[ 魅了効果の小瓶の話とかで急に逆ハーとかあったら面白そう! ]
というコメントから書いてみました。
コメントありがとうございました!
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さて、この状況をどうしたものか。
Survive Barで休憩の一時、しかしいつもと明らかに光景が違う。
カウンターの先でその違う光景にマスターも、いろはちゃんも、戸惑っている。
勿論私もだ。
「…おい、樱花」
「マスター…分かってます…」
「どうしたんだ…こいつら」
マスターが指すこいつら、というのは私を除いた皆のこと。
その皆は、ハートを飛ばして、まるで見惚れたような表情で私を見つめてきている。
「それがですね…」
時間を戻ること数十分前、私達はSurvive Barに戻る途中、店の前で酔っ払いに絡まれた。
バトルをしている最中、その酔っ払いが、あろうことか私の医療バッグから小瓶を盗み。
それを私達に投げつけたのだ。
その小瓶の色は桃色、皆魅了状態になったままバトルが終わり、何故かその魅了状態が解除されずに今に至っている。
「…おぅ…それは災難だな…」
「桃色の小瓶は私に向かって魅了状態になるよう調剤していたので…まさか味方にまで効くなんて…」
「樱花、全快薬に使う材料は無ぇのか」
「それが持ち合わせてないんです…。アイテムも探したんですけど、状態異常に効くものを生憎切らしてまして…。私もまだ、それを調剤出来ませんし…」
「詰んでるじゃねぇか」
「そうなんです…」
しかし、このままでは皆がいつまでも私にハートを飛ばしている状況になってしまう。
「やっぱり私、材料探してきます」
「おぅ、気を付けて行けよ」
「はい、ありがとうございます、マスター」
カウンターの席から立ち上がると、一番君が私の側に立った。
「樱花ちゃん、どうしたんだ」
「全快薬の材料を探してくるよ。皆は待ってて」
「外に行くのか?」
「うん。そうだよ」
「俺も行くぜ」
「いやいやいやいや…」
魅了状態で外に出ても何も出来ないよ、一番君。
「大丈夫だから、待ってて」
「そうはいかねぇ」
一番君がズイと更に寄ってきて、私の肩を掴んだ。
「こんな可愛い子を1人で外に出歩かせる訳にはいかねぇ。何かあったらどうすんだ」
「か、可愛い子…?」
一番君はふざけている様子はない。
至って真面目にそう言っている。
「いや、あの、一番君…。私、拳法出来るし…自分の身は自分で…」
「樱花ちゃんは俺が守る」
「へ…?」
いつもの一番君との違いに、思わず間抜けな声が出てしまった。
「はぁ?何言ってるのよ、一番」
私と一番君の間に腕が割り込んできた。
その腕は私の腕に絡まり、一番君から剥がされる。
「こういう時は女同士で行くものよ。ね、樱花ちゃん」
「いえ、あの…紗栄子さんも待ってて下さい…」
「可愛い下着、見立ててあげるわ」
「何を買おうとしているんですか!?」
下着で全快薬は作れませんっ!
