ジン×パフェ

 ジンからファミレスに呼び出され、何かと思えば無言のままメニューを渡された。ジンの前にはすでに黒いコーヒー。
 ちょっぴりごはんに誘われたのかと思ったけれど、やっぱりいつも通りの任務なんだろうな。せっかく今日は一日ダラダラしようと思ったのに。

「ウォッカはどうしたの?」
「目立つだろ」
「あー、うん。そうだね」

 またいつものカムフラージュか。
 ジンからは珍しいけれど、他の人からはよく情報収集やストーキングの同行を頼まれる。私みたいな子どもが一緒にいた方が警戒されないから。
 それはわかるけれど、やっぱり休日に急に駆り出されたのは気に食わない。店員さんを呼ぶと、メニューの裏のデザートページの一番高いパフェを頼んだ。こんなのジンからしたら、まったく痛手じゃないだろうけど、私の気分はスッキリした。

「ジンは何も食べないの? コーヒーだけだとお腹すくよ?」

 無言だと怪しまれるので気を効かせて話を振ったが、短く「食べねえ」としか返してくれない。だけどめげない。せっかくごはんに来たんだから、ちょっとは仲良くなりたい。
 どこかを睨むように見つめるジンを観察していると、満面の笑みを浮かべる店員さんが近寄ってきた。対子ども用の猫なで声で「どうぞ」と大きなパフェ渡された。思っていたより大きくて驚いてまばたきしていると、ジンがチラリと私を見た。

「……食べる?」
「いらねえ。お前が頼んだんだ、責任持って食え」
「うん、食べるよ。食べられると思うし」

 スプーンでてっぺんの生クリームを掬って食べると、甘くて幸せになった。大きいけれど、中はフルーツやシリアルの層があるし食べきれる自信がある。

「ええっと、……生クリーム美味しいよ」
「そうか」
「うん」

 会話が続かない。これはもしかして喋ったら邪魔なのかな。喋られると気が散るタイプ? まさかジンがそんな繊細なわけないよね……。
 どうするか悩んでいると、またジンがターゲットから視線をそらして私を見た。なんだろう、怒られるのかと身構えると「続けろ」という想像と正反対の言葉が出されて拍子が抜けた。それだけ言うと、ジンはすぐにターゲットに視線を戻した。
 無責任に続けろなんて言われても困る。仲良くなる気がさらさらないジンに一方的に話すのは骨が折れる。

「甘いものは幸せになるから好きなの。落ち込んでても、お菓子を食べたら幸せになるんだよ」
「……何か嫌なことでもあったのか」
「ないよ! ただの言葉のあやだよ。……ああ、でも今日みたいに休みの日に連れ出されるのは嫌よ。だからパフェで幸せになった!」
「ふん」

 ジンの目が「単純なやつ」と言っている。わかりやすい。
 パフェをスプーンでざくざく掘っていき、アイスクリームを食べながら「ジンはアイスはハーゲンダッツしか食べなさそう」なんて考えていると、それがそのまま口から出た。やばいと思ったがジンは特に反応しない。これも続けていいのだろうか。

「ねえ、ハーゲンダッツ食べたことある?」
「付き合いで前に食ったことがある」
「何味食べたの?」
「バニラだ」
「ああー、確かにバニラっぽい」

 大きな体で、小さなハーゲンダッツを持っているジンを想像すると、ちょっとおかしくて笑えた。さすがに笑うのはダメだったようで、ヒヤッと殺気を感じた。

「ご、ごめん、バカにしたわけじゃ……」

 謝ろうとすると、その言葉に被せてジンが「早く食え」と食いぎみに言ってきた。

「え?」
「ターゲットが取引したのを確認した。もう用はないから早く食ってずらかるぞ」

 どうやら殺気は私にではなくターゲットに対してだったようだ。
 ジンの言葉にうなずいて、さっきよりスピードをあげてパフェの下層のシリアルとジャムを口に運ぶ。

「店を出たら、お前は先に帰れ」
「ジンは?」
「俺は隠れてターゲットが出てくるのを待つ」

 ニヤリと口元を歪めて「裏切り者を片付ける」と笑うジン。楽しそうでなによりだ。
 早く帰らないと、ややこしいことに巻き込まれそうな気配を察知したので、パフェの最後の一口を無理矢理口に詰め込んだ。


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リクエストありがとうございました!
「ジン×パフェで、一生懸命会話をしようとする夢主」というリクエストを見てすごくときめきました。ありがとうございます!

ヒトリヨガリ