作戦会議

「次の依頼はこの男の暗殺だ」

珍しく全員が揃ったリビングで、暗殺チームのリーダーであるリゾットがそう切り出した。
隣に座るシルビアがテーブルの上に数枚の資料と一枚の写真を置くと全員がそれを覗き込む。

「名前はブロスキ・ツェルト。表向きはローマにある大手自動車メーカーの役員で、裏の顔はカルローニファミリーの構成員。元々は本拠地であるローマで麻薬をさばいてたみたいだけど、最近ではイタリア各地でルート拡大を狙ってるみたい」
「なるほどな」

男が写る写真を取り上げたホルマジオはソファの裏に回ると背もたれに後ろ手をついて体重をかけた。親指と人差し指でつまみ上げた写真をひらひらと目の前で掲げる。

「最近の麻薬関連のヤマはコイツの仕業ってわけだ」
「しかし、まさか他の組織が絡んでいるとはな」

ソファに座るイルーゾォが体を捻って写真を見上げる。
するとその横で調査資料を見ていたギアッチョが何かを思い出したように顔を上げた。

「つーことは、この前のもこいつの仲間か?」
「ああ、ギアッチョが始末した奴らも麻薬チームの人間だ。そしてこれまでの調査からカルローニの構成員が既にネアポリスの各地に潜んでいることがわかっている。―そこで、だ」

全員の視線が集まる中で、リゾットが二本指を立てた。

「今回の依頼は二つ。一つ目はネアポリスに潜んでいる構成員の殺害と潜伏先の壊滅。そしてもう一つはチームリーダーであるブロスキの暗殺だ。奴らのアジトも目星はついているが敵の能力は未知数だからな、十分に警戒して当たってくれ」
「奴らの潜伏先はそれぞれ手分けして当たるとして、肝心のターゲットはどうするんだ?」

パラパラと調査資料をめくっていたソルベがリゾットに尋ねると、そのすぐ後ろに控えていたジェラートも顔を上げる。

「ちょうど二週間後に開催される展示会にブロスキが出席する予定になっている。奴はそこで始末する」
「潜入か」
「俺たちじゃないことは確実だな」

振り向いて顔を見合わせた二人はそれきり興味が失せたように読んでいた資料を机に置くと、正面に座るシルビアに目を向けた。

「ってことで頑張れよシルビア」
「え、私で確定なの?」
「相手は男だろ?その美貌でイチコロだって」
「ヘマすんなよ」
「二人とも笑っちゃってるじゃん」

半笑いを浮かべるソルベとジェラートに溜息をつけばここぞとばかりにイルーゾォとホルマジオが二人に続いた。

「だがまあ、確かに今回はシルビアが適任だろうな」
「ネズミ捕りは俺らに任せて、お前はいつも通り上手くやってこい」
「ええ…」

若干押し付けられた気がしないでもないが、イルーゾォの言う通り今回の潜入はシルビアが適任である。肩を竦めながらリゾットを見ると、彼もそれに同意するようにこくりと頷いた。

「それじゃあシルビアの護衛は俺が担当するとして」
「あ、メローネは奴らの本拠地で張り込んでてね。当日も別動隊として動いてもらう予定だから」
「もしかして遠回しにいらないって言われてる?」
「適材適所だよ。気持ちだけ受け取っておくね」

シルビアがそう告げるとメローネはつまらなさそうにソファに沈んだ。

「久しぶりに全員で動くってわけか」
「プロシュート兄貴、俺頑張るよ」
「ペッシ、そろそろお前もマンモーニを卒業しねぇとな」

言いながらプロシュートが灰皿に煙草を押し付けたところで、再び顔を上げたギアッチョが呟いた。

「ところでよォ…このヤマ、報酬は期待できるんだろうなァ?」

その言葉に全員が動きを止めると、再びリゾットに視線が集まった。
報酬の話になった途端に身を乗り出したソルベをはじめ、どこか期待するような視線を送ってくるメンバーを見てふっと笑う。

「そこはシルビアの交渉次第だな」
「そんな投げやりな…」

思わぬところでも飛び火したシルビアはリゾットの言葉に微妙な表情を浮かべたが、上との交渉は彼女の担当なのだから仕方ない。

「まあでも…これはボス直々の依頼でもあるから、ね」

シルビアがそう言うと、その意味を理解したらしい全員の口端がゆっくりと上がった。