「良いじゃない。試着室、一緒に入りましょう。樱花ちゃんの身体をじぃ〜…っくり、見てみたいわ」
「…結構です…」
うっとりとした表情で私に凭れかかってくる紗栄子さん。
…この薬、同性にも効くんだね…。
「なぁに言ってやがんだ!紗栄子。樱花ちゃんを離しやがれ!」
今度は逆側の腕が引かれ、厚くて広い胸板に飛び込む形となった。
「ぶっ…!」
「足立さん!何するのよ!」
「うるせぇ!この女は俺の女だっ!」
警官時代に鍛えた肉体は衰えておらず、硬いの何の。
その身体に力まかせに押し付けられるから、正直痛い。
「あ、足立さん…苦しいです…」
「あぁ、悪ぃ。つい力が入っちまった」
力が緩んだので上を向いて空気を吸うと、熱い眼差しで私を見つめる足立さんと目が合った。
「…樱花」
「は、はい…」
今まで呼び捨てされたことなんて無い。
「俺は…今まで結婚と縁が無かったのは…お前と結ばれる為だったんだな…」
「…多分違うと思います…」
「なぁにを言ってんだ。足立さん」
また腕が引かれる。
「あぁ?何だぁ、ナンバ」
「彼女はモノじゃねぇ。勝手に決めんじゃねぇよ」
ナンバさんは私の肩をそっと抱いてくる。
「樱花ちゃん」
「はい…」
「俺ぁ、ホームレスで職もねぇけどよ。お前さんを幸せする為に仕事探して、しっかり自立するよ」
「ナンバさん…」
脱ホームレスに向けて行動してくれるのは魅力だ。
「だから結婚しよう」
「突然ですね」
色々と飛び越えた気がする。
「ちょっと〜。この子と結婚するのは俺だよぉ」
今度は腰に腕が回って、後ろに引っ張られる。
「趙…!」
「俺達はぁ、元々結ばれる予定なんだから、邪魔しないでね」
後ろから抱き込まれるような態勢にされ、趙の顎が私の肩に乗る。
「いや、そんな予定無いし」
「まだそんなこと言ってるの?素直じゃないなぁ」
「正直に話しているつもりだけど…。ってか、腕離してよ」
私の腰に両手を回して固定している腕を外そうと掴むと、趙の唇が私の首にキスしてきた。
「ひっ…!?」
「離すつもりは無いよぉ…。君は一生、俺の女なんだから…」
「耳元で言わないでっ!」
いつもより低めな声に囁かれる。
趙、こんなキャラだったっけ?
「皆さんっ!当初の予定を忘れていませんか!?」
突然大声でそう言ったジュンギさんが椅子から立ち上がった。
「樱花さんは買い出しに行こうとしているんです。それを何ですか皆さん!彼女の邪魔をして…!」
「ジュンギさん…!」
いつもの様子のジュンギさんだ。
まさか、魅了状態が解除された…?
「その買い出しには私が同行します!皆さんに任せたら…樱花さんを独り占め出来ないっ」
「………はい?」
「さぁ、樱花さん!一緒に行きましょう!私おススメのケーキ屋があります。そこで2人の将来についてじっくり話し合いましょう!」
「結構ですっ」
駄目だ、解除されてなかった!
「樱花ちゃんと行くのは俺だっ!」
「私だって!!」
「てめぇらいい加減にしろ!俺だって言ってんだろ!!」
「いいや、俺だ」
「行くのは俺だねぇ」
「いいえ私です!」
「よぉし!こうなったらバトルだ!!」
一番君の一声で皆がバトル態勢に入った。
「皆!バトルは駄目…」
ん、バトル…?
あっ!!
「一番君!」
「おぅ!何だ、樱花ちゃん!!」
「私、一番君の『勇者の激励』が見たいな!」
「任せろぉ!!」
※※
「俺達、何をしてたんだ?」
「本当ね、何か記憶が曖昧で…」
一番君の『勇者の激励』のお陰で皆が無事、魅了状態から解除された。
状態異常の時のことを良く覚えていないようで、カウンターに座った皆が、揃って首を傾げてる。
「思い出さなくて良いですよ…」
「何か…ゴメンな。樱花ちゃん」
「いいえ。元はと言えば私の小瓶が原因ですし…」
窓際のソファに離れて座っている私に、一番君が謝ってくる。
しかし、くたびれた。
次小瓶を調剤する時はもっと配合に気を付けよう…。
「樱花ちゃん」
「あぁ、趙…」
テーブルを挟んだ向かいに趙が座ってきた。
「何かお疲れだねぇ」
「今まで経験したこと無い事態だったからね…」
ぐったりとしてしまった私と対照的で、趙は上機嫌に微笑んでいる。
「…何」
私が訊ねると、趙が身を乗り出してきた。
「樱花ちゃんの首筋、柔らかかったなぁって、思って」
「……え、」
記憶、残っているの?
小さな声で、私に聞こえる様に言った趙は、上体を戻してまた上機嫌にへらりと笑った。
「…まさか、趙。あの時、もう魅了状態解除されてた?」
「んふふ。どうだろうねぇ」
はぐらかすってことは…!
「趙!」
「また楽しもうねぇ」
そう言って飄々とした空気のまま、またカウンターに戻っていった。
帰ったら、絶対配合変える!!
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