復活 子世代

櫻木初(うい)、笹川寿々(すず)、沢田七重(ななえ)、獄寺咲鳥(さとり)、六道、雲雀梢(こずえ)、

「やりきりましたね」

 疲労困憊といった様子で、けれど誇らしげにひかりが呟いた。
 病室は四人部屋だが、室内には六人の少女が顔を揃えていた。隣の部屋にいた、重症のはずの二人がひょっこりとやって来たたからだ。

「ま、これで役目は終わったね……」
「いい加減、バカンスでも取らせてもらわなきゃ割に合わないな」
 そう言ったのは、六人の中でも特に重症と診断された初と咲鳥だ。
 傷の深かった初は包帯で体がほぼ覆われており、まるでミイラのような風貌になっている。対する咲鳥は、肉体こそ外傷は少ないものの、精神的な防波堤を請け負っていたこともあり、臓器のダメージが酷いと診断され、二人とも要安静との診察結果が申し渡されている。

「ね、七重ちゃんはこれからどうしたい?」
「……私に、それを言う権利はないよ」
「阿呆。権利がどうのって誰が言ったよ。なにがしてえのか言えっつってんだ」
 寿々の問いに暗い影を滲ませた七重の言葉を、溜め息混じりに咲鳥が一蹴する。

「やりたい、こと……旅、とか?」
「いいね、旅!」明るい声で寿々が手を叩く。「生きてるうちに全国制覇したいなぁ!」
「あの人達には財布になってもらいましょうね」と梢。
「それくらいしてもバチは当たんねえよ、こっちはてめーらの尻拭い散々してやったんだからよぉ」と口角を上げる咲鳥。
「こらこら咲鳥、口が悪い。ただまあ、マフィアだし金は持ってそうだよね」と初。
「それな〜!」


「私達は、自分の未来を対価に母さん達をあそこから出すつもりだった」
「……だけど、葉ちゃんがそれに気づいて、自分の体の一部を対価にそれを引き伸ばしてくれた」
「おかげで私達は、得るはずのなかった高校生活なんてものを手に入れちゃったわけで。……ああ、すごく幸せな日々だったよ」
「葉ちゃんを責めるつもりはないんだ。むしろ感謝してる。あの子の英断で、私達は未来を貰った」
「だから、妥当な対価なのよ。時を止められた母さん達を異界から取り戻す。ーーその対価に、私達の寿命(じかん)を支払うのは」
「むしろ今すぐ命全部取られなかっただけ良心的だよな。数年でも時間が残されてんだから、僥倖僥倖」

ケラケラと笑う姿に、悔いや憎しみの感情は感じられない。

「ーー時間を渡し、けれど愛で生き延びてしまった私達は、生殖機能を失った。どれだけ卑しく生き延びても、命を未来に繋げることができない」
「それに気づいた時点で、母さんを助けるのが命題だって気づいちゃったんだよ」
「ずっと感じていた。私が子を成す機能を失っても大切にしてくれていたけど、跡継ぎが必要な祖父が苦悩していたのを」
 息を呑む音に、七重は皮肉げな笑みを浮かべる。
「そうよね。ボンゴレ直系の血筋は私だけ。けれど私は子を成すことはできず、父は母以外を愛するつもりがない」
「未来のない私が生きるより、時を止められて、肉体の劣化のない母さんを戻すべき。それが一番現実的な判断だった」
「私達が七つのときに攫われて、そこから十数年肉体の時は止まっていたーー十分子供を作ってもまだリスクは少ないはずよ」
「年齢差がえげつないことになるけれど、そこはほら、うまく誤魔化してもらうということで」
「私達はそう定められて、全員「女」として生まれてきたけど、今後産まれてくる子達はその因果に巻き込まれることはない。……大丈夫、次の子はきっと男の子ですよ」

 暗に、自分達の性すら「神だったもの」に決められていたのだと言われ、頭を鈍器で殴られたような衝撃が走る。
 考えてみれば当たり前のことだったのだ。全員の子供が同じ年に生まれ、それが全員、女の子だったなんてあまりにも予定調和だ。だけど当時はそれをおかしく思わなかった。男だと散々言われていた子供が、産まれたら女で大変驚いたと、笑い話にしかなっていなかった。
 ーーそれが、罪のない子供達が背負わされた因果だなどと知る由もなく。

 もちろん、元々女の子だった子もいるのだろう。けれど、言われてみれば「男」であったなら違和感の無い子供が居るのも確かだ。それはつまり、本来その子は男として産まれてくる予定だったのではと、今ではそう思ってしまえて。

 どうしてだ、と今は消え失せた名もなき「神」を呪う。

 どうして子供だったんだ。
 どうして妻だったんだ。
 どうしてあの子達から奪ったんだ。
 どうして、どうして、どうしてーーどうして、自分達から奪わなかった?

「ーー直接奪うより、大切なものを奪ったほうが、絶望感か深くなるから」

 心を見通したような言葉が部屋の中に響いた。
 七重は、入れられた飲み物に手をつけて一息つく。そして立ち尽くすその姿を見て、困ったように笑った。


「」


「凜子、お前その口の悪さは」
「父親の遺伝。つーかTPO弁えてんだからええじゃろ的な?」
「鼻で笑ったぞアイツ……」「さすが京都で揉まれてきただけある」「異界を炎上させた女はこえーな」「見ろよ、不遜に笑ってやがるぜ……」

「初っちぃぃぃ!」
「寄るな」
 「ぎゃん!」と悲鳴をあげながら急ブレーキをかけた男を、初は冷めた目で見やる。
「なんでいんだお前」
「誠凛で訊いてきたっす!」
「帰れ」
「やだ!」




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