フラン×カルメラ

 ゆるい長期任務が終わってアジトに帰ると、ソファーにフランが溶けていた。よくあることなので気にすることなく部屋に戻り、あまり汚れていない服を脱ぎ捨てシャワーを浴び、水の滴る髪をタオルで乾かしながらリビングに行けば、まだフランが溶けたまま倒れている。
 「どうしたの」と聞いたら負けな気がする。けれど無視したままリビングでくつろげない。しかたなく口を開く。

「フラン?」

 呼びかければもぞもぞ動くから寝ているわけじゃないだろうけど、返事はない。
 気分が悪いのか、それとも落ち込んでいるのか心配になってきたときに、フランはいつもの間延びした声で「お腹がすいて力が出ないです」と、声を出した。クッションに顔をうずめたままのためくぐもっている。
 心配して損した。

「何か食べればいいじゃん」
「オカマセンパイは任務中でーす」
「キッチンに何かないの?」
「何かあるならとっくに食べてますよー。頭使ってくださいナマエセンパイ」

 ため息混じりの声にイラッとした。

「センパイ、何か買ってきてくださいよ」
「私、今長期任務から帰ってきたところなんだけど」
「ヴァリアークオリティでひとっ飛びで、ビューンと行けばあっという間じゃないですか」
「じゃあ、フランが自分で買いに行きなよ」
「だからミーはお腹がすいて力が出ないです。さっき言ったじゃないですか。もうボケたんですかー」

 人を使おうとして、しかも馬鹿にするなんて。
 立ち上がってフランの傍まで行き、クッションに埋まったカエルの頭を力いっぱい叩いたら「ぐえ」と、やる気のない悲鳴が上がった。「酷いですー、パワハラー」と抑揚のない声で非難するけど無視してキッチンの方に歩いて行けば、フランがソファーから立ち上がる音がした。
 私の後ろをついてくるフランが色々話してくるが、それも全部無視した。
 キッチンに着き、小鍋に水を入れて火にかけ、棚からココアを取り出すと、フランがあからさまに嫌そうな声を出す。

「なによ」
「ココアですかー」
「甘いもの飲んだら気がまぎれるでしょ? ココア飲んで夕飯まで我慢しなさいよ」
「お腹に溜まらないじゃないですか」
「文句あるなら自分でごはん買ってきなさいよ」

 キッチンには本当に何もなくて、せめて小麦粉があれば何か作ることもできたけれどそれもない。シェフはどうしたのと聞けば、「ボスがかっ消しました」と薄々勘付いていた答えが返ってくる。
 お湯が沸くまで調味料棚を眺めていると、重曹を発見した。砂糖も残り少ないけれど残っている。砂糖と重曹で何かできた気がする。と、二つを見ているとお玉の中で膨らむカルメラが思い浮かんだ。

「カルメラでも作ろうか」
「カルメラ……」
「カルメラ焼きとかカルメ焼きとも言うんだけど……」
「ああ、それなら知っていますよ。昔、黒曜にいた時に駄菓子屋で食べましたー」

 目を細めて思い出すように呟く。
 フランは外国人だから知らないかと思ったけれど、そういえば日本に住んでいたときもあるって言っていた。それなら細かい説明はしなくてもいいか。
 分量を量って、お玉に砂糖水を入れて火にかけ、沸騰したら火から下して重曹を入れて菜箸で混ぜれば、ぷくーっと膨らんだ。お玉からカルメラを外し、フランに渡すとカルメラを食べてから「堅い」と呟く。
 作ってもらっておいて文句なんてと思ったけれど、フランの表情を見ればそうではないことがわかった。

「これ、昔作ってもらったことありますー」
「ん? 誰?」
「黒曜にいたころなのは覚えてますけど、誰だったかは忘れました」
「クロームちゃんとか千種かな?」

 自分のことなのに「さあ」と首を捻って、そのまま残ったカルメラを食べていく。食べ終わったフランが「もう一つ」と言ってきたけれど、そこまで面倒見てられない。「終わり」と言い切って、ぐだぐだ文句を言われたけどカルメラは分量や温度を気にしないといけなくて疲れるから一つ作っただけでも褒めてほしいところだ。
 カエルをぼすぼす叩いてから、フランに捕まらないように急いでリビングに向かった。


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「フラン×カルメラ」のリクエストありがとうございました!

ヒトリヨガリ