雲雀×最中

 雲雀くんから緊急の呼び出しを受け、慌てて風紀財団の本部の雲雀くんの部屋に向かった。
 扉を開いて目に入ったのは、目を細めて微笑む雲雀くんの顔。緊急にしては余裕のある表情に、これは意味なく呼ばれたなと感づいた。
 呼び出しに使われたヒバードを雲雀くんに返して用を聞いたけれど、雲雀くんは無言でヒバードの頭を人差し指で撫でるだけで何も答えない。帰ってもいいかな、と思っているとようやく雲雀くんが私を見て口を開いた。

「立ってないで座りなよ」

 やっと口を開いたと思ったら挨拶もなく、そんなことを言うので、大した用もなさそうなので帰ろうと扉の方を向いたとき、扉が開き草壁くんが入ってきた。手には丸いお盆を持っていて、お盆には湯呑が二つと何か長方形の箱が乗っている。
 雲雀くんはもう一度「座りなよ」と言ってから、自身もソファーに腰を下ろした。
 せっかく草壁くんがお茶を持ってきてくれたのだから、ここで帰るのは大人げないと思って雲雀くんの正面に座ると、草壁くんがお茶と箱をテーブルに置いた。箱は雲雀くんと私のちょうど真ん中に。

「開けていいよ」
「うん。……これ何なの?」
「貰い物」

 そういうことを聞いたんじゃない。
 雲雀くんに聞くより開けた方が早いと包装紙を破いて、出てきた箱を開いた。

「わあ! 最中だ!」

 最中の皮と餡が別々に入っている。ヘラも入っているから自分で餡を皮に挟んで食べるのだろう。
 見たことない形式の最中で気分が高揚した。

「僕には多いから、ナマエなら喜んで食べるかと思って呼んだんだよ」
「ありがとう! 来てよかった!」

 雲雀くんは柔らかく笑ってから、意地悪な顔で「さっきまでは不機嫌そうだったのにね」とヒバードに話しかけた。
 それは雲雀くんが要件を言ってくれないから! と売り言葉を買ってしまいそうになったとき、すかさず草壁くんが「熱いお茶に合いますから、冷める前にぜひ召し上がってください」と話を変えてくれた。そうだ、今は雲雀くんと言い合っている場合ではない。
 ヘラで粒あんをたっぷり掬って、四角い箱状の最中の皮に餡を入れ、同じ形の最中の皮で蓋をした。餡が多すぎて横から少しはみ出してしまった。
 最中の皮はパリッと軽く、中の餡は濃厚で重い甘さ。草壁くんが言うように、確かに熱いお茶にぴったりだった。

「口に合ったようでよかったよ」
「雲雀くんから貰うものはなんでも美味しいよ。私の好みにぴったり! ……雲雀くんは食べないの?」

 せっせと皮に餡を詰める私ばかり見る雲雀くんに尋ねれば、雲雀くんは体を曲げて私のそばにある箱から一枚だけ最中の皮を取って、ヘラでわずかばかりの餡を皮に乗せた。
 たったそれだけ? という気持ちが顔に出てしまったようで、雲雀くんも草壁くんも小さく笑った。ちょっと恥ずかしかったけれど、雲雀くんはもう一枚の皮で挟むことなく皮に餡を乗せただけで食べたから、不思議な気持ちでいっぱいだった。

「甘い」
「でも美味しいでしょ」
「確かにね。普通の最中と違って皮が湿気てなくて美味しい」
「だよねー」

 雲雀くんにとっては本当に甘かったようで、最中を食べてすぐにお茶で流した。そのすぐ後に、また最中の皮を一枚取ったので、また食べるのかと目を丸くしていると、雲雀くんはおもむろに最中の皮を握りつぶした。

「えええ? ど、どうしたの?」
「そんなに驚くことないでしょ」
「驚くよ! 急に最中を粉々にして!」

 テーブルの上には小さくなった最中の皮が散乱している。
 戸惑っていると、雲雀くんは肩で休んでいたヒバードを手に乗せ、テーブルに移動させた。そして指で粉々の最中の皮を指す。ヒバードは嬉しそうに小さな破片を啄むので、ようやく雲雀くんの行動に合点がいった。

「ヒバードにもご褒美をあげないといけないでしょ」
「なるほどー。でもそれならそう言ってからにしてよ。本当に驚いたんだから!」

 頬を膨らませて言うと、雲雀くんは「驚く顔が面白いからやってるんだよ」と言ってまた意地悪く笑った。


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「雲雀×最中で草壁とヒバードと和やかに」のリクエストありがとうございました!

ヒトリヨガリ