バーボン×シュークリーム

「ナマエ、今お腹すいているか?」
「うん? ……うん、今日はまだお菓子食べてないからお腹すいてるよ」

 時計の針は二時三十分を指している。三時のおやつの時間はまだもうしばらくある。
 私の言葉に、バーボンは嬉しそうに後ろ手に持っていた箱を見せてきた。見るからにスイーツの入ってそうな箱にときめきが隠せない。甘い香りの漂う箱を受け取り、ウキウキしながら箱を開けると大きなシュークリームが入っていた。

「わあ!」
「喜んでもらえて嬉しいよ」
「うんうん! ありがとう!」

 小箱を両手で持ってくるくる回っていると、バーボンは「ほら、いつまでも喜んでないで食べる準備をするぞ」と優しく笑った。
 いつもは食堂や部屋でお菓子を食べるので今日もそうかと思ったけれど、バーボンについていくと穏やかな日差しの降り注ぐテラスに着いた。テラスは客人用だけど今日は誰も来ないからいいらしい。それに天気がいいからここで食べようと提案してきた。もちろん、この美味しそうなシュークリームを食べる最高のロケーションだから反対するはずもない。
 私には少し高い椅子に座って、箱からシュークリームを取り出そうと蓋を開けると、すかさずバーボンがウエットティッシュを出してきた。

「準備がいいね」
「何事も準備が大切だからな。備えあれば憂いなしだ」

 受け取ったウエットティッシュで手を拭いて、今度こそシュークリームを取り出した。いただきますの言葉と同時にシュークリームにかぶりつく。

「んん!」

 勢いが良すぎて反対側からクリームがはみ出した。だけど、それははみ出すほどたっぷりクリームが入っているということで、幸せも溢れ出た。シュー生地はサクサクで食べごたえがあるし、クリームは滑らかで甘くてカスタードと生クリームの比率が完璧。

「美味しい!」
「そんな顔してるよ。花が舞ってるみたいだ」

 私も自分で目が輝いている自覚がある。
 二口目も勢いよくかぶりつけば、圧力に耐えきれずクリームがドロリと手に落ちた。

「はは、絶対そうなると思った」

 口いっぱいにクリームが詰まっているのでバーボンの言葉に返事ができない。とりあえずバーボンよりクリームの方が大事だ。手に伝ったクリームを指で掬って舐め取り、今にもシュークリームから零れ落ちそうなクリームを吸って食べた。
 どうにか大惨事は免れた。

「ほら、口の周りがクリームまみれだ」
「ん」

 頭を掴まれ、バーボンの方へ向けられた。バーボンは左手で私の頭を、右手でウエットティッシュを持って私の口を拭いた。

「ありがとう」
「また汚れるだろうから、お礼は最後でいいよ。手も最後に拭こうか」
「うん、そうする」

 バーボンに拭かれている間も視線はシュークリームに釘付け。シュークリームが早く食べてと私に囁いている。
 バーボンが頭から手を放した瞬間に、幼い子どものようにがぶりと汚れを気にせず食べた。せっかく体が小さくなっているんだから、人目を気にしてコソコソ食べてられない。子どものように豪快にシュークリームを楽しみたい。
 口の端についたクリームをペロリと舐めて、また一口進める。
 何が面白いのか、私が一心不乱にシュークリームを食べ続けるのをバーボンは笑いながら見ている。首を傾げながらシュークリームを食べていると、察したバーボンが口を開いた。

「お店でシュークリームを見つけたときに、口いっぱいに頬張りながら食べるナマエの姿が思い浮かんだんだ。今まさにその通りだから予想だからちょっと面白くて」

 言いながらも目を細めて笑うバーボンは、窓から射す光が髪に反射してキラキラしていて綺麗だった。
 じっとバーボンを見ていると、バーボンは私の顔にかかった前髪を、クリームが付かないようにそっと横にかけてくれた。普段から面倒見がいいけれど、今日は一段と面倒見がいい。何があったか知らないけれど、きっとお兄さんデーを楽しんでいるのだと勝手にあたりをつけて、意識をシュークリームに集中させた。
 シュークリームを食べ終わったら、お礼にコーヒーを淹れてあげよう。


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「バーボン×シュークリームで夢主の世話を焼くバーボン」のリクエストありがとうございました!
可愛いリクエストで書いていて楽しかったです!

ヒトリヨガリ