恋人と喧嘩をした。何が切っ掛けか覚えていない些細な事だったのだが、もう彼此十日は口を利いていない。いつもいつも自分が折れているのだ。今回は絶対に折れてやるものか。
そんな事を友人に話したら晩ごはんをご馳走してくれると言う。お言葉に甘えてのこのこやって来たら、顔見知りの女友達複数と女友達と同数プラス一の見知らぬ男性達。
そうだ、これは
「合コンじゃん…っ」
「今喧嘩中なんでしょ?ちょっと息抜きだと思ってさ。」
晩ごはんって言ったじゃないか、と詰め寄れば全く悪気のない顔であっけらかんと笑う。あれ?確か貴女も彼氏持ちですよね?
「帰る。」
「ちょっと!人数足んないのよー。少しだけ。ね?」
「おーい、こっちー。」
「はーい。」
「放してって、」
流されて帰るに帰れない雰囲気になってしまった。
正直自身は浮いているのがわかる。仕方ない楽しくないのだから。自身以外楽しそうな様子に申し訳ないと思うが心苦しくてしょうがない。
喧嘩をしたとしても好きなのだ。
スマホが震える。画面を見れば彼の名前。
さーっと血の気が引く。
「出ろよ、糞が。」
頭上からの声に体が跳ねた。
「獪岳、」
「来い。」
爛々とした瞳に場が凍る。震える足を叱咤して立ち上がると、無言で手を引かれる。そのまま引き摺られるように自宅へ帰宅した。寝室に連れ込まれれば投げる勢いでベットに飛ばされる。
「か、いがく、あの、」
憤怒の双眸が覆い被さる。
「黙れ。こっちはな腑煮え繰り返ってんだよ。」
「でも、本当に知らなくて、痛っ!」
喉元を思い切り噛みつかれて悲鳴が出た。
「言い訳はいい。男探しに行ったのか?」
「ち、ちが」
今日は話を遮られてばかりいる。続きの言葉は噛み付くように口付けで消えてしまう。舌が執拗に絡み付いて、背筋がぞくぞくする。
「分かってねえようだから、教えてやる。俺は絶対別れない。手離すつもりはない。離す時は殺す時だ。」
手首を掴む力が強くなる。え、殺されるの。
その後本当に死ぬのではないかと思うほどセックスした。
***
恋人と喧嘩をした。何が切っ掛けか覚えていない些細な事だったのだが、もう彼此十日は口を利いていない。いつも折れる恋人が今回はやたらと折れないのでどうしたものかと考えている。
そう義弟に言えば「大体お前が悪いのだからさっさと謝れ」だそうだ。まあ、正論だ。しかしムカつくので一発殴っておいた。
ぐいっと、グラスを仰ぐ。黄金色の液がみるみる減っていく様に善逸は冷たい視線を送る。既に空のグラスが複数テーブルに鎮座していた。
「ヤケ酒とかやめてくれない。俺、痴話喧嘩には巻き込まれたくないんだけど。」
「奢ってやるっつったら飛んできた癖に。」
「あー、本当になんで来ちゃったかな俺。過去に戻ってやり直したい。」
「汚ねえ声だな。」
「お前ホントいい加減にしろよ!ジャイアン?ジャイアンなの、お前!?そんなジャイアンみたいな事ばっかしてると嫌われるよ!名前さんも愛想尽かして出てちゃうよ!!」
もう一発お見舞いしとくかと握った拳はそのままテーブルに落ちた。見知った姿が視界に入ったからだ。
頭を抱えた善逸がいつまで経ってもこない攻撃に不思議に思い後ろを振り返る。
「えっ、名前さん!ってあれ合コン!?」
義兄に視線を戻せば額に青筋が浮かんでいる。射殺さんとばかりの目に両手を合わすしかできない。南無…。今なら阿修羅も素足で逃げてくのでは。すげえ怒ってる。
「善逸、金置いとくぞ。」
「あ、うん、ありがと…」
巻き込まれるのだけは絶対に嫌だと、善逸はそそくさと店を出た。
獪岳はスマホをタップして履歴から電話を掛けた。万が一別人の可能性もあるが、震えるスマホを取り出す背中にその可能性がない事が分かった。
「出ろよ、糞が。」
怒りを噛み殺してかろうじて出た声に見上げて来た顔はやはり名前で。
有無を言わさず手を引く。意図せず力が入ってしまう。
何故あそこに居たのだろうか。自身と別れて他の男についていくつもりだったのか。
名前の隣に俺以外の男がいるなど考えただけで吐き気がする。許さない。許せない。
家について怯えた瞳に覆い被されば大袈裟な位震えて。ああ、誰にもやりたくない。
「か、いがく、あの」
この鈴の音のようの声を聞くのは俺だけでいい。できることなら喰って一つにしてやりたい。欲望のまま急所に噛み付く。次は無意味な事を曰う唇に。逃げ惑う舌を捕まえて吸い上げて、執拗に責める。快楽を拾い始めてびくびくとする体に今日初めていい気分になった。
お前は何があっても俺のものだ。
刻み込むように思いの丈を叩き込んだ。
「ごめん、ごめんなさい、ごめんなさ、…も、できない」
「何言ってやがる。まだできんだろ。」
「いやあ、むりだよお…、ゆるして、」
「おら。」
「あ、あっ、ああ、やだあ」