東堂
 なまえが初めてセックスをしたのは、中学三年の秋だった。

 学校ではある程度ぼかした状態でしか教えられなかったが、現代はソーシャルネットワークが発達している。調べようと思えばいくらでも知ることができる。現になまえの周りでも誰がヤッたとかヤッてないだとかいう話が出ることも少なくない。
 なまえの人付き合いは最低限だったので余計な詮索をされることはなかったけれど、中学生とはいえ、「大人」に片足を突っ込んでいるのだと嫌でも理解する。
 小学生の頃とは違って平たかった身体は丸みを帯び、胸も膨らんだ。自分が「女」なのだと生理が来るたび思い知る。
 そしてセックスというものが自分の身近にあるものなのだと、なまえは好きな人に求められてやっと理解することができた。


「今日は誰も居ないのだな」
「えっ? ああ、そうなの。お姉ちゃんも用事があるって出かけてて」

 両親は仕事で不在だったので、実質今家の中にはなまえと東堂の二人だけだ。

「そうか、なるほど……」

 なにか考えている様子の東堂に、なまえは首を傾げる。

「どうかしたの?」
「いや、何でもないよ」



「あ……っ、ん、はっ」
「なまえ、なまえっ」

 息をする間もなく貪り食うようなキスをされる。下半身の異物感とキスに翻弄され、酸素が足りず頭がぼんやりとしている。

(……別の人みたい)

 涙で潤んだ視界で自分を喰らい尽くそうとする男を見つめる。
 自転車で鍛え上げられた身体は細身に見えるが引き締まっており、まるで朝霞のような不思議な瞳の奥には確かに火のようなものがチリチリと燃えている。
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