従兄妹大好きお兄ちゃん

一般家庭出身の魔法使いお兄ちゃんが、魔法使いにはなれなかったものの激レア能力持ちだった可愛いいとこのために一肌脱ぐ話(要約)
別名・恋のキューピットお兄ちゃんが英国で出会ったうぃりあむくんを日本に誘いいとこと運命の出会いをさせて「計画通り」顔を晒すまでのギャグコメディ。

登場人物
お兄ちゃん(むすびくん):高瀬 結日(たかせ むすび)
前世の記憶がぼんやりある魔法使い。
一見どこにでもいそうな普通のお兄ちゃんだが、いとこへの溺愛っぷりが凄まじい。基本的に愛が重く、一般人の弟たちを溺愛しすぎて煙たがられているらしく、そのぶんいとこを尚のこと愛でている(弟たちからいとこに謝罪の手紙が定期的に届く)。
マホウトコロの卒業生で現在は陰陽省で呪い破りの仕事とマホウトコロの指導員・寮監もしている。みんなのパパ役。
元来密度の濃い魔法を得意とし、呪い破りも天職だったが、本人は自身の愛の重さから未来ある子どもを守り育てたいと思い指導員に。
年齢はビルよりも五つほど上。いとことは十いかない程度に離れている。自分で仕組んだこととはいえ、愛するいとことビルが交際を始めてからは定期的に血涙を流しては生徒たちに慰められてる姿を目撃されるようになる。ハリポタはふわっとしか知らない。

いとこ)居鶴
〈異能持ち〉。むすびくんとは『不思議なことが出来る同士』として、親戚の中でも一等なかよしだった。
七歳のときにマホウトコロからの入学通知が届かず、『魔法使い』になれないことに絶望。不思議な力が止められなくなって塞ぎ込んでしまう。
体が繭のようなもので包み込まれ、蛹のようになってしまったいとこを見たむすびは彼女が〈異能持ち〉ではと確信。マホウトコロの教諭を呼び、後継がおらずひそかに深刻な問題となっていた「旧い魔法」の使い手だと判明する。
通常の『魔法使い』になるのは難しいが、一定の魔力を有することから、マホウトコロ・異能持ち学科へ入学。検査によると、この異能によってマホウトコロの規定魔力量に届かなかった様子。
一般教養や基礎魔法を教わりつつ、各自〈異能〉を使いこなし制御すべく、それぞれ師となる人のところに師事していた。
四代目の『紡ぎ手』となった彼女には『絃(いと)』という字名が与えられており、公にはこの名を名乗ることが多い。
年齢はたぶんチャーリーのひとつ下、パーシーのふたつ年上。(ビルとパーシーで五つ、チャーリーとパーシーで三つ歳が違う)ので、ビルとは三歳下。
『原作』軸では子どもたちの下宿の敷地の一角に用意された一軒家兼工房で暮らしている。



 俺には可愛い『妹』がいる。

 妹――厳密に言えば、俺の母方のいとこにあたる女の子だ。歳が離れていて、俺がマホウトコロに入学したとき、彼女はまだ産まれる前だった。
 田舎ということもあってか地味に親戚が多かったものの、俺たちの世代でははじめての女の子で、性別をおばさんから教えられたとき、弟たちや他のいとこたちとともにそれはそれは盛り上がったのを覚えている。
 生まれる前からそれなのだ、彼女が誕生したときといったら、それはもう、親戚中大フィーバーだ。マシュマロみたいにもちもちの白い肌、つぶらな瞳、ムニュムニュと動かすピンク色の唇。甘い香りもどこからか漂ってきて、日本人特有の黒みがかった髪をまばらに生やしたちっちゃな女の子は、気づけば俺の中でアイドルとなっていた。

 マホウトコロは基本的に寮生活だった。厳密に言えば十一になるまでは学校の用意した下宿でみんなで暮らしていたのだが――どちらにせよ、親戚と会える機会はとても限られていた。そんな時間を縫って、会いに行くたび、どんどん可愛くなっていくいとこ。
 寝返りしかできなかった彼女が次会った時にはよちよち歩きをしていた時の感動。両親であるおじさんやおばさんやいとこたちよりよほど感動していると言われてしまうほど、俺はもう、彼女にメロメロでぞっこんだった。

