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公園に溢れかえっていた子供たちが姿を消し、ヒグラシは鳴き始め、夕暮れの影は長くなってきた。
暑い夏を松田と過ごした私は随分と肌が焼けたけど、元気に登下校している本物の小学生にはかなわない。
変わらない日々の中に楽しさを見つけるようになり、組織での活躍も上々。雲雀くんとの繋がりをジンに褒めてもらったくらい。なんともうまくいっている毎日だ。
最近では、やっとバーボンが私に銃の使い方を教えてくれるようになった。だけど、やっぱり私の身体に銃は大きすぎるみたいで、使うことはできるが扱うことは難しい。結局、訓練は進んでいない。
本部にある射撃練習場からの帰り道、信号で止まるとバーボンは「もう少し大きくなってからにしましょう」と提案してきた。
そして私の手を取った。
「小さな手では、素早く銃を扱うことなんてできないでしょう」
バーボンの手に包まれた、小さな私の手に目を向けた。バーボンの半分ほどの大きさしかない。
こんな手ではスライドを引くのも手こずった。それにオートマチックは撃ったあとにスライドがブローバックするのでしっかりとグリップを握れてないと銃が吹き飛んでしまう。
女性でも扱いやすいというベレッタの小型拳銃でもそうなのだからバーボンの言うように私には早かった。
バーボンの方からジンに提言してくれるらしいので任せることにした。
武器は持っているに越したことはないけど、過ぎたるは猶及ばざるが如し。落とした銃を奪われたら絶体絶命になる。
「肩のところ、あとで湿布を貼りましょうね」
首を捻って言われたところを見てみると、大きな青紫色の痣ができていた。銃の反動で転けたときに受け身が取れずに肩をぶつけたから、そのときにできたのだろう。
「うーん、これじゃあプールに行けそうにないね」
「……例のお友達と、ですか?」
「うん。プールの授業の話をしてて、いいなーって言ったら連れていってくれるって言ってくれたの。……ラッシュガード着てたらバレないかな?」
「今回は我慢しておいた方が無難では?」
「やっぱりそうかなあ……」
前までなら転んだとでも言っておけば誤魔化せただろうけど、今はもうボンゴレと知られているから追及されそう。
「かわりに花火でもしようかな」
「夜遅くになるのはダメです。研究所の人に怪しまれますよ」
「はあい」
口先だけの返事をした。
すでに松田とは何度も夜に会っている。さすがに深夜になるのは、いくら私の中身が大人といっても、世間体を考えて控えているけど。
バーボンに、松田とどんなことをしたのか話を振られたので、泳がないけど海に行ったこと、川でバーベキューしたこと、遊園地に行ったこと、更には虫取までしたことを語ってやった。ちなみにすべて松田の要望だ。
大人になって、友達は仕事か疎遠になったかで暇を持て余した松田と予定が合わず、そしてこの姿の私となら童心にかえることができるからと、いろんなことに誘われる。初めて会ったころの松田とは別人のようだ。
「そんなに好きなんですか、その友達のこと」
「好きだよ。だって友達だもん」
ゆるく笑っていたころも好きだったけど、最近の明るくはじけるような笑顔も好きだ。
松田のことを思い出しながら、運転するバーボンの横顔を見上げた。
「そういえば、ちょっとバーボンに似てるかも」
「……へえ、たとえば」
「あ、言動は全然違うんだよ! あの人、子供っぽいし。嫌だって言ったのに『何事も経験だろ』って言ってザリガニ釣りしたんだよ? ザリガニ釣る経験いると思う?」
バーボンは口元をゆるめて、「いつか、その経験が活きることがあるかもしれませんよ」なんて言ってきた。まさかバーボンもザリガニ釣り好きだったとか。
「あ、あとすぐにムキになる。スーパーボール掬いで私に負けたからって、二回戦だって言って射的したの。……こう思ったら全然似てないかも」
「そうですか? 案外似ているかもしれませんよ?」
「嘘だ〜。バーボンは絶対に死んだフリしたセミを『死んでるから大丈夫』とか騙して近寄らせようとしないでしょ!」
「まあ、……たしかにそんな大人げないことはしませんね」
「でしょ」
何度も頷いた。するとバーボンは呆れ顔になった。
「逆に、どこが似ているんですか」
「……遠くを見つめてるところ。誰か会いたい人がいるの?」
「ええ、まあ。この歳になればまた会いたいと思う人なんてたくさんいますよ。花が咲くと雨が降ったり風が吹いたりするものですから」
「さよならだけが人生だ、って?」
黄昏時の、不気味な黄金色の夕陽を背景にしたバーボンが儚く見えた。目を離した一瞬のうちに消えてしまいそうだと。
だから私はつい六歳の子供が知らないだろう、その言葉を続けてしまった。だけど後悔はない。そんな諦めたような顔をしてほしくはなかった。さよならは悲しいけど、花は散ってもまた次の年に綺麗に咲くのだから。