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最後に彼女に会ったのはいつだっただろうか。新しい生活が始まってから目まぐるしく日々が過ぎていったせいで、思い出すのに時間がかかった。
最後は、ライがまだ組織にいたときだ。彼女と一緒に買い物に行って、そういえば様子がライとの仲をからかったときの様子がおかしかったのは、もしかしてああなることを知っていたからなのかな。ライが組織をFBIだと判明して、すぐに私は明美さんに連絡を取ったけど、そのときにはもう電話が繋がらなかった。てっきりもう殺されたかと思って一時は明美さんと二度と会えないと諦めたくらいだ。
だから、再会して開口一番に「ごめんね」と謝られても、「無事でよかった」以外の返事が思いつかなかった。
夏の終わりに明美さんと会ったのは、私の家からバスで行ける距離の、木立の多い自然豊かな公園だった。
「まあ元気そうでよかったよ。……私が落ち込んでたときは励ましてもらったのに、明美さんが大変なときは連絡つかないんだもん」
子供に相談するなんて発想はきっとなかっただろうし、これから明美さんがまた大変な
目に遭ってもたぶん私には何も言わないだろうけど、でも「困ったことがあったら言ってね」と念を押すと、明美さんは「ありがとう」とはにかんだ。
私たちは広い公園の中を一緒に歩いて回り、そして疲れたころに公園の近くの小さなスタンドでジュースを買って、また公園に戻った。
木陰のベンチで涼みながら、私は忘れないうちにずしりと重いショップバッグを手渡した。
明美さんは袋の中に入っている小瓶を見て首を傾げた。
「カシスジャム?」
「うん。この前、バーボンと長野に行って、そのときに食べたカシスチーズケーキが美味しかったから明美さんにお裾分け」
「ありがとう! ……そっか、愛子ちゃんは今も彼と仲良くやってるのね。よかった」
手放しで喜ばれるとふざけたことも言えなくて、明美さんの生温い視線から逃げながら「まあ、バーボンは頼りになるからね。探り屋の洞察力を活かしてなんでもやってくれるよ」と普通にべた褒めしてしまった。
顔をしかめていると、横から、ふふっと小さく笑い声が聞こえた。
「どうしたの?」
「昔のこと思い出しちゃって」
「昔って……バーボンが組織に入ったころ? そのころは今と違ったの?」
「え、あ、うん、そうなの。……人って変わるんだなって感心しちゃったくらいなのよ」
ふうん、全然想像つかないなあ。なんて思いながら、ジュースを飲んだ。
涼風が汗ばんだ前髪を揺らす。近くに高い建物がないから晩夏の空が綺麗に見える。耳をすませば、遠くから草野球をしている子供たちの声が聞こえてきた。
「ここの公園、雰囲気がすごくいいね」
「でしょ。近くに美味しいカフェも多いみたいよ」
「明美さんが選んだの?」
「選んだと言えば選んだのかな。候補の場所をいくつか言われたから、その中から一番よさそうなここを選んだの」
好奇心で他にあった候補地を聞いてみれば、会員制のカフェ、ホテルラウンジ、遊園地なんかがあった。場所も屋内野外もバラバラで、いまいち選出理由がわからない。
だけど最終的な場所の決定権が明美さんにあるんだなと、ぼんやり思いながら、明美さんが組織でそこまで待遇が悪くなっていないことに安心した。妹さんの事情は聞いているけど、この組織は非人道的な行動なんて当たり前だから。
その後もベンチに座って、明美さんが最近行ったカフェの話やテレビで見たアイドルの話なんかをしていると、あっという間に日が落ちた。
明美さんが名残惜しそうに「もう帰らなくちゃね」と言った声がすごく寂しそうで、組織から継続して会っていいのか聞いていないのに、気づけば「また近いうちに遊ぼう」と声をかけていた。私の立場を思えば難しい立場の明美さんと親しくするのはあまりよくないことだけど、私の言葉に嬉しそうに綻ばせた顔を見れば、言ってよかったと思えた。