「むしゅびにいちゃあ」
「なあに〜?」

 もみじみたいな手を広げ、よたよた近寄ってきた可愛い子をぎゅうと抱きしめる。
 毛が生え揃った頭を撫でてやれば、ふくふくした顔に満面の笑みが咲くので、それがもうなによりも愛おしくて、なにより幸せだった。

「にいちゃ、みえ〜」
「うん?」

 首を傾げた俺に、彼女は手をぎゅうと握りしめ、それからパッと開く。

「――わあ」

 しゅるり、しゅるり――音で表現するのなら、きっとそういう感じだろう。
 ちいさな手のひらに乗せられていた種が、早送りするように花へと成長していくのを見守る。この光景に見覚えがあった。紛れもなく、魔法だ。

「むすびくん」
 それを横から見守っていたおばさんに、俺は頷いてみせる。
「うん、間違いないと思う」――俺の返事に、おばさんは嬉しいような、複雑そうな表情を浮かべた。

 彼女は、昔から片鱗を見せていた。こうして花を咲かせたり、誰かにぴとりとくっついて傷を癒したり、近くのものを少しだけ浮かせたり。
 だから、俺は疑わなかった。この子も――俺と同じ魔法使いなのだと、そう信じていた。
 同じ学び舎に通えると、バラ色の日々未来予想図を描いて目に見えるように有頂天になっていたのだ。
 だから、彼女が七つなる年――マホウトコロから入学届けが来なかった事実は、俺に衝撃を与えるにはじゅうぶんすぎた。
 そして俺にもここまで衝撃を与えるのなら――幼くも利発だったあの子に与える衝撃は、それ以上であると、気づいてやらなければならなかったのに。

 おばさんから連絡が来て、いとこの様子が変なのだと知らされ、急いで家に行って見た。
 ある意味、魔力暴走とも呼べるそれに、俺は目を見開いた。

「これは――」

 部屋の奥。いつもなら暖かな日が差していたはずの部屋はじっとりとして、日中だというのにどこか薄暗い。
 ベッドが置いてあるはずの場所は今、到底、人が眠っているようには見えなかった。
 俺の隣で、青い顔をしたおばさんが言う。

「気づいたらこうなっていたの――私たちにも心当たりがなくて、だから、むすびくんならって……」

 寝室である部屋は、まるで何かの巣のように変貌していた。
 壁に張り付くようにして伸びる糸、それらの中心には純白の繭に包み込まれている、蛹のようになったかわいいいとこの姿――

 それを見て、俺は即座にわかってしまった。
 これはマホウトコロで先輩たちが話しているのをよく見かける、同じ学び舎に通えるけれど、そもそも見つかる確率がめちゃくちゃランダムなので結構日頃から捜索されているし、高等課程において各地で捜索する実習が行われるという、

「もしもし先生!? 今すぐこれから言う住所に来て!!」

 俺のアイドル、異能持ちっぽいんだけど!
 固定電話を返り、開口一番そう叫んだ俺に、先生が電話の向こう側でひっくり返る音が聞こえた。わかるぜ、その気持ち。



 結論から言うと、間違いなくマイフェアリーは〈異能持ち〉だった。

 わからない奴のために説明すると、異能というのは、魔法の中でも『一部の力』だけが強く発現したもので、〈異能持ち〉とは、ある魔法のみを突き詰めて――魔法使いの何十倍も濃ゆい力で扱える人材のことを言う。
 幽霊が見えるとか、人の死が何となくにおいでわかるとか、そういうのも部類されるので、正直〈異能持ち〉の幅はめちゃくちゃ広い。
 ただ、前述の通り、この異能というものは、幅が広すぎるがゆえに特定が難しいのだ。目に見えて魔力暴走などが起きる訳でもないし、起きたとしても、魔法の存在が表に出てないのだ、親は隠すし、最悪、口封じのため、手に掛ける――という例だってある。
 英国には超能力を研究する機関があるようだが、ぶっちゃけ俺としては超能力も根本的なところは魔法と同じなのだろうなあと思っている。閑話休題。

