名前は杏寿郎の手当てが終わってからも泣き止まなかった。
「大丈夫だ、名前。大丈夫だぞ。」
兄の膝の上に突っ伏して泣きじゃくる頭を撫でながら何度も何度も声を掛けた。
「怖かったな。」
こくりと頷く。
「すまなかったな。だが安心してくれ!次は必ず守る!怖い目に遭わせない!!」
そう口にすると名前はふるふるとかぶりを振る。幼い少女が怯え震えて泣く様に自分は何も出来ないのか。杏寿郎は頭を撫でる手を下げて自身の膝の上で強く握った。
「…俺では役不足だろうか?」
『違う。杏寿郎はちゃんと守ってくれた。私が怖かったのは、』
名前は嗚咽を飲み込んで紡ぐ。
『杏寿郎が殺されるんじゃないかと思って怖かった。』
想定外の言葉に杏寿郎は目を見開いた。帷が彼女の頭を優しく撫でる。
『ごめんね、痛い思いをさせて。次は私を置いて行っていいから。』
彼女の悲痛な思いに喉の奥が熱くなったようで、言葉がすぐに出て来なかった。ぎゅうと何かに掴まれたように胸が苦しい。
「…置いてなど行くものか!何度同じ目に遭おうとも君を必ず守る!!もっともっと鍛錬して次こそは追い払ってやる!!」
君を苦しめる者は許さない。
ゆっくりと名前が顔を上げた。随分泣いたせいで目が赤く充血している。涙を袖で拭うと杏寿郎を真っ直ぐ見つめた。
『…私も一緒に鍛錬していい?』
「勿論だ!!」
『私も強くなりたい。守られるだけなのは嫌だ。』
潤む瞳にこれまでにない強い光が差す。
「二人とも頼もしいなあ。」
彼女の兄は息巻く二人に笑みを溢した。