好きの意味



その頃MANKAI寮では、一成がスマホを片手に談話室で声を大にして話をしていた。

「ねぇ、ちょ見て!セッツァーから送られてきたんだけど、これってもしかしなくてもテンテンと名前ちゃんだよね?!」

そう言って、制服を着た男女が道端で抱きしめ合っている写真を表示させる。

「ポンコツにもそんなことできたんだ」

「あ、それ俺のとこにも来た。ほら」

各々の反応を見せながらも、夏組リーダーである天馬の色恋沙汰にはみんな興味があるようで、写真を見ようと画面に顔を近づける。

「ね?!まじやばたん!我らがリーダーにもついに春が来たってことっしょー?!」

ざわざわとしていると、ただいまと言う帰宅の挨拶とともに談話室の扉が開いた。たった今帰宅した万里に、一成を始め太一や椋が例の写真のことを問う。

「詳しくは聞こえなかったけどよ、まぁ見たまんまの意味なんじゃね」




*




腕を引かれて突然抱きしめられた私は、咄嗟のことに反応できずぴしりと固まってしまう。
自分の腕の行き場が分からず、両手は宙を行き来するだけで彼の背中に回すことはできなかった。

きっと数秒の間だったのだろうが、私の体感時間ではえらい時間が経ってから、すっと彼は腕を解き

「…嫌だったか?」

とこちらを伺う様に聞いてきた。
そんな彼に、それはない!と若干声を張りながら答える。
なんだか恥ずかしくて、彼の方を見れずにまた手を擦って暖をとる振りをする。

その後すぐに、なぁ覚えてるか?と彼が話し始めるのを、今日はやけに饒舌だなと冷静になってきた頭で考える。

「むかし、名前が俺のお嫁さんになるって言ってきかなかったときのこと」

まさか昔のことを掘り下げられるとも、そんな小さな頃の約束を覚えているとも思っておらず、目を丸くして彼を見上げる。

ぽかんとだらしなく口を開けたまま、小さく頷く。今さら目をそらすことも憚られ、次の言葉を待った。

「そんな本気でもない約束を理由にしたくないから、だから…今度はちゃんと今の俺を見て好きって思わせてやる」

熱のこもった瞳で、あの皇天馬から告白のようなものをされ、冷静になってきたはずの頭はまたショート寸前まで追い込まれる。

なんと答えれば良いのかわからず、だけど何かを言わなくてはと口を開いた瞬間、彼から 返事はまだいいと言われてしまい閉口する。

その後はどうやって帰ったかとか、なんて言ってお別れしたのかも全然思い出せず、やはり頭はショート寸前だったのだと思い知った。


帰宅してからも頭の中は先ほどのことでいっぱいいっぱいで、自室でぼーっとしてしまう。
恋愛感情で彼のことを大切だと思っている訳ではないとずっと自分に言い聞かせてきたが、そんなこと言われなくても、もうずっと好きだよと思ってしまうくらいには天馬に惹かれていたらしい。