そんな事を考えた事は無い。…無い、筈。
心臓がまた変に脈打つ。
しかし考えれば考える程納得がいく。
千寿郎や子供達を見る時の優しい眼差しだとか。ひたすら努力する直向きな様だとか。時々楽しそうに自身の髪を弄る事だとか。
どれもこれも思い出すと胸が苦しくなる程愛しくなる。
「よもやよもやだ!!」
「兄さん、杏寿郎、何してるの?」
「は!な、な、な、いつからそこに!?」
「え?今だよ。」
今話題に上がっていた幼馴染がひょっこりと顔を出したものだから杏寿郎は一気に赤面する。
滅多にないその姿に名前は訝しむ。
「どうしたの?顔が真っ赤だよ。」
熱?と細く白い指が頬を撫ぜるのに、今しがた自身の恋心に気付いたばかりの杏寿郎は顔面に更に熱が行くのを感じる。
「ーーっ、すまない、少し離れてもらえるか」
「熱は無さそうだけど、」
「名前何か用があったんじゃないか?」
帷が助け舟を出す。そうだと、思い出したように貰ったらしい鬼饅頭を取り出した。
「さつまいもが入ってるらしいの。杏寿郎が喜ぶと思って。一緒に食べよう。」
ふんわり微笑む様に胸がぎゅうっと締め付けられる。
「よもやあ…」
「本当にそれどうしたの。」
「気にしないでやれ。」
折角貰った鬼饅頭は何の味か分からずじまいだった。