最後の一歩
雄英高校体育祭、それは全国中継されるほどのもので、私たちにしたら今後の活動のチャンスにつながる一大イベント。今までテレビでしか見たことのないこの国のビッグイベントに、自分が参加できるのをどれほど夢見たことか。ホームルームで相澤先生から雄英体育祭のことを知らされた時、私は敵に襲われた後の恐怖より、体育祭へのワクワクで頭がいっぱいだった。
「名字ちゃん、一緒にお昼食べましょ」
蛙吹さんに声をかけてもらい、お弁当を手にする。やはりクラスメイトの思考は体育祭に向いており、その話題で持ちきりだった。
「頑張ろうね、体育祭」
麗日さんの皆!私!頑張る!という掛け声にノッて、おおー!と腕を上げる。
「この舞台に自分も立てるなんて本当にワクワクするね!でも私、個性が地味すぎて活躍できる自信ないなぁ」
「あら名字ちゃん、やけにネガティヴなのね」
思ったままを口にすると蛙吹さんからそう言われる。確かに最近は、前に爆豪くんに没個性と言われたことや、まだまだ制御できそうにない個性に対して悩むことが多かった。ワクワクするのに変わりはないのだが、それと同時にみんなに置いていかれないかとヒヤヒヤするのだ。もうこればっかりは今悩んでも仕方ないと、頭を振り気持ちを入れ替えた。
準備期間である二週間はあっという間にすぎ、雄英体育祭を迎えた。
選手宣誓ではまさかの爆豪くんが壇上に上がったり、大ブーイングの宣誓をしたりとこれも雄英ならではだなと感じながら精神統一をする。
ちらと爆豪くんを見ると、少し険しい表情をしていた。そんな彼を見て、自分もあのくらい派手で強い個性だったらなぁといやらしい嫉妬をしてしまう。
私の考えとは裏腹に早速発表された最初の種目、障害物競走。私の個性は攻撃やスピードなど物理的なものに有利ではないし、そもそもこの体育祭で使うことはないため、みんなに遅れを取らないようにしようと意気込んだ。
スタートラインに全員が集まった途端、先生のスタートの合図と共に走り出す。前に爆豪くんを巻き込んで一週間を繰り返した際、クラスメイトの個性はしっかりと把握したつもりだ。案の定、早々に氷結を出した轟くんの攻撃をジャンプして躱し彼の後を追う。
第一関門の障害物として現れた仮想敵は、さすがに基礎体力をあげただけでは勝てないと悟り、攻撃をかわしながら隙をついて次のステージまで潜り抜けた。
プレゼントマイク先生の実況を聞き、現在のトップの情報を確認しながら地雷原に到着する。周りにはまだ上鳴くんやB組の拳藤さんがおり、内心少し安心できた。
「おぉ名字じゃん!この地雷原まじ厳しくねぇ?」
相変わらずのチャラさで話しかけてくれる彼には申し訳ないが、私はみんなより早く走らなくてはいけないのだ。
「そう、だね!」
前を見て地雷を避けながら進む。しかしそのすぐ後に、後ろからカチっという音が聞こえてはっとした。とりあえず爆風で飛ばされないように、腕で体をガードする。それでも思ったより近くで爆発が起きたため、体が浮いて軽く飛ばされてしまった。
「ゲホッ…クソッ」
爆煙が消えて道が見え始めると、私は悪態をつきながら、ヨロヨロと立ち上がりゴールを目指す。
実況ではもう結構な人数がゴールインしていることを告げており、少しでも上の順位で終われるようにと走り続けた。
前にはサポート科の女の子、後ろには同じクラスの青山くん。みんな地雷でボロボロになりながら、あと少しのゴールを目指していた。
あと少しだ…!と気を抜いたのが悪かったのか、個性も使わずに雄英体育祭で活躍できるわけがないと神様からの悪戯か。
最後の最後、青山くんがビームを使って私の前に出たのだ。