スコッチ×たい焼き
「あれ、今から出掛けるのか?」
研究所の外に出ると、ちょうど研究所に入ろうとしていたスコッチと会った。
「うん。ちょっと体を動かしたいから散歩に行こうかなって思って」
「それじゃあ僕も一緒に行こうかな。……ついていっても大丈夫かい?」
「大丈夫だけど、何か用があったんじゃないの?」
わざわざ研究所に来たのに私と一緒に散歩に行っていいのか心配したけれど、その心配は杞憂だったようだ。スコッチは「君に会いに来たんだ」とへらりと笑った。
最近バーボンが忙しくて顔を見せていないから私が寂しがっているんじゃないかと思って来たと言うが、生憎、バーボンが来ていないことにも気づかないくらい引きこもり生活をエンジョイしていた。だけど少しバーボンが可哀想だし、来てくれたスコッチにも悪いので、寂しかったフリをしておく。子どものフリもだいぶ板についた。
一人で散歩するときは研究所の近くの大通りを歩くけれど、スコッチは「そこは車が多くて危険だから」と言って人通りの少ない細い道を選んで歩く。いつもと見える景色が違っていて新鮮だ。
「一人で出歩くときは、車に気を付けて大通りを歩くんだぞ」
「はーい!」
小学校の先生に返事をするように元気よく片手を挙げて返事をすると、スコッチは満足げに私の頭をぽすぽすと撫でた。
しばらく歩いていると、大きな公園が現れた。こっちの方は来たことがないので、こんなところに公園があるなんて知らなかった。塀の代わりに垣根がぐるりと公園の周りに植えられている。
散歩のついでに公園を散策することにして、公園の中に入ると一角で屋台をしているのを見つけた。目を凝らせば「たい焼き」と書いてある。ばっと勢いよくスコッチを見上げると、スコッチは笑いながら「行っておいで」と背中を押した。
「うん、行ってくる! ちょっと待っててね、すぐ買ってくるから」
そう言い残して駆け出せば、後ろから「ちゃんと前見て走れよ」というスコッチの言葉が聞こえてくる。バカにするな! と気にせず走ればバランスを崩して砂利の上に盛大に転んでしまった。後ろから「だから言っただろう」と呆れと心配とが混じった声がする。
子どものフリは慣れてもも、子どもの体のバランスには慣れていないようだ。
痛いけれど怪我はしていないので起き上がって屋台まで、今度は駆け足で近寄る。屋台のおじさんにさっき転んだところを見られていたようで、豪快に笑われてしまった。
気恥ずかしくて視線を泳がせながらたい焼きを一つ買うと、おじさんが茶目っ気たっぷりにウインクして、もう一つ渡してきた。「あの兄ちゃんにもやりな」とスコッチを指差して言うので、お礼を言って受け取ってからスコッチの元に戻った。
「はい」
「あれ、俺の分も?」
「おじさんがおまけしてくれたの」
片方を渡してから、屋台を振り返っておじさんに手を振った。
「スコッチは頭から食べるタイプ? 尻尾から?」
「あんまり気にしたことないけど、どちらかと言えば頭かな。袋から出したときに頭が上だからね。ほら」
袋からたい焼きの頭を出して見せた。そして「ナマエは?」と聞いてきたので、よくぞ聞いてくれましたと、袋からたい焼きを出して太ったお腹を二つに裂いた。
「真ん中!」
渾身のどや顔にスコッチが噴き出した。が、気にせずほくほくのあんこを口に詰める。
「初めて見るタイプの食べ方だ」
「ん……。温かいあんこの美味しさを一口目から楽しめる食べ方だよ」
「贅沢な食べ方だね。どう、美味しいかい?」
「美味しいよ。あったかくて体が暖まる」
「今日は冷えるからね。風が強くなる前に帰ろうか」
そう言いながらスコッチは歩き出したのでそれに付いていく。二人で肩を並べて、たい焼きを食べながら研究所までの道のりをのんびり歩いた。
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「スコッチ×たい焼きで散歩中」のリクエストありがとうございました!