「あれっ?」
台所から素っ頓狂な声が聞こえる。
「獪岳、私のアイス…あーっ!!」
パタパタと小さな足音が止まり、今度は金切り声を上げるのにソファに腰掛けた獪岳は眉間に皺を寄せて声の主に視線を向けた。
「んだよ。うるせえな。」
「おま、お前、私のダッツ様だぞ、それ。」
「ふーん。」
わなわな震えるのを気にせずアイスを口にすれば、返せと手を伸ばしてくる。しかし残念ながらリーチは獪岳の方が長い。手を伸ばせどもスプーンを咥えた彼が彼女の頭に手を置いて遠ざける。
「獪岳にはスーパーカップの白桃ヨーグルト味買って来てたでしょ!」
「もうねえぞ。食った。」
「二個目かよ!尚更食べなるな!!」
仕方ないと鬱陶しげに溜息を吐き、手を離すとアイスをひと匙掬う。
「しょうがねえな。分けてやるから黙れ。」
「こっちの台詞だわ。元の所有権私だぞ。」
「おら、口開けろ。ごー、よーん、さーん、」
「聞いて?」
「にー、いーち」
「…あーん、あ!」
素直に口を開いたというのにアイスの乗ったスプーンは彼の口に入る。また意地の悪い事を、と非難しようとすればぐっといきなり後頭部を掴まれて口を塞がれる。急な事に開いたままの口内にぬるりと彼の舌と溶けたアイスが入り込む。肩を押して離れようとするが獪岳がそれを許さない。角度を変えて深く舌を絡める。
「ん、ん、っ」
鼻にかかる声に鋭い彼の目が細まる。彼女がくたりと力が抜けた辺りで満足したのか唇を離した。
「あまぁ…」
「もう一口いるか?」
「いらない。」
息も絶え絶えな彼女に彼は今度こそ愉快に笑った。