しかし何の手掛かりもなく、早二ヶ月が過ぎようとしていた。

はあ、と溜息が漏れる。

「久しいな、名前!」
「炎柱様。」

快活な声に顔を上げれば、炎柱こと煉獄杏寿郎の姿があった。縁側から立ち上がって一礼すると少し困ったような顔をする。

「以前のように呼んで構わないと言うのに。」
「他の方々に示しがつきません。」
「その敬語も慣れないな。」

煉獄とは幼い頃からの付き合いであるが、彼が柱となってからは立場を考えて一線を引いている。気心の知れた仲である故に煉獄は名前が自身を敬うような物言いにあまり良い顔をしない。

「宇髄にはそんな畏まらないだろう。」
「あの人は全然敬えません。」
「はははっ」

苦虫を潰したような顔に思わず吹き出す。名前も釣られて笑った。こんなに笑ったのは久しぶりな気もする。

「さて、その鬼上司に叱られる前に報告に行きますか。」
「もう行くのか…。」

寂しそうな幼馴染に苦笑を浮かべる。しょんぼりと少し項垂れる頭を撫でると気持ちよさそうに目を細めた。まるで猫、いや、虎だろうか。今にもゴロゴロとのどが鳴りそうだ。

「少しだけれど会えて嬉しかったです。おかげで元気が出ました。時間が出来ればまた御自宅にお邪魔させて頂きます。」
「うむ、千寿郎もお前が来ると喜ぶ。待っているぞ。」

またお互い息災で会いましょう、と遠ざかる背中を見送る。名残惜しい手の感触を煉獄は忘れないようにと目を閉じた。

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