 我がアイドルについてだが、先生方が駆けつけ、俺がマイエンジェルをめちゃめちゃ頑張って宥めてヨシヨシしたことで、彼女は天岩戸(まゆのすがた)から無事に出てきてくれた。
『わたしも、魔法つかいになれたら、いっぱいすごいことできるって……だから、みんなのやくにたてるとおもって、だから……それで……』
 話を聞くと、彼女は魔法使いになって、たくさん勉強して、お金を稼いで家族に楽をさせてあげたかったらしい。親戚とはいえ、よその家の金銭事情など知る訳もなく、俺は泣きながらそう告げる天使の姿に胸を痛めた。

 はやくおかねいっぱいつくってね、ままに元気になってほしいの。まま、いつもつかれたかおしてるから。
 ぱぱもね、むりしてわらってるの。おにいちゃんたちも、わたしのまえだと大丈夫っていうけど、ほんとはちがうんだよ。わたし、しってうもん……。
 というのが、彼女の弁である。
 いや俺の天使健気すぎない? 俺はそれを聞いてもらい泣きしたし、話を聞いた天使の家族(いとこ家族)もみんな泣いた。わかるよ、小さい子どもがそんなふうに思ってたなんて、悲しいし悔しいし情けないしでもそういうことを考えられる優しい子に育ってくれて嬉しいし、もう情緒めちゃめちゃになるよね、わかるよ、

先生が言った。
「や、でも実際のとこ、あの子の願い叶うかも」
「なんやて?」
「あの子の異能、たぶん機織り向きだろ」
「アッ」
「いま確認中だけど、あの歳であそこまでできんだ、優秀な紡ぎ手になれるだろ、お上やら貴族連中、あの子を手に入れるためにいくらでも財布の紐緩めるぞ」
「なんてこった……俺の天使がいつの間にかファム・ファタールやんけ!!」

「えっ、ていうか待って? つまり編入確定? 俺とバラ色のスクールライフ確定演出!?」
「うーん、異能持ちは魔法使い学科とは別学科だからなあ」
「っっっざっけんなよぜってえ一緒に通ったるわい!!!」
「圧が強いんだよなぁ」
「一緒に通えなかったらアレだから、白堕ちしてやるから!!!」
「脅しなんだよなぁ」



 可愛い可愛いマイエンジェルに彼氏が出来た。
 その速報を聞いた瞬間俺は泣き崩れ、担当している初等科の子どもたちに慰められた。エーンみんないい子!
 たぶん直に聞いたら耐えられねえと思って友人伝いに頼んでおいたから良かったものの、やはりショックは大きい。頭の裏には走馬灯のようにマイエンジェルの成長録が流れている。
 産まれたばかりのあのまろい頬、よちよち歩きで俺のところまで来てくれた時の感動、初めて小さな魔法を見せてくれた、あの喜び……いろんな感情がごちゃ混ぜになって控えめに言って涙が止まらない。

 相手はご存知、俺が英国からヘッドハンティングしてきたウィリアムくんである。
 現在陰陽省の呪詛科で働く彼は、定期的にマホウトコロで指導員として呪いに関する授業をしてくれている。空いている時間は、マホウトコロの興味のある学科に聴講生として参加していることも少なくない。日本魔法界は海外から転職してきた人への福利厚生も手厚くするのを心がけています。
 ホグワーツを首席で卒業し、グリンゴッツで呪い破りをしていた実績は伊達ではなく、なおかつ彼が大家族の長男ということもあり、すごく子供受けが良い。
 現在はマホウトコロの子どもたちに『ウィリアムせんせい』という呼び名で慕われている。
 本人は気楽に(魔法界の成人年齢が十六ということもあり、子どもたちと年の差があまりないのだ)短縮形であるビルと読んで欲しいようなのだが、しかし日本人そういうところ真面目なので、浸透させるにはまだまだ時間が掛かることだろう。
 まだまだ呂律の回らないちびっ子たちに「ウィルせんせ」と呼ばれている程度である。あと定期的に子どもたちにクイーンズ・イングリッシュを仕込んでいる。

 眉目秀麗才色兼備、赤毛にポニーテールが眩しいイケメン、それも英国魔法界においてはある意味名の知れた純血の出身である彼が選んだのは、異能持ちの我が天使。
 これには日本のお上も地味に衝撃が走ったようだった。

(いやまあ、仕組んだの俺だけどな)

