫だろうという反応だった。なんでもこの前ニュースでやっていた探偵事務所で立てこもりの事件もコナンくんのところだと言う。
「やっぱり探偵だと恨みを買ったりするのかな」
腕を組んで考えてみるけど、探偵なんて透くんくらいしか知らないからわからない。透くんも危険な事件に巻き込まれるようにならないといいけど。
「ねえねえ、愛子ちゃんのお兄さんって探偵さんなんだよね? どういう仕事をしているの?」
「最近、何しているかあんまり知らないんだよね」
シェリー捜索の手伝いを始めてから詳しいことは何も聞いていない。
「でも、この前はレストランに潜入したよ」
ウエイターとして一日だけ潜入したことを教えれば、三人の目はキラキラピカピカ輝いた。でも、目的が浮気調査と知った途端、一気に光を失って白けた。
「なーんだ。つまんない」
「お兄ちゃんは難事件を解決するタイプの探偵じゃないからなあ。毛利探偵みたいに探偵事務所も持っていないし」
「本当にお前のにいちゃん探偵かよ」
「事件性のない人探しとかも十分探偵の仕事だよ!」
ふてぶてしく頭の後ろで手を組む元太くんに、困っている人の手助けをするのも立派なことだと教えるがまったく聞き耳持たない。
「俺たちの方が事件を解決してるんじゃねえか?」
「そうかも知れませんよ。なんたって僕たちはパンフレットに載るくらいですからね!」
さも聞いてくださいと言わんばかりの顔で見られたので、期待にこたえて「パンフレット?」と尋ねれば、「警視庁の子供防犯プロジェクトです!」「歩美たち、そのパンフレットのモデルになるの!」と光彦くんと歩美ちゃんが、ずずいと私に一歩迫ってきた。その後ろで元太くんが「来週、警視庁で撮影するんだぜ!」と腰に手を当てて胸を張る。
小学一年生の探偵ごっこが警視庁の目に止まるのはたしかにすごい。けど、たぶんその立役者は三人ではなく今いないコナンくんだろうな。彼は顔も綺麗だからパンフレットのモデルに映えそうだし。
それにしても警視庁か、と数ヶ月前に忍び込んだ内部の景色を思い返す。あのときは爆弾魔の捜査資料が目的で他のことはまったく意識していなかったけど、用事がないこともない。
「ねえ、私も一緒に行ってもいい?」
真っ先に元太くんが渋い顔をして私を睨んだ。
「言っとくけど、俺たち『少年探偵団』への依頼だからお前は写れねえからな」
「それは全然構わないよ。みんなが撮影しているのを見たいだけだから」
みんなの活躍が見たいな〜と媚びると、歩美ちゃんは大喜びで賛成してくれた。二人も歩美ちゃんがいいならと渋々了承して、「二月五日だから忘れるなよ」とものすごく上から目線で元太くんに釘を刺された。今まで遊ぶ約束を忘れたことなんてないのに。