絆エピソード2

※長篇 5話既読推奨※






「お、樱花ちゃん、1人で飲んでるのか」
「一番君、うん。そうなんだ」
「じゃあ俺も、1杯ひっかけるかな」
「隣どうぞ」
「サンキュ」

樱花ちゃんの隣に座り、マスターに酒を頼んだ。

「そいや樱花ちゃん」
「ん?」
「この前の話で気になってたんだがよ」
「何の話?」
「樱花ちゃんの家の話」
「薬局の話?それとも、もう1つ・・・・の話?」
「ハハ、そっちの方の話だな。聞いても良いか?」
「一番君には異人三が話したから、大丈夫だよ。で、何が気になってたの?」
「樱花ちゃんの家、偽札に関わる異人三がフェアな関係であるよう間を取り持ったって聞いたんだけど、そもそも何でそんなことになったんだ?」
「異人町の1番古参が星龍会っていうのは、一番君知ってるかな」
「あぁ。それは星野会長に聞いたぜ」
「私の祖父は初代の星龍会会長のかかりつけ医でもあったの。生薬の腕が見込まれてね。中国人だったけど、温厚な人柄で、皆に気に入られてたんだって」
「ほぅ」
「で、横浜流氓の原型と言われる中華マフィアが異人町に流れついて、抗争が頻発した。その頃、当時議員だった荻久保 豊から偽札製造の話が出て、お互いに歩み寄るきっかけが出来たの。でも、つい最近まで抗争していた互いのトップが顔を合わせるなんて、ある種の博打じゃない。もしかしたら話が破談、更に大きな火種になる可能性もある。そこで荻久保 豊は私の祖父に目をつけたのよ。『仲介役になってくれ』ってね」
「なるほどな…」
「互いの架け橋になる要素を祖父は充分に持っていたわ。中国の血が流れ、星龍会には顔がきく。良い所に目をつけたのよ、荻久保 豊は」
「それが成功したんだな」
「うん、大分根気のいる仲介になったみたいなんだけどね。上手くいって、最初の勢力図が出来上がったわ」
「コミジュルの時はどうなんだ」
「それは父の代になるわね」

樱花ちゃんは持っていたグラスを傾け酒を飲んだ。
俺も届いてた洋酒を飲む。

「父は1980年代から、韓国系マフィアの残党がこの異人町に流れついてきているのを耳にしたわ。『医療行為を理由に公平』というのは昔からで、流れ着いてきた人達も診ていたの。…横浜流氓とのトラブルも多く耳にそうよ。その頃、仲介の役割が祖父から父へ引き継がれたわ。父の最初の仕事は、コミジュルと星龍会・横浜流氓の間を取り持つこと」
「いきなり大仕事だな」
「荻久保 豊からの提案は『偽札製造の工程を星龍会から引き継ぐこと』だったわ。だけど、この異人町で育った父にはそれだけでは足りないと感じたのね。もっとコミジュルがフェアな関係でいられるような仕事を与えたいって提示したの。それで、出来たのが…」
「異人町の監視か」
「そういうこと」
「そうやって今の関係が出来上がったのか…。で、樱花ちゃんは?早々に仕事したって聞いたぜ」
「私は…大したことじゃないよ。私が引き継いだ時、コミジュルのシマは監視システムが入ったあのビルと、周りのビルが数件だけだったのよ。だからもう少しコミジュルのシマを増やしたのよ。少〜しだけね」
「え、今のコミジュルのシマって結構広くねぇか。あれ、樱花ちゃんが話つけたのか」
「話を付けたって言うか、地下に住んでいるコミジュルの人達の健康を考えて、地上に住める場所を増やしたらどうでしょう?ってお伺いを立てただけよ。健康を損なうっていう理由は、立派な火種になりますよ。ってね」
「いや、すげぇことじゃん」
「お陰でソンヒさんには恩義があるって、余計な気を遣わせちゃったみたいなんだけどね。そんなこと、気にしなくても良いのに…」
「恩義っていうもんは、きっちり返してぇもんだぜ」
「でもさ、恩義って土地で返す?」
「は?土地??」
「コミジュルのシマに店舗を増やしたらどうだ、あわよくば越してきても構わない。って前ジュンギさん経由で言われて…」
「お、おぅ…恩義の返し方がすげぇな、ソンヒさん」
「断ったんだけどね。私、あの家気に入ってるし」
「俺も前通ったけどよ、何か洒落てたな」
「そうでしょ?外観は祖父の頃から変わらないの。でも、結構古かったから、私の代になってリノベーションしたの。基礎はそのままに、内装だけね」
「樱花ちゃん、1人で住んでるんだよな」
「うん。2階部分が住居で、3回は生薬の倉庫になってるの」
「あ〜、だからあんな上に縦長なのか」
「元は戦時中に、空襲から免れた個人の倉庫だったらしい建造物なんだけど、当時の横浜流氓総帥から土地含め貰ったものなんだって」
「異人町の恩義の返し方は土地が主流なのか」
「あ、本当だ。フフ、面白いね」
「じゃあ今度、樱花ちゃんの家、お邪魔しようかな〜」
「その際は1人1種類、手土産のお酒を持参して下さい」
「おぅ。高い酒、持ってくぜ」



.


トップページへ