初めて会ったのは確か自身が八つになるかならないかの頃だった。

「ほら、名前。挨拶をしてごらん。」

年の離れた兄に連れられてやって来た彼女は彼の後ろから出て来ようとしない。生憎の事人見知りを全くしない杏寿郎は新しい友人に興味深々だ。

「俺の名前は煉獄杏寿郎だ!仲良くしよう!!」

大きな声に驚いたのか、びくりと裾を掴む手が震える。

「こら杏寿郎、怯えているだろう。」
「いえ、槇寿郎殿大丈夫です。な?名前、杏寿郎はお前と友達になりたいと言ってるぞ。出ておいで。」

再三の兄の優しい声におずおずと銀糸の髪が覗く。よく見たくて父の手を振り払って覗き込めば夜明け前の紫水晶のような瞳が大きく見開いた。ぱちりと視線が合う。

『お日様みたい』

名前は、はっと手で口を押さえて再び兄の後ろに隠れてしまった。

「ん?君、今喋ったか?」

どこからとも無く聞こえた声に杏寿郎は首を傾げた。それに帷は苦笑して杏寿郎の目線に屈み込む。

「俺達名字家は異能者の集まりだという事は知っているか?」

父から聞いた気もするが少し難しく、幼い杏寿郎にはよく理解は出来なかったので曖昧に頷いた。

「この子は少し力の制御が出来なくて時々思っている事が他の人に伝わったり、物を勝手に動かしてしまったりするんだ。でも悪気がある訳では無いんだよ。どうだろう、怖いかい?」

心配そうな瞳が少女と同じだと遅ればせながら気付いた。

「怖くなどありません!そんな事ができるなんてすごいな、君は!!友だちになりたい!!」

帷もキラキラと目を輝かせる杏寿郎に驚く。今迄事情を知った者達は奇異の目や畏怖の目で見ていた。彼のように真っ直ぐ羨望するかのような眼差しは初めてだ。
この子ならば妹も心を開いてくれるやも知れない。

「この子は名字名前というんだ。よろしく、杏寿郎。」

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