 具体的に言うのなら、俺と同期の「自称・恋のキューピット」である男、そして俺と同じ転生組の女子、エトセトラエトセトラで共謀してビルを英国から引っ張り出したのだ。
 理由は単純明快、ありとあらゆる占いで捜したマイエンジェルの最も良い相性の相手が彼だったというだけの話。
 この世界の『原典』を知る転生組からはちょっと不安の声が上がったが、それもしだいにおさまった。
 冷静に考えろ、俺らの知るハリポタはイギリスが舞台だし、日本の魔法使い事情についてマホウトコロ≠ニいうこと以外ほとんど説明も出されていない未知の領域である。
 つまりココはパラレルワールドってコト。深刻に考えるだけ無駄である。俺たちが生きてる時点でバタフライエフェクトは発生不可避なのだから。
 奇妙な世界出身でかつて殺人鬼から逃げ切った同期生が「わかる」と頷いたので、間違いなしである。

 そも、マホウトコロ含め、かの世界で語られる魔法学校はいわゆる「エリート校」にあたるらしく、一定水準以上の魔力がなければ入学通知は届かない。俺の天使に届かなかったのも、つまりそういうことだ。
 なら、一定水準以下の魔法使いの子どもたちはどうのるのかという話は、基本的に魔法族は自宅で親が子に教えるのと、そういう子たち向けに魔法を教える学校が存在しているとのこと。
 日本の場合、島国ということと一般人とほぼ同化して生活をしていることもあり、マホウトコロのに楽器を増やしたり分校をいくつか作ることで対応しているようだった。



 陰陽省へ転職するメリット――ずばり、通貨が非魔法族と共通であることだ。
 英国魔法界の通貨はガリオン、シックル、クヌートの三種類。一ガリオンは十七シックル、四九三クヌート。
 一ガオリンがおよそ五ポンドらしいので、あとは日本円に換算すればおおよその値段はわかってくる。日本は円なので、その時々のレートで変動はあるけれど、そこは割愛。今の時代だとおよそ一ポンドが二〇〇円ちょっとである。

 俺たちは非魔法族と同じ通貨で賃金に反映される。
 そして呪い破りなどの仕事は危険手当もつくし、昇給などいろいろ手厚い保障がつけられている。しかし日本は腐っても1000年前の記録が残る国。さまざまな呪物が定期的に発掘されていてそれでも人手が足りない。なので俺が引っ張ってきたウィリアムくん(ホグワーツ首席卒業、グリンゴッツ銀行の元呪い破り)はとんでもない好物件だったと言えよう。
 2000年代は目前。おそらく訪れるであろうリーマンショックなどの影響は、たぶん、俺がいた世界よりはましになるだろう。この世界の日本は表に裏にと現代忍者=つまり俺たち魔法使いが暗躍しているので。
 恐慌だって巻き込まれたものの未来予知によって備えがあった。なんていうか、前の世界より、被害は起きているものの、魔法使いが暗躍しているぶん全体的にマイルドになっている気がする。それでも悲しい事件は絶えないのだけれど。魔法使いという一種の上位存在が定期的に目をかけているのを自覚しているため、政治家がそれなりに仕事をしているのもあるのかもしれない。
 閑話休題。

 つまり、そう。ウィリアムくんにとっても、魔法界のレートで働くよりこっちで働くほうが福利厚生諸々を含めて好条件だった。
 下の兄妹たちの後押しも多かったのだろう。バタフライ・エフェクト――羽ばたきの結果、ウィーズリー家の『長女』は六男の双子の姉だそうだし。これは原典を知っている組がやっといろいろなものを割り切るいい安心材料になってくれた。亡命を希望する際はいい扱いをするつもりである。そして原典うんぬんを言うのなら、我がマホウトコロの新入生――双子のエバンズさんたちに言及せねばなるまい。
 旧姓・ポッター。現在は母君と伯母君の旧姓であるエバンズ姓に改姓し、7つからきょうだい揃って越境入学を果たした、エバンズ・グレースちゃんとエバンズ・ハリーくん。
 姉であるグレースちゃんが転化し命を落とすという予言を日本の神秘部がしたため、急遽規定に則って秘密裏に保護した英国魔法界における「生き残った男の子」であるハリーくんと、なぜか存在が伏せられていたグレースちゃんである。ウィリアムくんに聞いてみてもハリーくんのことしか知らなかったというのだから英国魔法省の闇は深そうだ。


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