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 情報を得るためのコネを作ることを難しく考えていたのは、私がボンゴレだからだ。
 組織の幹部となるためには有益な情報を流さないといけないけど、なんでもかんでも情報を渡してしまうと組織が力をつけすぎてしまう。できるだけバランスを見て過不足のない情報を渡したい。だから権力者や有名人をコネにするのは避けたかった。そこと繋がってしまうと「情報を取ってこい」と命令されかねないので、情報を出し渋るような気難しい人や、中心から離れた人をピンポイントで狙っていたのだ。
 ロッシに言われてあれこれ考えることはやめた。そうだ、簡単に考えればいい。私には仲間がいるのだから。
 そうして私はロッシにアドバイスをもらった次の日、タイミングを見て行動に移した。


 向かった先は五階建てガラス張りのビル、風紀財団だ。
 私は小さな体がソファーに埋もれそうになるのと格闘しながら雲雀くんと向かい合っていた。

「それで、僕から得た情報を君の組織に渡すのかい?」

 私のミッションをかいつまんで説明すれば雲雀くんは真っ黒な瞳で私をじっと見つめた。

「ううん。雲雀くんからの情報だと大きすぎるから、もう少し下の人かな。草壁くんもだめだし誰かいい人いない? ある程度情報を得ることができて、ボンゴレに関わりがなくて、私とボンゴレを結びつけるおそれのない人」
「その条件ならいくらでもいるけれど、君の事情を考慮すると限られるね」

 「君もロリコンだと嫌でしょ」と意地悪く笑うので、強く首を縦に振った。逆に子どものくせにと言ってくるやつもやりづらいから遠慮したい。
 少しの間、雲雀くんは目を伏し無言になった。脳内で誰かヒットしないか考えてくれているのだろう。手持無沙汰になり手遊びをして雲雀くんの答えを待った。
 潜入捜査のパートナーにもなりうる人物が誰になるのか気になって落ち着かない。無意識のうちに体が揺れ、ソファーの上で転がりそうになった。そんな私を見て雲雀くんは意味深ににっこりと綺麗に笑った。

「僕がいいんじゃない?」
「だから雲雀くんだと……」
「君は『雲雀恭弥』が小学一年生に重要な情報を易々と渡すと思っているのかい」
「……思わないです」

 雲雀くんが天上天下唯我独尊なことは裏の世界じゃ周知の事実だ。そして女、子供にだって容赦しないことも。
 彼の純粋な暴力を思い出してぶるっと震えた。私だって出会い方が違えば咬み殺されていた可能性があったし、今だって雲雀くんに頼みごとができるのが不思議だ。おそらく彼が中学のときにリボーンの仲介で知り合ったおかげで今の関係に収まっているのだろう。リボーン様々だ。
 にこやかな表情のままの雲雀くんは、「全部君の好きなようにしなよ。その代わり、並盛に近づく組織のやつの情報を……いや、組織のやつらを並盛に誘導してよ」と無茶ぶりをしてきた。随分と機嫌がいいと思っていたが、そういうことか。近頃、風紀財団が大きくなって派手に暴れられなくなったから餌がほしいのか。
 私のできる範囲でいいのなら、さほど難しい条件ではない。好きに雲雀くんを使えるのなら安いものだ。

「わかった。もう少し私が動き回れるようになったら、組織の人が並盛に近づくようにしてみるね」
「よろしく」

 あっさりと雲雀くんと協定が結ばれてしまった。今まで一人で悩んでいたのはなんだったのか。報連相の大切さを学んだ。とはいえ、潜入中に頻繁に外部と連絡を取るわけにもいかないけど。
 私は横に置いていたリュックからスマートフォンを取り出して雲雀くんに見せた。

「前の携帯電話はイタリアに置いてきたから、また新しく連絡先交換しよう」

 雲雀くんはソファーから立ち上がり、デスクの上に無造作に置かれていたスマートフォン手に取り戻ってきた。そして無言で差し出された画面に表示された数字と英字を自分のスマートフォンに打ち込んでいく。私からワン切りで電話をかけて、メールも一通送っておいた。これでいつでも連絡ができる。

「偶然知り合った男の人が雲雀恭弥だったってことにしておくね。普通なら関係を築くのに時間がかかるし、しばらくは情報のやり取りは必要ないと思う」

 これで今日の目的は完遂した。窓の外には青空が広がっているが、あまり長時間外出するわけにはいかない。もう少し雲雀くんと話したい気持ちを押し殺して、雲雀くんにお礼を言って柔らかいソファーから立ち上がった。

ヒトリヨガリ