六感
「あっ、きちくん、もうやだぁ」
「どうして? 気持ちいいの、好きだろ?」
「わた、わたしっ、吉くんとしかセックスしたことないもんっ、ばかあ!」
「やらやらやらっ、きもちい、頭真っ白になって、あアッ、飛んじゃうよぉ……!」
彼女は快楽に弱かった。初めてしたときはお互いに緊張していて、初めての経験にガチガチながらも手探りでじっくりと愛撫したおかげか、彼女は破瓜で出血しなくて済んだ。
それから回数を重ねて、じっくりと開発をしてきた。彼女の体は、自分以外の男を知らない、つまりは、自分専用の体だ。
彼は私の体のイイトコロを全部知り尽くしている。
「あっ、あ、やっ、ひぅ」
じゅぶじゅぶといやらしい音が部屋の中に響いている。存外絞まった体をしている私の彼は、セックスをするときその力を発揮してくる。
「やっ、やっ、また、イッちゃ……」
「いいよ、イッて、気持ちよくなって」
「んああっ!」
ごちゅん、と奥のいいところを思い切り突かれる。目の奥に火花が散って、私は呆気なく果てた。これで何度目だろう、もう数えるのも嫌になって、回数を考えるのを止めてしまった。
仕事が忙しくて、ここ最近はあまり二人の家に帰ってこれなかったので、こうしてセックスするのも久しぶりだ。彼もまた、何かの試合が続いていたらしいので、きっと帰れていたとしても触れ合うことはしなかっただろうけど。
「きちくん、あっ、んう、きもちい、そこ、んんっ」
「っは……かわいい、なぁ……ほら、ここ、ですよね? いつも、締め付けてくる――ッ」
腹部に温かい感触がして、ああ、ナカに出されたのだと分かった。
私はピルを飲んでいるので、中に出しても構わないと言っているけれど、彼はいつもゴムを付ける。それは結婚する前からのことで、夫婦になった今も変わらないのだ。
「今はまだ、二人の時間を大切にしたいんです」というのが本人の言。それがどこまで本当なのか――いや、この言い方は正しくない。発言は本当なのだろう。その中に、彼が私に伝えていない、彼自身の秘密がどれだけ含まれているのか、私は気になっていた。
私もまた、彼に伝えてないことはある。お互い様だし、何もかも伝えあって上手く行くとは限らない。私は、私のムチャクチャな求婚に応じてくれたこの人の気持ちを、尊重したいと思っている。
「ねえ、吉くん」
「うん? どうしたんですか、ユミさん」
ずるりと私の胎内からペニスを抜いた彼は、どうかしたのかと首を傾げた。「早くこっち来て」と手招くと、彼は嬉しそうにしながらそそくさと後処理をして横になる。明日は起きたら即座にお風呂直行だなと思いつつ、至近距離まで近づいた彼のちらほらと伸び始めてきた顎の髭に触れる。つい数時間前に剃っていたはずなのに、もうほんのり存在主張を始めているのがおかしい。
「吉くん、顎髭の脱毛したら?」
「脱毛ですか? うーん……」
「この生えかけのちくちくしたのか、無精髭生やしてる吉くんも好きだけどさあ、つるつるだとこう……いっぱいスリスリしたくなるっていうかさあ」
「……僕が脱毛したら、ユミタンがいっぱい触ってくれる……」
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