無限列車連続失踪事件報告書1
無限列車連続失踪事件 報告書


 説明

 無限列車は、最大四十余名の行方不明者を出した東京○○鉄道会社にて運用されていたハチロク型蒸気機関車を指す。外観、内観ともに一般の同型車両と差異はない。「無限」行きとされるこの車両は品川から横浜までを主な路線とし、(無限列車に限らったことではないが)駅弁など車中食の販売も盛んであることから、単に交通としてのみに留まらず、一種の観光産業としても大衆からひろく受け入れられている様子がうかがえる。
 出現した鬼は下弦の壱・魘夢。能力は後述。

 発覚経緯

 鬼殺隊と非公認のかたちで提携を結ぶ東京警察庁より「無限列車にて失せ人発生の通報アリ」との情報を得る。初期段階では単純な失踪、事故、事件の嫌疑がかけられたものの、警官らの捜索で行方不明者は骨ひとつ発見できず。
 骨ひとつ無いとなれば、失踪、旅先死亡人となった可能性と、新たに鬼による被害の可能性が発生する。
 初期捜査として階級壬以下の隊士三名が派遣される。間もなく消息を絶つ。警察庁との協力捜査の甲斐もむなしく発見には至らず。
 続いて階級壬以下の隊士二名が派遣される。間もなく消息を絶つ。前回と引き続き、隊士が派遣されていない時にも行方不明者は発生しているものの、隊士が乗車した際には、隊士を主に他数名が行方不明となっている。直前に精神鑑定を行った隊士であったため精神薄弱による失踪の可能性も低く、乗客、時に鬼殺隊を狙った鬼による襲撃と断定。

 詳細

 能力

 下弦の壱・魘夢が暗躍し、乗客並びに派遣された隊士を捕食していた。
 血鬼術は「対象が持つ血を混ぜた切符に鋏痕をつけることで発動する抵抗不可の強制昏倒、人間の協力者を用いた対象の夢への侵入・精神破壊」。
 対象が見せられる夢は魘夢の裁量次第のようであるが、拙が会敵した際は悪夢を見せられる。

《  警告  》
  同任務に帯同した隊士の発言と差異がみられる。個人差であれば看過するが、偽装や虚栄であれば厳罰を処すものとする。補遺があれば詳細に記載するように。

 補遺 拙の記載に偽りはない。拙が見たものは悪夢である。まだ両親が生きていた頃の生家に、幼い拙が帰る夢である。拙にとって幼さは無知の証左であり、無力の象徴である。拙の無力さ故に両親は食われた。絶望を辞書で引けば凡例に出るのが拙の幼少である。

 また、自身を列車と置換し、自身が列車そのものとなることで、経口での捕食よりも一度に大人数を捕食する計画を企てていた模様。本次作戦に於いて実行を目論見るも阻止に成功。
 形姿としては、人間態は二十の半ばを超えた年の頃、青年。鬼の痣がある。面立ちは柔らかいが、信用はならない。変異態は先述のハチロク型蒸気機関車に置換されているためほぼ同等の形質を持つが、起動すると文字通り胎内のような見目へと変化する。無数の触手、触腕を伸ばし対象の捕食、傷害を行う。数が非常に多いので厄介。
 対策としては雷、風、水の呼吸を使う剣士で客車を対応し、先頭車両にある頸は岩、炎の呼吸の剣士を主力とし、適宜増員・減員を行うのが恐らく一番最短で頸を落とすことができる。強制昏倒への対策は存在しない。列車に乗り鬼を見つけ出すには駅員に切符を切らせなければならず、切符を切られれば昏倒するためである。
 夢の中からの脱却には、自決が一番早い。竈門禰豆子による血鬼術が有効との報告があるが、血鬼術を複製する技術を鬼殺隊は持ち得ていない。覚悟を決めて自死されたし。
 
 無限列車の行き先とされる「無限」の正式な所在は不明だが、東京○○鉄道会社が官営鉄道会社の下請けを装った偽装会社であったことと、下弦の壱・魘夢が暗躍していたことから、鬼舞辻無惨の根城とされる「無限城」と関係がある節も否めない。なお度重なる調査・検査の結果、それらしき証拠の発見には至っていない。

 討伐者は竈門炭治郎隊士。乗客乗員に負傷者あれど死者なし。
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