ライ×コンビニスイーツ

 ターゲットまで目測三十メートル。常に警戒していて、両脇の護衛に何度も話しかけている。この調子だと今日はターゲットに接触できないだろうな。そう思うと一気に気が抜けてやる気がなくなってしまった。
 チラッと横を歩くライを見れば、真剣な顔でターゲットを見張っている。とても今日はもう帰ろうなんて言えない。だけど、ターゲットは絶対に今日は一人にならないという確信がある。今までの経験がそう言っているのだ。

「ライ、今日は尾行しても無駄だよ」
「そうか」
「あの人、今日一日ずっと気を張っていたら明日にでもボロを出すから、明日にしようよ。はい、今日の仕事は終わりー!」
「……はあ」

 ライは目を閉じてため息をついた。次に目を開いた時には、もう任務中の鋭い眼光は消えていた。
 よし、これで今日は帰れる。
 即行で踵を返すと、ライに「待て」と止められた。

「なに?」
「急に戻るのは怪しいだろう」
「確かに」

 ライの言葉に納得して、仕方なくライと同じ方に向き直す。

「あ!」

 目の端に映ったコンビニを指させば、ライはすべてわかったかのように頷いた。

「行くか」

 やっぱりわかっていたようだ。
 ライの言葉を聞いて、大喜びでコンビニに駆け寄る。軽い音楽とともに迎えられ、暖房の効いた店内に入るとおでんの匂いが襲ってきた。もうおでんの季節か。
 軽い足取りでスイーツの棚に近寄ると、キラキラで可愛いパッケージのスイーツがたくさん並んでいた。全部美味しそう。
 どれにしようとウロウロしていると、背後からぬっとライが現れた。

「決まったのか?」
「まだ! ライも何か食べる?」
「いや……俺はいい」
「だろうね!」

 一応聞いたけれど、やっぱりライは食べないらしく私の分だけ悩むことにした。プリン、エクレア、ロールケーキ。誘惑はたくさんある。和菓子も美味しそうで目移りしていると、ライは飲み物の棚を見ていた。コーヒーでも買うのかな。ライの動向を見守っていると、思った通りライがコーヒーを手に取ろうとした。そのとき、私の目に牛乳が映った。

「牛乳だ!」

 ダッと駆け出して、一瞬でライの隣に移動し牛乳を手に取った。そしてライの手の中にあるコーヒーと牛乳を交換して押し付ける。

「俺はコーヒーを飲もうと思ったんだが?」
「いいからいいから! 一緒に牛乳飲もう! あと……はい、あんぱん」

 あんぱんを押し付けると、ライはあからさまに嫌そうな顔をした。私はあんぱんの代わりにエクレアにしよう。皮の中にどろっとしたものが入っているという点においては同じから、あんぱんもエクレアも似たようなものだ。
 それにエクレアのパッケージには「期間限定! チョコレート増量!」と書かれていてあんぱんよりエクレアの方が数倍輝いて見えた。

「なんだ、これは」
「張り込みといえばあんぱんと牛乳でしょ!」
「今日はもう帰るんじゃなかったのか?」
「帰ろうと思ったけど、張り込みごっこすることにした。ターゲットまだ離れていないし、まだ間に合うよ」
「張り込みごっこか……。まったく、お前は」

 何か言いたそうだけど、言うのを諦めて無言で買い物かごを持ってきた。それに牛乳二パックと、あんぱんとエクレアを入れた。すぐにライは会計をするためにレジに歩いていくので、慌ててお菓子売り場に行き、目についたお菓子を掴めるだけ掴んで私もレジに向かう。
 なんとか会計が終わるまでに間に合ったので、ドサッとかごの中に駄菓子を入れ「非常食!」と先手を打った。ライは私をちらりと見ただけで、何も言わずに会計が終わるのを待つ。

「いつもこんなに買っているのか」
「うん!」
「太るぞ」
「うるさい」

 失礼なライの横腹を突いていると、会計が終わってさっさとコンビニを後にした。コンビニの中が暖かかったので、寒さにぶるりと身震いした。
やっぱり張り込みごっこなんてやめて帰った方がよかったかも。さっそく後悔してしまった。とりあえずエクレア食べたら帰ろう。


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「ライ×コンビニスイーツ×任務中」のリクエストありがとうございました!
コンビニスイーツ要素が薄くなってしまって申し訳ありません!

ヒトリヨガリ