幼馴染の事



茅ヶ崎さんに聞かれたことに対して、皇天馬のことは好きだけど、恋愛対象として好きかと問われると悩んでしまう。昔からひとつ年上の私よりなんでも出来て、すごいすごいと思って尊敬してきたから、もしかしたらその尊敬する気持ちを好きだと勘違いしていただけなのかもしれない。
今だって、もし私の腕を掴んだのが天馬であったらきっと、イケメンの茅ヶ崎さんに掴まれてる時よりも、ドキドキと心臓がせわしなく動くことはないと思う。

「JKの気持ちは難しそうだからよくわかんないけどさ、久しぶりに会った幼馴染から逃げられたらさすがに天馬も悲しいんじゃない?」

そう茅ヶ崎さんに言われて、冷静になってきた頭でとんでもなくみんなに迷惑をかけていることに気がつく。

「すいません、劇団の皆さんにも天馬にも茅ヶ崎さんにもご迷惑おかけしました」

ただ…わたしもまだまだ思春期である。このまま謝りに行くのは結構な勇気が必要で、どうか今日だけは帰らせてくださいと、本日何度目かわからないが茅ヶ崎さんに頭を下げるのであった。

友人と佐久間くん、先程LIMEを交換したかずくんと茅ヶ崎さんには改めて謝罪の連絡を送って、今日はひとりで早めに帰宅する。
きっとこれから彼らも旗揚げ公演の打ち上げがあるだろう、と友人もすぐに退散したらしく、また学校でという連絡で今日はお開きになった。



*



JKとLIME交換なんて、幸や真澄に犯罪と言われてもおかしくないイベントを終えてから、ゆっくりと楽屋に戻る。

楽屋の扉を開けた途端に、一成から

「いたるん!名前ちゃん帰っちゃったの?!テンテン女の子に振られちゃってガチめにへこんでるからどうしようってみんなで話してたんだよね」

と言われ、ちらりと天馬の方を見るとバチりと視線が合った。
いつもの天馬なら 振られてねえ!とか言って叫んだりしそうだけど、何故か今はそれもない。

「あー名前ちゃんなら帰ったよ。とりあえず今日謝りに行くのは勇気がいるって言ってたからまた近々遊びに来るんじゃない?」

その発言に文句を言う者は誰もおらず、逆に一成や咲也辺りは帰ってしまったことに残念がっていた。

その後の打ち上げは、先程の様子など嘘であったかの様にみんなワイワイ楽しそうにふざけ合ったり、天馬も座長らしく堂々と話をしていた。


「なぁ咲也、ちょっといいか」

打ち上げも終盤になり各々好きなように過ごし始めた頃、天馬が咲也に少し深刻そうな顔をして近づいて行くのを横目に、ソシャゲを始めた。