スコッチ×雪見だいふく
最近、気温がぐっと下がった。暖房をガンガンにかけて部屋を暖めるけど指先は冷たいまま。子どもは体温が高いんじゃなかったっけ。やっぱり日本人にはコタツが必要なんだよ。エアコンもいいけど、コタツか、せめてストーブで一気に体を温めたい。
ブランケットにくるまっているとドアがノックされた。暖房があまりきいていないドアの方には行きたくなくて、ソファーに座ったまま「開いてるよー!」と叫ぶ。バーボンだったら叱られそうだけど、入ってきたのは運よくスコッチだった。ソファーの上から動く様子のない私を見て苦笑している。
「寒そうだね」
「うん。すっごく寒い」
スコッチで温まろうと手を伸ばせば、逃げることなく手を握ってくれた。だけどその手は私以上に冷たかった。
「つめた!」
「はは、さっきまで外にいたからな。ナマエは随分温かいね」
「寒いのに!」
「きっと、ずっと部屋の中にいるからだよ。廊下でも歩いてくると血行が良くなってぽかぽかするだろう」
「嫌だよ。廊下寒いじゃない」
絶対に動かない、とブランケットを胸元まで上げた。
スコッチを見れば困ったように笑っている。たぶん、バーボンかジンから外に連れ出すように言われているのだろう。だけど寒いのに用もないのに外に行きたくない。
スコッチは壁際の備え付けの机の椅子に座ると、机に置いてある雪見だいふくに気づいたようで、じっと見ている。
「食べないのか?」
「もう食べるよ」
パッケージのプラスチックの容器についていた細かい氷はもう溶けている。不思議そうな顔をしているので「溶かしてたの」と教える。
冷凍庫から出したばかりだと、周りの餅の部分が固まったままだし中のバニラも固い。だから部屋に置いて少し溶かして食べるんだよと言ってから、スコッチから受け取った雪見だいふくの蓋を開けた。
「油断すると全部溶けちゃって大変なことになるんだよ。だからタイミングが大事なの」
どや、と胸を張ってふにふにの雪見だいふくをピックで突いて見せる。
さあ食べようと口を開けて固まる。ちょっと待てよ、こんなに見せびらかしたのに私だけ食べるのって申し訳ないな。だけど雪見だいふくは二つ入り。一つあげると、私は一つしか食べられない。
容器に雪見だいふくを戻して、雪見だいふくとスコッチの顔を何度も交互に見る。
スコッチは好きだけど、でも雪見だいふくはもっと好き。
「どうしたんだ?」
変な行動の私にスコッチは首を傾げた。さっきまで楽しみにしていたのに食べるのを止めたから心配しているらしい。そんな心配してくれるスコッチに雪見だいふくの一つもあげないなんて、私はなんて情のないやつなんだ。
自分の心の小ささを反省して、ずいっとスコッチに雪見だいふくを近づける。苦渋の決断を下したのだ。
「一つ、食べていいよ」
「え? でも一つ食べたら……」
「いいから! いいから、早く食べて。溶けちゃうよ」
私の判断が揺らがないうちに食べて、と心の中で叫ぶ。
強く言ったので、スコッチは拒否することなくすんなりと雪見だいふくを口に入れた。半分かじると、周りの餅がとろっと伸びてピックから落ちそうになるので慌てて残りの半分も食べきる。
口いっぱいの雪見だいふくを咀嚼したスコッチは、目を細めた。
「うん。確かに美味しい」
「よかった!」
最近スコッチが疲れてるようなので、ちょうど甘いものをあげようと思ってたところだしよかった。いつも優しいスコッチに対するお礼には、雪見だいふくは小さすぎるけれど、一緒に食べるお菓子は一人で食べる高級なお菓子よりも何倍も幸せになるって信じてる。
私も幸せになるために、雪見だいふくを口に入れた。
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「スコッチ×雪見だいふく」のリクエストありがとうございました!