東城会と近江連合の同時解散。
事の発端は青木遼が都知事になり、神室町3K作戦の為、暴対法を盾に、東城会の内部情報を漏らすように荒川さんに告げたこと。
荒川さんはそれを堂島さんに相談。
そして堂島さんは、近江連合の実質トップ、渡瀬さんと、ここまでの絵を描いた。
暴対法によって極道の代紋が、政治家や警察の奴隷の証になる前に。
極道の未来に憂いと疑問を持っていた同士で。
同時解散を、どれだけ穏便に、どれだけ隠密に進めるか。
まずは青木遼の目論見に乗ったように見せかけ、3K作戦を成功させる。
そうして東城会が消えた神室町に、近江連合を引き込む。
そうすることによって、日本最大の極道組織の戦力を分断させた。
そして兵隊が半減している、今。
渡瀬さんの出所を、タイミングとして選んだのだ。
「それには勿論、助けが必要だった。…それが、樱花さん」
まるで絵空事の話を聞いている様な気持ちの中、私は突然、堂島さんに名前を呼ばれた。
「は、はい…」
「貴方の御祖母様…胡蝶蘭さんが協力してくれた」
「祖母が…?」
「胡蝶蘭さんは、近江連合に縁がある」
「近江連合と…!?」
そんな話、今まで聞いたこと無かったので流石にギョッとした。
近江連合と…祖母?
今まで聞いた話で、近江連合に関わりそうなものを思い起こしてみる。
「……あっ、」
あった、あったわ。
「何だよ樱花ちゃん、あっ。って」
隣に居た一番君には私の声が聞こえていたようで、そう訊ねてくる。
「多分、正解だと思うんですけど…。祖母が蒼天堀で働いていたお店、近江連合のケツもちだった…とか、ですか?」
「えぇ」
「そうだったのか〜」
堂島さんの返事に私は色々納得した。
「そりゃ言いずらいよね、
「あ?どういうことだよ、樱花ちゃん」
「一番君、あのね。私の祖母、蒼天堀に居た時、ストリッパーだったの」
「そうなのかよ!?」
「異人町には星龍会があったから、まぁ、その話はしずらいよね…。祖父も関わりが深かったし」
もし私に話して、何も知らない私が、会長なんかに言っちゃった日には、それはそれは面倒なことになる。
元々、私が生まれた頃には既に犬猿の仲だったし。
「だから私にも黙ってたんだと思うよ」
「じゃあ…何で樱花ちゃんのばあちゃん、蒼天堀に呼んだんだ?」
「そこなのよね…」
祖母が今回の同時解散、近江連合側に協力したのは分かった。
でも、私を呼んだ理由とは結び付かない。
「俺達が聞いているのは、明日、渡瀬を迎えるホールに樱花さんを呼ぶってこと位だ」
「今、胡蝶蘭さんは明日に向けての準備で忙しい。恐らく、それで貴方への連絡が遅れたのだと思う」
荒川さんと堂島さん、揃って答えてくれる。
と言うことは。
もし、私が皆と今日ここに来なかったら。
明日突然、趙と一緒に、近江連合本部に呼び出されてたって、こと…。
「私、今日、ここに来て正解だったかもしれないです…」
最近、色々と起こったけど、今が1番背筋が凍る思いだ。
※※
明日、渡瀬さんの出所祝いが行われる本部のホールで落ち合う手筈を整え、解散となった。
私は長時間座っていた椅子から立ち上がり、息を吐く。
「おう、姉ちゃん」
向かいに座っていた真島さんが私を呼ぶ。
「はい…」
真島さんはゆっくりと肩で歩き、私にズイと近づいてニヤリと笑み、聞いてきた。
「で、どれなんや?」
「どれ…?」
「姉ちゃんの許婚や。今日、一緒に来とるんやろ?」
い・い・な・ず・け?
「えっと…私、そんな人居ませんけど…」
「胡蝶蘭の婆さんが言うてたで。今日、孫娘の許婚も呼んだって」
「あぁ、それ。多分僕でぇす」
後ろに居た趙が、ヘラリと笑いながら挙手した。
「…は?」
趙が、私の、許婚??
「何や、見る目ある兄ちゃんかいな」
「そうなんです〜」
「いや、違うでしょ」
何平気な顔で嘘ついてるの。
「この人は幼馴染です」
「いやぁ、樱花ちゃんのおばあちゃん、そうやって僕のこと紹介してくれてるんですねぇ」
「紹介の内容間違えてるから、受け入れないでよ」
…ちょっと待って。
「まさか…、私にお嫁においでって良く言ってくるのって…」
「樱花ちゃんのおばあちゃん、俺達が結婚して欲しいみたいだよ〜」
「何流されてるのよ!」
「流されてなんか無いよ〜」
流石にそれは無い!
「何や、痴話喧嘩か?」
「違います!兎に角、私に許婚は居ませんからっ」
「お、おう…。そうかいな…」
勢いで真島さんには強めの口調で言ってしまったけど。
それ位、怒り気持ちが高ぶっていた。
私の居ない所でそんな話して。
趙の気持ちだって、私の気持ちだってあるのに…!
さっき心の、違和感を感じた所が。
今度はチクリと痛んだ。
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