ねぇ、先生



体育祭の次は職場体験。雄英の独特なカリキュラムはどんどん進んでいき、ヒーロー名を決めたりと、職場体験に向けての準備が始まった。

「指名のなかった者は、受け入れ可の事務所の中から選んでもらう」

そう言った相澤先生の話を思い出すが、 体育祭で予選敗退した私に指名などきているはずもなく、受け入れ可能な事務所を上からずらーっと眺める。正直、どこに行けばいいのかわからないのが本音ではあるが、中でもブツブツと、最早芸となった呟きをはじめた緑谷くんの情報に耳を傾けた。
その内容に、へぇだとかふぅんだとか勝手に相槌を打つ。

それでも職場体験先を決められないのは、ヒーローになりたいという漠然とした目標はあっても、実際どういうヒーローになりたいかがまだ見えていないからだ。 そりゃあ、オールマイトみたいなみんなに憧れられるヒーローを夢見ていたが、私の個性はそういうものには不向きなのである。
ここ最近はこうやって個性に悩むことが多すぎて、ヒーローになりたいのかも疑問に思ってしまうほどになってきた。
しかしこのまま悩んでいても仕方がないため、プロに相談を持ちかけようと私は職員室に足を向けた。
担任の机の前に歩みを進め、制服のスカートの裾をぎゅっと握りしめて相澤先生に思ったことを伝える。

「相澤先生、わたし…ヒーローになれないです」

言葉にすることで込み上げてきた涙を零さないように、奥歯を噛み締めた。私の話した内容に若干眉をひそめた先生を直視できなくて、床を見つめる。

「本気で言ってるのか」

軽くため息をついた先生に体が強張った。 声も出せず、固まったまま沈黙を通す。

「もう一度考え直してみろ。今決めると後悔するぞ、お前」

あとは自分で考えろということなのか、相澤先生は特に助言などをくれる訳でもなく体を机に向けてしまう。
結構勇気を出して相談しようとしたのにそう返されてしまうと、もう何も言い出せずに職員室を後にする。
扉を背に重たいため息を吐いて、もう一度事務所の一覧を眺めた。とりあえず、今の状況をどうすることもできないため、東京にある事務所に希望を決めて提出を決めた。



すぐにやってきた職場体験当日。今日から一週間はプロに色々なことを教えてもらおうと、駅に集合したクラスメイトと共に相澤先生の話を聞いて暫しの別れの挨拶をした。
日本の各地に行くであろうクラスメイトと別れて、東京の某所にある事務所前に向かう。電車を乗り継いで到着した事務所前で、よし、と意気込んでインターホンを押した。

「雄英から来ました名字名前と申します」

しばらく待ってみるがノックをしても返事がなく、待ち合わせ時間を間違えてしまったかとプリントと腕時計を見返す。そこに記載されている時間は間違っておらず、もう一度ノックしてドアノブをひねった。

「あのー…」

なんだか嫌な空気を感じるが、鍵の空いていた事務所に入る。

「やあ、雄英の落ちこぼれの名字サン?」

そこには、いつか見たモヤモヤの敵と、オールマイトと対峙していた主格らしい男が座っていた。