当たり強い



相澤先生のいるであろう、演習場の中央付近に走っていく。そこまで距離の離れたところに飛ばされていなくて良かったぁと思っていると、黒いモヤを見つけた爆豪くんが更にスピードを上げて突っ込んで行った。それに負けじと切島くんも他の敵に攻撃をしようとする。
みんながいるところに到着すると、爆豪くん達の他に緑谷くんと轟くんまで集まっていた。

「名字さんまで!?」

緑谷くんの言葉に、ここにいるはずの相澤先生はどうしたのか聞く。一瞬言葉に詰まった緑谷くんを見て、まさかとは思ったが話を聞いて涙が溢れ出そうになった。
ヒーローという職業柄、怪我は致し方ないとは思う。しかし相澤先生の場合、私たちを守るために第一線に出て闘ってくれていたのだ。それでそんなにも傷を負った先生の話を聞いて、今すぐにでも時間を戻してしまいたくなった。今戻せばこの演習場に来ないように仕向けることができる、そう考えたのだ。そうしたら誰も傷つくことなく、逆に戦略を練ってこの演習場に向かうことができるのでは、と巻き戻した後のことを考える。

「おい巻き戻し女。てめェ余計なこと考えてんじゃねぇぞ」

黙って考え始めた私に対して、敵を押さえつけながらも、そう言った爆豪くんを見る。

「てめェの没個性なんざなくても、相澤は死なねぇし、オールマイトに解決できねぇ事件なんざねぇんだよ」

「…そう、だよね」

彼の言葉に頷く。それにここは雄英高校の敷地内だ。結構時間も経っているし、そろそろ他の先生達も駆けつけてくれるはず、そう言い聞かせて拳を握った。

それからは、オールマイトと脳無と呼ばれた怪物の殴り合いを間近で見て、その怪物を吹っ飛ばしたオールマイトの頼もしさに目が眩んだ。
しかし怪物がやられても諦めなかった敵がオールマイトに迫る中、また全身をボロボロにしながら緑谷くんが攻撃を仕掛ける。その攻防はやっと到着した雄英高校の教師達によって終焉を迎え、この事件は幕を閉じた。

演習場から出た後はクラスメイトの安否を確認できて、緑谷くん以外誰も大した怪我をしていなくて心底安心した。
事件であったことを話し合ったりしていると、切島くんと爆豪くんが2人で話をしているのが視界に入る。一応同じ場所に飛ばされた彼らに、声をかけに行った。

「2人とも、さっきはすごい頼もしかった。ありがと」

「お、いいってことよ!無事でよかったな!」

ハキハキと話す切島くんに、再度お礼を言って爆豪くんの方に体を向ける。先ほど拒否のされようがひどかったため、ぶっちゃけ話しかけるのにかなりの勇気がいるが、なるべくその気持ちを察されないよう声をかけた。

「爆豪くんも、ありがとね。個性使わないでいられたのも爆豪くんのおかげだよ」

「巻き込まれたくねぇだけだわ。話しかけんなモブが」

やはり当たりの強さは変わらないが、言いたいことは言えたためまたクラスの輪に戻る。

「そういやさ、名字の個性ってどんななんだ?」

すぐ近くで切島くんが爆豪くんにそう聞いているのを耳にして、ばれない程度に聞き耳をたてた。

「知らねぇ。どうせただの没個性だろ」

その彼らしい返答に、少し笑ってしまう。確かに、ろくにコントロールもできない個性なんて、彼からしてみれば没個性だなぁと客観的に考えて明日が休校になると言う連絡を頭に入れた。


臨時休校明け、 今日も委員長フルスロットルな飯田くんに和まされつつ、ホームルームが始まるのを待つ。今日はプレゼントマイクが来てくれるのかなぁなんて周りの生徒と話していると、ガラリと教室の扉が開いた。

「お早う」

そこには包帯ぐるぐる巻きになった相澤先生が立っており、本当に大丈夫なんかとひやっとする。
先生は自分の状態をどうでもいいと宣い、まだ戦いは終わっていないと言った。

「雄英体育祭が迫っている」

相澤先生の言う戦いにドキドキするが、その後の言葉で一気にみんなのテンションが上がる。

「クソ学校っぽいのきたあああ!」

思わずみんなと一緒にそんなことを叫んだ。