ワダツミさん
「あ、あの……結婚、してくれませんか」
ひしと掴まれた両手はビクともせず、男の蕩けるような眼差しが女を溶かしていく。
「けっこん」
「はい、結婚……僕と夫婦になってください」
絶対幸せにします働かなくていいです家事も仕事もぜんぶ僕がやります好きです好き好き愛してるだから僕とひとつになってください伴侶になっていつもそばにいて下さいそれだけでいいんです。
「……ええと」
しばし考えた女は、じゃあと人差し指を立てる。
「私の条件を飲んでくれるのなら」
「ええ、ええ、いくらでも……!」
熱く悩ましげな吐息をもらす姿は今にも絶頂に達すると言わんばかり。傍から見れば完全に不審者であるところを、目の前の女の落ち着いた姿によってかろうじて通報を免れていた。
「――私より、長生きしてください」
「え……?」
「私が死ぬまで、私の隣にいて。絶対に死なないで。私を看取って、その後は好きにしてください」
「はぁ……んッ……それは、ぁッ、」
「私が生きている限り私を一人にしないのなら、しましょう。結婚」