ふと微かに香る甘い匂いに煉獄は隣りに座る恋人に目をやった。視線に気付いたのだろう。名前も不思議そうに首を傾げる。

「どうしたの?」
「いや、はちみつの匂いがする。」

ああ、と名前はポケットから小さな筒状の物体を取り出した。

「リップクリームだよ。最近乾燥してきたから荒れないように。」
「いい匂いだな。」
「杏寿郎もつける?貸してあげるよ。」
「ありがたい。是非使わせて貰おう。」

手渡されたリップの蓋を取ると、自身ではなく名前の唇に念入りに塗る。疑問符が頭を巡る名前を他所に気が済んだようで煉獄はリップを塗るのをやめた。

「なん、」

続きの言葉は降ってきた煉獄の唇に飲まれてしまった。ちゅ、ちゅ、とリップ音をさせて角度を変えながら唇を重ねる。

「…うむ!これでいい!!」

たっぷり塗り込んで艶々と光る唇に満足気に頷く。
はちみつの香りが強く薫った。

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